11.王太子の意地悪
一体この状況は何だろう……。
アンネルは3日前にアイリーン様からお茶会の招待状を貰ったため、アイリーン様のお屋敷に来ているのだが何故か王太子がいるのだ。
そもそもアイリーン様とは2、3回程度しか会ったことはないし、挨拶を交わしただけで仲が良い訳では無い。お茶会が嫌いな私にとっては、断りたかったがアイリーン様は王家の方なので断る訳にはいかなかった。しかし、何故王太子がいるのだろう…。
「お邪魔してごめんね?アンネル嬢。ただ、どうしてもアイリーンに会いたくて…。」
「「は??」」
アイリーン様と声が被ってしまったがそんなの気にしている場合では無い。今、この王太子なんて言った??
「そ、そうなのね、ウレシイワ。」
待って、アイリーン様。棒読みが酷くない?顔も引き攣っていますよ??
心の中で盛大にツッコミをするが、王太子は私のことを気にも留めない様子でアイリーン様をにこにこと見つめている。
ズキッ…
何だろう…今胸がズキッとした…。
心臓発作?…だとしたら危ない。
「アンネル様、どうかなさいましたの??」
アイリーン様が心配した様子でこちらを見ている。
「大丈夫です…。少し席を外してもよろしいでしょうか?」
「わかりましたわ。」
王太子は私とアイリーン様とのやり取りをただ見ているだけで、何も言わない。
いつもだったらしつこいくらいに私のことを気にかけてくるし、体調が悪い時も心配していたのに。
今、私何を考えていたんだろう…?
自分でもこの感情がわからずモヤモヤする。
席を外して、色とりどりのバラが咲いている庭園を眺めながらゆっくりと歩いた。綺麗な庭園だが、あまり心のモヤモヤは晴れなかった。
王太子はアイリーン様のことが好きなのかな?
ふと、そんなことを思った。確かに、アイリーン様の容姿はとても可愛らしい。ふわふわしたピンク色の髪にサファイアのようなきらきらした大きな目に整った顔立ち。目が合ったら誰もが虜になってしまうような美貌だ。
これは、婚約破棄を言い渡される絶好のチャンスだと思ったが本来なら嬉しいはずなのに少しも嬉しくない。何故こんなに胸に穴がぽっかり空いた気分になるのだろう…。
その頃…
「ちょっとどうゆうつもり!?嘘でも私に会いたくて…なんて言わないでよ!気持ち悪い!!」
アイリーンはアンネルが席を外したのを見計らって、王太子に不満をぶつける。
「まぁまぁ、落ち着いてよ。僕も言いたくて言ってる訳じゃないんだからさ。」
「じゃあ…!」
「忘れてない?あの約束のこと。」
王太子がアイリーンの言葉を遮って話す。
「っ…くっ。わかったわよ…。」
「ところで、アンネルは僕が君のことを好きだと勘違いしたみたいだね。まだ、アイリーンに会いたくてとしか言ってないのに、あんなに顔色変わっちゃうんだから可愛いよね。」
「確かにそうね…。いつも無表情のアンネル様が動揺していたわね。あんな顔を見たのは初めてだわ。」
「そろそろ追い討ちかけに行こうかな。」
王太子は意地の悪い笑みを浮かべた。
「性格が悪いわ!その腐りきった性根を叩き直してやりたい!男なら真っ直ぐ愛を伝えるべきでしょう!」
「それはもうとっくにやってるよ…。だから、強行突破にでたんだよ。」
そう言って王太子はアンネルを探しに行った。
「ほんとに腹黒い男よね…。まぁ、あのアンネル様も相当変わってらっしゃるけど。あの腹黒男があんなに溺愛してるのに今まで気付いていなかったんだから。」
アイリーンは王太子の後ろ姿を見ながら呟いた。
「はぁ…。」
アイリーンは王太子にあの秘密さえ握られていなければ、こんな茶番に付き合わされずに済んだのだと思い、ため息をこぼした…。
王太子はアンネルがバラを眺めているのを見つけると、気付かれないようにそっと近付き
「アンネル嬢、アイリーンが君が戻ってこないのを心配しているから早く戻ろう。」
と極めて冷淡に告げた。
アンネルは驚き、肩をビクッと揺らし恐る恐るふり返って
「殿下は、アイリーン様のことが好きなのですか?いえ、聞くまでもありませんよね…。」
弱々しく言った。
だが、勢いよく立ち上がり王太子にずかずかと歩み寄っていった。
これには王太子もびっくりして思わず後ずさりしたが、大きな木にぶつかった。どうやら思っていたよりも後ずさっていたようでその事に対しても驚いていると、
ドンッ…!
アンネルが勢いよく王太子に壁ドンをしたのだ。
そして、
「婚約破棄するんですか!?なんでもっと早くしてくれなかったのですか!!」
と王太子に言い放った。
人生で初めて壁ドンをされたことに驚きつつも、自分よりも背が低いアンネルを見下ろす。頑張って背伸びをしながらも壁ドンをし、上目遣いで睨んでくる。
なんだこの可愛い生き物は…。
王太子は抑えきれずにアンネルを抱きしめた。
「ちょ、離してください!!何の真似ですか??」
アンネルは突然抱きしめたられたため、意味がわからず王太子の腕の中で暴れると
「ごめん、無理。可愛いすぎるよ…。どうしてそんなに可愛いの?せっかくもっと意地悪しようと思っていたのに台無しじゃないか。」
そう言って王太子はアンネルを抱きしめる腕の力を強めた。
アンネルは真っ赤になって腕の中から脱出しようとするが王太子の腕はビクともしない。
「仕方ないな…。よいしょっ…!」
王太子はアンネルを抱きしめていた腕を解き、代わりにお姫様抱っこをした。
「な、何するんですか!?」
「静かに…。行くよ」
アンネルが抗議するのを無視し、王太子はアンネルを抱えたまま歩き出す。
アンネルはじたばたと暴れるも、王太子に額に口付けをされ、固まって動けなくなってしまった。
そんな様子のアンネルを満足そうに見つめながら、アイリーンのお屋敷の中へ入っていった。
アンネルと王太子のイチャイチャを書きたくてうずうずしていたので、やっと書けて嬉しいです。笑
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