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雷帝の愚痴と過去

 始まりの街 広場 雷帝


「あー、めんどくせー、なんでこんな所に居んだよ俺は」溜息混じりの愚痴が、つい口から出る。

「何を言っておるのだ雷帝? 攻略組の面々と合同訓練をするからに決まっておるだろう。全くいきなり何を言うかと思えば、暑さで呆けてしまったのか?」

 あーそうだよ。魔王の言う通り、面倒くせーことにも攻略組と合同訓練をする事になったからだよ。それにこの炎天下、文句の一つも言いたくなるってもんだ。

 俺達は今から2時間ぐらい前に広場に着いた。そして攻略組と互いに自己紹介をした後、訓練の内容を決める事になったって訳だ。っても攻略組が内輪で勝手に話してるだけだけどな。

 にしても攻略組ってのは仲が悪りー。さっきからぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー...ったく動物園かっての。


 中でも一番うるせーのがあのガルドとロジャーだ。犬猿の仲って感じで兎に角騒がしい。それを苦労しつつ宥めてるのが攻略組のトップ、<聖剣>のセインって奴だな。攻略組が動物園なら、こいつは唯一の人間で飼育員ってとこだ。

 因みに俺が犬猿の仲って言ったガルドがワンワンと吠えまくる煩い犬で、それをおちょくるロジャーが猿ってとこだ。他の連中は、ネコ耳が猫でネコ。アイシスとか謂う派手な女が孔雀。寡黙な男はグレンで亀。イライラ小刻みに揺れてるミーシャは鼠だ。


 的当だったけ俺も結構上手く例えるもんだわ。

 これをユリちゃんに言ったら、まるで鬼退治いく桃太郎ねっ。って笑いながら話してた。い、犬と猿しか合ってねー......まーユリちゃんだから良いけどな!

 魔王の奴はって謂うと。桃太郎?これまた珍妙な名を付けられた者が居たものだな、もう少し真面な名を付けてやれなかったのであろうか? 全くもって可哀想な奴である。って反応してたわ。桃太郎に喰いつき過ぎだろ。マジでアホだ......。


 まあいいや。なんで俺がこんな事を考えてたかって云うと、そう、暇すぎんだよ。攻略組の畜生共が言い争ってるお陰で全然事が進まねー。ユリちゃんは知り合いと話して時間を潰してるから良いけど、俺なんか暇だしムカつくしで煙草10本目突入だっつーの。だからギルドとか攻略組とかめんどくせーんだよ。

 ま、一応その間は、魔王や朔夜と駄弁ったり、色々と魔王に教えたりしてたんだけどな。正直完璧に信じれる訳じゃねーが、魔王は異世界から来たって話だ。それで知らねー事が多いらしい。見た目が完全に子供だから、余計信じにくい。角とか魔法とか雰囲気は一応マジっぽいんだけどな。


 その会話の中で煙草は何処に売ってるやら、売店で売ってる物なんかの話になった。因みに煙草は売店に売っていて、作る奴によって味が違うから結構面白い。

 良く世話になる回復薬の話もした。HP、MP、SPポーションってのが在って、中でもHPポーションは断然高い。それに持てる量に制限があったりする。だからプレイヤーが常に回復しながら無限に戦闘ってのは無理って訳だ。当然って言や当然なんだけどな。ソロの俺なんかはだからこそ余計に、回避が重要になってくる。

 その点ユリちゃんの使う回復魔法は優秀だ。なんたって他のプレイヤーを回復できるのは魔法だけだからな。それになにせタダだ。まあ、その分回復量とか、詠唱が必要で交戦中とか緊急時には速度でデメリットもあるけどな。


 あーセインがこっちに歩いて来やがった。決まった内容でも伝えに来たんだろどうせ。

「お待たせして済みません。人数調整で意見が合わず時間が掛かってしまいました。それでですが...魔王さんパーティと攻略組のギルドマスター7人で模擬試合と謂うのは如何でしょうか? あまり人数に差が合っても何ですし、正直な所、観衆を前に負ける訳にもいかないので。どうかそれでお願いします。それとその後、戦いたい者と各々試合をして戴けたら嬉しいのですが...」

 物腰は丁寧な癖に、図々しく色々と押し付けて来やがった。ったくめんどくせー。

 これだからギルドは嫌なんだよ。自分達が一番大事で、自分の勝手な都合押し付けやがって。

「うむ良かろう。それにしてもお主も大変であるな。何故其処までして攻略組のリーダーなど務めておるのだ? 我には苦労に見合った報酬があるとは到底思えんぞ」

 やっぱ断んねーか。でも魔王も、攻略組なんてのが理解出来ないみたいだな。俺も同感だ。

「あー魔王、こいつ等ギルド連中ってのは無駄な事が好きなんだよ。態々群れて傷の舐め合いに仲良しごっことか、理解出来ねーよ。それにこいつ等結局自分の事ばっかだからな。あんまり信用しねー方が良いぜ」


 セインとか云う優等生野郎にも嫌味のつもりで聞こえる様に言ってやった。あー、ったく俺は何にも変わっちゃいねない。ガキのまんまだ...

「雷帝さん、あなたの様に一人で戦える人には必要ないかも知れませんが、仲間というのはそれで良いんですよ。傷を舐め合ったり、仲良しごっこしたり、利用し合う関係で。それぞれに別の目的が有って、利用し合う。それぞれが目的の為に利用し合うからこそ、同じ行動を出来るし俺達は集まれるんです。」

 突っかかって来て何言ってんだこの優等生野郎。開き直りやがって。

くそマジでイライラする。

「はあ!? だったらなんだよ。其の為なら仲間以外は犠牲にして良いのかよ!! その行動で迷惑する奴が居たらどうすんだって言ってんだよ!!」

 何言ってんだ俺は。こんな奴に大声だして恥ずかしい。

周りの奴らもこっち見んじゃねーよ。

「すみません。確かに俺達のせいで雷帝さん達には迷惑を掛けました。この様な合同訓練をするに至った経緯も、元はと言えば俺の責任です。本当に申し訳ありませんでした。...ですが、後略組の目的はこのデスゲームをクリアして、より多くの人々と一緒に現実に帰る事です。だから、決して他の人達を犠牲にするつもりはありません」

「別にそんな事を言ってんじゃねえよ...くそ、お前達の目的なんて知るかよ...」


 雷帝は何故か憤り、顔を顰め、そして静かに吐き捨てる。恐らく此処に居る誰しもが、彼が吐く言葉の理由を知らずにいた。一人を除いて。


......


 


-----------------------------------------------------------


 βテスト時 現実世界 雷帝


(もうβテスト始まってから3ヶ月か。今思えば色々あった...ああそうだ......)


 そうあれは、俺がSSSのβ版で一人エリア攻略をしていた時だった。あの連中が絡んできたのは。ったく今思い出してもムカつくわ。名前も憶えてねーけど10人ぐらいの連中が、一緒に攻略しませんかー? って声を掛けてきたんだ。その時の俺はバカだったから、偶にはパーティも悪くねーか、とか思って誘いを受けたんだけどな。


 初めてのVRMMOだったし、結構そういうのを楽しみにしてたんだよな。普通そうだろ。 折角のオンラインゲームで誰とも関わらずにプレイするなんてありえねーよ。

 それで俺達は一緒にエリア攻略をする事になった。その時のあいつ等は一々うるさかった。勝手にヘイト値上げるなとか、止めを刺すなとか、連携乱すなとか言われて。まー、俺も初めてだったし、色々暗黙のルールとかあんのかなと思って真面目に頑張ってた訳だ。今思えばウケるよな。


 その後も、俺達が居て良かったなとか、仲間に入れてやるとか、アイテム提出しろとか、段々と調子に乗ってきていた。マジで面倒臭かったんだけど、結局俺は誘いを受けた手前もあって嫌々ながら付き合う事にした。

 そして俺達はエリアボスを倒したって訳だ。あいつ等のリーダー含めて結構な人数が殺られたけどな。それでも、仲間と一緒に戦うってのは楽しかったよ。そう、それで終われば本当に良かった。

 始まりの街に戻って、そのメンバーと合流してからが最悪だった。友達とか連れてすげー数増えてんの。そして、ボス素材手を入れられたのは俺等のお陰だからアイテムボックス見せろ、素材全部出せとか言ってきやがった。


 はあ? とか思ったけど、騒ぎが大きくなるのは面倒だったし、もう関わりたくないもなかったから。俺はアイテムボックスを広げて全部渡した。

 そうして口も聞かずにログアウトした。でもあいつ等は次の日も待ち伏せしてやがった。しかも、昨日の事で味を占めたのか今日も一緒に行こうぜとか言いやがった。

 勿論断ったけどな。そしたらそれから毎日粘着だよ。結局そいつ等は他でも同じ様な事をやってたらしく、苦情が来て規約違反で垢BANされたけど。


 今回は運が悪かった、今度からは気を付けて関わろうって思ったよ。けどそれから少し経って、ソロプレイヤーとしてかなり有名になった俺には、次から次へと勧誘が来る様になった。片っ端から全部断ってたけど、それでも本当に毎回毎回面倒臭かった。あの時の俺はもう十分、ギルドってのが嫌いになってたな。


 そうしてある日、俺はエリアボス討伐にミスってやられた。ソロでやってりゃこういう事もある。ただボスのHPは残りあとちょっとだったから、勿体ねーな、とか思って俺はそのエリアに戻ったんだ。HPの半分ぐらいは回復してるだろうけど、もう一回戦えば勝てる自信があったからな。


 そうして其処に戻った俺は、とあるギルドに声を掛けられた。<ユグドラシル>ってギルドだ。

 まー俺は当然、また勧誘かよって思ったさ。でもよ、アイツ等何て言ったと思う? 「すみません、貴方がHP殆ど削ってくれていたので倒してしまいました。これ貰って下さい。」とか言ってボス素材全部渡して来たんだぜ。しかもレアアイテムも普通に入ってんだよ。マジでウケるよな。


 その時の俺もへーとか思って、ユグドラシルの連中とは会った時に挨拶したり、会話する様になった。いい奴らだ。偶に討伐を手伝ったり、一緒に飯を食べたりする程、俺等は仲良くなってた。

 そして一ヶ月ぐらい前、俺はそいつ等のギルド<ユグドラシル>に入った。まさか俺がこうしてギルドに入る日が来るなんてな。しかも最近はほぼ毎日一緒にプレイしてるんだぜ。


 因みに今日なんか、ユグドラシルでストーリーイベントを熟す予定だ。

(ってやべー、これ完全に遅刻だわ。あいつ等待ってるかもな。インターワールド起動、エレクトロニクスブレイン移行、<sword skil story>座標確認、擬似身体再生、擬似身体覚醒...)

「わりいっ寝てた。待たせて本当に悪かったな、今日は五人か?」


「ああ。っておせーよ、ライ」

「もー雷帝ってマイペースなんだから」

「寝坊かよっ! よっ流石雷帝! 昨晩はお疲れかい?」

「君が遅いからまたご飯食べちゃったじゃないか」

「いやお前はいつも何か食ってんだろうがっ!」

 俺が遅れて来たのに、こいつ等は楽しそうに笑って許してくれた。

これが前のギルドの奴等だったらすげー責めらたろうな。くははっ。

「悪い悪い、代わりに今日の飯代全部奢るから勘弁。ムラサキにはデザートも付けるぜ。だけどな、ポチャ。お前は駄目だ!」

 ポチャってのは、さっきの食欲旺盛野郎だ。

 本当はユスターって名前だけど、ぽっちゃりだからポチャ。

 それから、この中で唯一の女の子はムラサキ。

 そして最初に俺の事をライって言ってたのがダイダイ、アホなのがレッド、ツッコミ担当がアオタだ。

 全員あだ名だけど色に因んだ名前を付けている。

 あー、ポチャは例外だ。それに俺もキータになりそうだったけど全力で断っておいた。


「やったーデザートげっとー!雷帝優しいっ」

「な、なんで僕だけ奢りなしなんだな」

「お前がこの前食い過ぎたからだろっ」


「ったく、あれで金無くなって、また雑魚狩りまくったんだからな。まじめんどくさかったわー」


「それはそうだけど、ライはマジで面倒くさがりだよな。」

「うんうん、的当だしズボラなんだな」

「そうだぜっダメじゃない雷帝なんて雷帝じゃない!」


「いや、俺にも真面目なとこぐらいあるわ」


「えっあったの!?」

「は、初耳なんだな」

「いや嘘つくなよっ!」


 こんな感じで、今の俺は楽しくSSSをプレイしている。やっぱ、誰かと一緒にプレイ出来るってのは楽しいもんだ。

そうして俺達はぐだぐだと話しながら第二の町「マリエル」へと向かった。


 SSSでは第二の町からイベントシステムが加わり漸くRPGらしさが出て来る。そのイベントを進めていくと、次に行くべき町や敵の情報、旅の目的何かが分かっていく仕組みだ。所謂ストーリーモードって感じだな。生産系や生活系のプレイヤーに合わせて、火の剣を作れ! とか伝説の岩魚を釣れ! とかそういうイベントもあるみたいだ。

 因みに始まりの街のステージボスは<ユグドラシル>メンバーと一緒に何度か挑戦して倒した。有名ギルドは既に討伐していたが、中堅ではユグドラシルが恐らく最初だ。

そのお陰かユグドラシルは、少しずつその存在は有名になって来ている様だ。


「さーて、先ずは攻略の館で情報収集だな」

 そう話すダイダイはユグドラシルのリーダー的存在。的って言うのは厳密に謂うとギルドマスター制を取っていないからだ。だから各々に上下関係は存在しない、所謂気の知れた仲間が集って出来たギルドだ。

 そこは俺も気に入ってる。上下関係ははっきり言って面倒くせーからな。因みにダイダイが言うには、こういった形は中堅や弱小ギルドに成る程多いらしい。

愈々して、攻略の館に着いた俺達は、早速その奥に居る一人のNPCへと話しかけた。


「すいませーん、冒険者の攻略情報教えてください」

 NPCだからと言って、話し掛けたら決まった文句が返ってくる訳じゃない。完全個立型AIが組み込まれているから、戯いも無い会話をする事も出来るし、あるプレイヤーがNPCとデートしたって噂もあるぐらいだ。つまり決まった役割を与えらている事以外は普通の人と思って接した方が良いって事だ。だから俺もちゃんと丁寧に話している。

「はーい」

 奥から一人の頭巾を被った女の子が出てきた。

謂うなら高校生ぐらいの可愛い女の子だ。

確かにNPCでもデートしたくなるってのがわかる。

 まー俺は同い年±2ぐらいが守備範囲だから、ちょっと若過ぎるけどな。

「この町での攻略は始めてだから出来るだけ優し目でお願いします」ダイダイは真面目そうに要件だけ言う。

「ええーと、冒険者向けのそういった情報はですね。はい、今は町の北エリアの洞窟でボブゴブリンの集団が何やら怪しい動きをしている様です。それから、南エリアには巨大なモンスターが現れ、果樹園が荒らされたという被害報告が寄せられていますね。他にもありますが聞きますか?」

「いや、いい。ありがとう。北エリアに行こうと思うんだけど、洞窟にボス級モンスターっている?」

 因みに、NPCに対してリアルの事やSSSの裏設定の話しをしても対応されない。

 つまり日本人?とか、君NPC?とか言ってもガン無視されるか、良くてちょっと変な人として扱われるのが関の山だ。


「いえ、大丈夫です。ボス級モンスターは居ませんよ」

 ボスってのは通じる。

 こちらの世界設定でもボスって言葉は存在するからな。

「ありがと。じゃあ早速行ってくるわ」

「はいっお気を付けて」

 こうして俺達はイベントへと向かった。

 町にいるNPCに聞いた方が詳しく分かるらしいが、面倒臭いので省略だ。


「さーて、ボブゴブリン共を一丁やるかー」


 


 

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