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魔王はBBQをします

 ボス討伐同日 攻略組 またまた会議室 

 

「此れでは儂等がしている事など只の後追いではないかっ!! 攻略組など言っておってもやる事と言えば、食糧の確保に配給、既に討伐されたボスを倒すのみ! こんな事に一体なんの意味があるのだ!!」

 例によってガルドは憤慨する。

「ガルドさん。言いたいことは分かりますが、それでも俺達のやってる事に意味はありますよ。それに多くの人の命を守り弱きを助けることこそが軍の役割ではないですか?」

 一方セインはガルドを宥めている。

 ガルドも今回はぐぬぬと溜飲を下し引き下がった様だ。

「それに今回は、例のボス討伐者について分かった事があります。ボス討伐の少し前に雷帝が蒼き山岳へ向かったとの情報が入りました。それと、その入口付近にはPKギルドのメンバーが縛られていたそうです。」

 

 ...そう、三体目のボス討伐があって以来。俺はギルドメンバーに依頼し「蒼き山岳」の入り口、北門を見張ってもらっていた。既に残るエリアボスはイビルリザードだけだったのと、ある程度出入りする者も限られていたからだ。


 もちろん見張りを察知され、他の門から迂回される可能性も有ったが、費用対効果や出入りする数の問題で北門だけが限界だった。それでも、蒼き山岳を訪れる者の大半の所在や人物を特定できた様だ。中には攻略組の面々や知り合い、ルーキーなども居た。 


 知り合いと言えばユリも、一人の少年とパーティを組み何度か蒼き山岳に入っていた様だ。例のボス討伐とは関係ないだろうと高を括っていたが...。この前噂で、そのユリ達が朔夜と共に街を歩いているのを見たと耳にした。


 一体ユリに何があったのだろう。あの後、称号を会得した事ともう一つの称号の確認報告を受け、攻略組参加は諦めると話しを聞いたが。何故あのソロで有名な朔夜とパーティを組んでいるのだろうか? 偶に大量の食糧を持って来てくれるのと関係があるのか? 恐らく称号を持つであろうもう一人の少年とは一体何者なのか? 


 やはりコレも分からないことだらけだ。まさかボス討伐と関わっているのだろうか。この前の事もあったし流石にそれはないと思いたいが...今度機会があれば聞いてみよう。

 

 だがそれでも、今回の事により可能性は絞れた。少なくとも雷帝は今回のボス討伐に間違いなく関わっている。あの最強の一人「雷帝」なのだ。ボスのソロ攻略であっても十分に可能だろう。それにボス討伐の1時間程前にきっかり現れたのが何よりの証拠だ。


 ザワザワ


 俺が無駄に色々と考えている間にも、辺りが段々と騒がしくなっている。この事については色々と問題がありそうだ。それに捕らえられたPKギルドのメンバーについてもだ。その者の話しによると、三人組の男女に襲われ拘束された様だ。


 その三人組の特徴を聞いた所、変わった話し方をする角の生えた少年と、二人の茶髪と黒髪の少女だった様だ。やはり、此方にはユリや朔夜が関係しているのか? だが情報によると蒼き山岳に向かったのはユリと少年の二人。


 もう一人は何処から現れたのか? もしや隠密系のスキルを使っていたのかもしれない。それとも転移系のアイテムか? だが流石にまだ序盤の今では、そんなもの手に入らないか...

 

 はあ、また思考が錯綜していくのが自分でもわかる。

 ダメだな。先ずは自体を整理しよう。それに会議室の状況を収めなければ...

 

 こうして今日も、セインは悩み奔走するのであった。

 

---------------------------------------------------------------------

 同時刻 始まりの街 鍛冶屋 

 

現在、我らは蒼き山岳から街へと戻り「ミーアキャット」に居る。

 

「マキさんよ! どうだっ! 此れが我々が岩掘り砕き続けた成果だー!!」

 因みに街へと着いた時、またもや其処は騒がしく四体目のエリアボス討伐とステージボスの噂で埋め尽くされていた。

 我らがその張本人だと言ってやりたい所だが、その後が面倒極まりそうなので我慢しておいた。

 にしても一々隠さねばならないというのは、気を使って面倒なものである。

 ん? 我にも雷帝の面倒くさがりが移ったののだろうか。

 まあ今はその騒がしさもマキさんの店の中に居るので問題はないのだが。

「ん~ って多過ぎだよ!! しかも石やら石やら一体何を...まさかアイテム鑑別スキルを付けて行かなかったの? ん、あれ? でもこっちには鉱石が多いね! わ! 宝石も結構ある!!それにこ、これはエメラルドじゃないかー!!」

 マキさんは驚いてくれた様だ。二重の意味で。 

 その実、カウンターに広げられた石は山積みとなりコロコロと床に転がる始末である。

 しかし、朔夜が出した石群の方を見ると目を輝かせておった。

何やら目ぼしい物でもあったのだろう。

「エメラルド〜ガガーネットに鉄鉱石〜♪マカラ鉱石ユニ鉱石〜♫」何やら変な歌を歌っておる。

 

 それから、色々と物色しておったが。何故か!何故か我の掘った物は石ころばかりであった!!なのにユリの掘った物にはそこそこ鉱石が入っておって、朔夜においては宝石ザックザク状態である!

 不幸だ。不幸なのだー!! 我だけ石ころばかりとは此れ如何に。全くもって働き損である。

 マキさんは目欲しい物をルンルンと探し集め終えると石を大きなアイテムボックスへと掻き入れ、意気揚々と店の奥へと入ろうとしている様だ。


「ふはは! 待つのだマキさんよ! 今回はなんとコレだけではないのだー!!」

 我がイビルリザードの素材を広げるとマキさんは再び目を輝かせ舞い踊る。その様子は騒がしかったので省略である。

 そしてBBQの用意をした。武器を作らせろー作らせろーと喚くマキさんに準備をお願いし、その後は無理やり海岸へと連れていった。こうして我らはBBQなるものをしに始まりの海岸へち向かったのだった。

 因みに先ほど雷帝にも連絡したのだが、「たくシャワーも浴びたし、これからちょっと寝ようかと思ってたのによー」と文句の声が聞こえてきた...。


 まあその後は、めんどくせーめんどくせー折角バラバラに帰ったのによーとか言いながらも結局行くと言っておったのだが。うむ、お前の方が面倒くさいわ!!

 それと、食材は既にアイテムボックスの中に揃えてある。普段からの狩りで得た食材や、道中物々交換で得た野菜、肉などだ。食糧危機の中で悪いのだが、常にある程度食糧は確保してあるのだ。

 

 こうして雷帝も合流し、我らのBBQは始まった。時折、匂いに釣られたのか海岸に夜の魔物も現れたが、肉を焼きつつ屠っておいた。因みに、夜の海岸ではマッドロブスターや巨大帆立、鉄雲丹などが出現する。新たな食材の調達完了である。うまうま。

「へへーそれじゃあさっそく、新たな仲間と四体目のボス討伐を祝して! 第一回、BBQ懇親会を開催しまーす!パチパチパチパチー」

 ユリは嬉しそうに手を叩きながら、口でパチパチパチと言っておった。こういう仲間の姿を見るのも悪くないものである。


「パチパチ焼肉だー」「いぇ〜結構美味そうだな。まさかこっちでBBQやるなんて思ってなかったわー」「BBQ久しぶりねー!!いっぱい食べるぞー!!」

 朔夜や雷帝、マキさんも楽しそうに肉が焼けるのを今か今かと待っている。このBBQセットはマキさんが鉄鉱石を使って即興で作ってくれた物だ。鍛冶屋とは便利なものだ。

「そうだな! 我もBBQなるものは初めてだ! こうして自ら料理を作り、皆で食を囲むというものも悪くないものだなっ!! フーッハッハッハッハー!!」


「うん悪くない」「そうだねっ!」「お姉さんも可愛い子とBBQ大好きよっ」「ああ、お、焼けた焼けた!それ頂きー」

 「「「「あっ!!」」」」

「ぬああ! お、お主それは我が目を着けておった...!!」

「なに言ってんのよ魔王っ! 其れは私が置いたお肉でしょ!」

「お肉取られた」

「えー私それ食べようと思って唾付けておいたのにー」

 ......

「「「「えっ?」」」」


 BBQをすると一人はこういう奴が居るものである...と、我はBBQが始めてなのだが、そんな気がした。

 雷帝はうげっという顔をしておった...くくっ我の肉を取るからだ。罰が当たったのだ、フハハハハ!!

 では、我も今の内に唾でも付けておくと...って怖や!ユリと朔夜、それに雷帝が物凄い睨みを効かせておる。雷帝においては先程より数段も嫌そうな顔をしておる。

 

「な、なんてなーヒューヒュヒュー♪決まっておろうょ、冗談であるわー」

 全く、食の恨みは恐ろしいとは良く言ったものである。我とあろう者が冷や汗をかいてしまったぞ。

「魔王そういうのダメ!!」

「いやー、俺も流石に野郎の唾が付いたのは勘弁だわー」

「お姉さんは別に良いわよ! でも唾を付けるなんてイケない子なんだからーもうっ」

(良いのか!? って、いや、マキさんが最初にやったのではないか!!)

 それにしても、朔夜が怒ると妙に迫力がある。ユリとはまた違った怖さがあるのだ。しかも、普通にお肉食べながら睨んでおるし。

「もうっそんなバカな事してるとお肉焦げちゃうわよはむはむ...わっ!このお肉美味しい」

「あっユリ我の肉を!! むぬぬー我の、我の食べようと思っていた肉がー!!」

 ......そうして小一時間、肉を焼き野菜を焼き魚を焼き食べた。ようやく皆の腹も落ちつき、ゆっくりと話しながら食べる様になっておった。

「へーそれにしても、魔王が本物の魔王とかマジか。ウケるわー」雷帝は煙草を吹かしながらだらけた様に話す。

「私も知らなかったなー。まさか本当に魔王なんているんだねえ」

「うん。私も最初は嘘だと思ってたんだけど、どうやら一応本当みたいなのよね。角のアイテムなんてやっぱり無いみたいだし、それに魔王は全然こっちの言葉とか分からなかったんだから」

「私は最初から信じた」 

 うむうむ、皆も疑い半分ながら分かってくれた様である。

 それにしても朔夜はなんと素直な良い子であろうか。

我の尊敬する人間ランキング殿堂入りも近いな。


「ふーん、でもって事は、魔王はその魔眼とか魔法をスキル付けなくても使えるんだよな?」

 雷帝はふと疑問に思ったのか、ぽろりと言葉を呟く。

「ん? そう言えば前に試した時は失敗し、か細い火の玉がポッと出ただけであったな。恐らくこの世界に転移した際、魔力の大方を失ってしまったのだろう」

 それに恐らく、そのお陰で我は此の様な年端も行かぬ少年の姿になっておるのだ。

全く困ったものだ。

「へーてことは今なら魔法打てるんじゃね。魔力はこっちでもステータスにあるだろ?」

 そ、そう言えばそうであった!!あの時も少なからず魔法は発動したのだ...。もしやすると今ならば!地の底より...獄炎...常世へと...爆せよ。ヘルエクスプロージョン!!」

 ポフッ

「おー出たみたいだな ...一応...」

「あ! そう言えば忘れてたけど、あの時も火が出てたっ。それに前のよりすこーし大きかった気がする!」

 他の者はなんと言って良いか分からないと言った表情である。我としても、随分中途半端な結果となり微妙な心持ちであった。

 

「まだMP足りないと思う」

「私にはわからないな〜。そっちのスキルに関してはさっぱりだ。それは絶対にスキル付けてないと使えないものなのー?」 

 朔夜は魔法発動失敗の原因を魔力量不足、つまりMPが足りないせいだと思ったらしい。

マキさんにおいてはさっぱりと言った様子である。

「そうだ。ねえ魔王っ!今の上位ぽい魔法だったけど、だからMPが足りないんじゃない!?」

 ユリは突如、何か閃いた様に話しかけてきた。

「むっ...確かに、我はいつも極大魔法を打っておったな。もしや初級魔法であれば可能かもしれんぞ!ありがとう流石ユリだなっ!」

「えっ!...いいわよ別に。第一あ、ありがとうなんて成功してから言いなさいよねっ!」

 何やらユリは照れた様に話す。我の感謝が嬉しかったのであろうか。

 まあユリにも我が偉大なる魔王である事がようやく分かった様だな!!ふはははは!

 

「では、早速いくぞ...豪なる火球よ...ファイアーボール!」

 魔王の手の平から、周りの空気を吸い込む様に火球が練られ飛ぶ。

「おお! 出おった!」

「うわ本当に出たよ! 魔法のスキル本当にいれてねーんだよな?」

「うん...。魔王のスキルは知ってるけど本当に入ってないわよ」

「魔王の魔法凄い」

「へーよく分からないけど凄いのねー! 魔王くん尊敬しちゃう!」

 どうやら、魔法が上手く発動しなかった理由は魔力量が理由であった様だ。

 しかし、これで我が魔王だと皆も信じたであろう! ふははは!!


「どうだっ!! 我が偉大な魔王だと云うのが分かったかっ!! フーッハッハッハッハ!! ユリもこれからは我の事を魔王様と呼んでも良いのだぶぼべっ『って調子に乗るなっ!!』」

 バガンッ!!

「ぐっはー!!」

 デジャヴュである...前にも此の様な事があった気がするのだが。そして当然の如く、ユリに土下座をさせられ謝罪させられた。

 

(な、なんだと...全く立場が変わっていない!?我が魔王という事は証明出来た筈。な、何故だ、何故なのだー!!!)

 

 魔王の悲しい心の叫びは、海岸に打ち寄せられる波音へと掻き消えていったのだった...しかもこの魔法。スキルと違い、ファイアーボール程度でも詠唱を必要とするので、活躍をするのはもう少し後のことである。


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