12 "あの日" 後編
1章完結です!
次回から2章に入ります!
2章、学園祭編 第1話は今日の19時10分投稿予定!
そのまっすぐな言葉は夜の空に響き、かつて最古の魔女と言われたラヴァンデの心にも響いた。
「私を・・・好き?」
「うん。そうだよ。」
まだ疑ってるのか・・・。
「私は、魔女なのよ?あの・・・忌まわしき・・・。」
驚きとうれしさでラヴァンデさんは顔をゆがめている。
「関係ないよ。」
最初魔女だって知った時は信じられなかった。
そんな悪いことをした人だったなんて、と。
でも、今までの彼女の様子や、あの夜の懺悔の言葉を思い出すと彼女は自らの意思で世界を破壊しようとしたとは思えない。
「君は、今までいろんな人に邪険に扱われ、恐れられて、蔑まれてきたのかもしれない。でも、俺を見て。俺の目は、表情は、その人たちと同じかい?」
「・・・違う。むしろ・・・愛おしそうな・・・。」
「ラヴァンデさんがそう思うならそれが答えだ。」
がらにもないことばかり言いすぎて恥ずかしいな。
だけど、これは演技でもなんでもない俺の本心だ。
「・・・アベル・・・アベル。」
ラヴァンデさんは何度も俺の名を言い、泣き崩れた。
「さてと、かっこいいとこ見せなきゃね。」
俺は抜刀した。
「・・・愚かだな。たとえここで逃げれたとしても俺たちは地の果てまでお前たちを追いかける。」
上等だよ。ミストラル。
敵は100人。俺は魔力が多いとはいえ剣の腕は並みだ。
それでも、ラヴァンデさんを・・・。
俺はミストラルに斬りかかった。
「・・・馬鹿が。」
その時、鮮血が飛び散った。
アベルが右肩から左わきにかけて斬られたのだ。
「どんなに勇気があろうと、人より多少魔力があろうと、貴様では足元にも及ばん。・・・魔女の足手まといにしか貴様はなれない。」
「そ・・・んな・・・。」
俺は力なく倒れた。
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体が痛い。
血が止まらない。
体が動かない。
動けよ。
ラヴァンデさんを俺が・・・。
「さて、この餓鬼を始末・・・」
「待って!」
ラヴァンデさん?
「私がおとなしくついていく。だから、お願い・・・彼を殺さないで・・・。」
駄目だ。
必死に剣をつかもうと手を伸ばすが力が入らずぐったりと腕が落ちる。
目の前が真っ白になってきた。
「ラヴァンデさ・・・にげ・・」
最後の力を振り絞って声を出した。
こんなところで終わりか・・・そう思っていた時。
黒い魔力に覆われ傷が完全に癒えた。
「これでいいわね。それじゃ、私は行くから。」
ラヴァンデさんが謎の魔力で俺の体を癒した。
「待って!逃げて、ラヴァンデさん。自分の命より大事なものなんてないでしょ。」
「あなたねぇ、自分がやってることと矛盾してるわよ。あと、私を彼らは殺すつもりはないわ。」
「でも・・・」
行かせたくない。
殺さないけど想像を絶する苦痛を与えられるんだろ?
それにラヴァンデさんと離れ離れになるのは嫌だ。
おいていかないで。
側にいて・・・。
「でも、そんなに俺のために頑張る必要ないよ。そもそも最初は君を追い返そうとしたんだ。」
お願いだ。
踏みとどまってくれ。
「ふふっ、確かにあなたは私を追い返そうとしてたわね。でも、あなたは私に今までで一番の幸せをくれたの。」
幸せ?
「あなたは知らないでしょう。私を女の子扱いしてくれた時の気持ちを。久しぶりに親切心で作ってもらったスープを飲んだ時の気持ちを。私がうなされていた時に声をかけ、抱きしめてくれた時の気持ちを。」
ラヴァンデさんは頬を赤らめ、静かに涙を流しながら言った。
「そして、私を魔女だと知ってもなお、守ってくれて、好きだと言ってくれた時のこの気持ちを。」
あぁ。
もう説得することは無理だ。
彼女の心は決まっている。
何もできない自分が憎い。
「だから、あなたを守りたいの。あなたに幸せに生きてほしいの。」
だったらいかないでほしい。
君と会ってから、俺の幸せな日常には君が傍らにいないと実現しなくなったんだ。
君といるから幸せなのに。
「君がいないと寂しいんだよ。」
「あら。嬉しいことを言ってくれるのね。でも大丈夫。あなたは今孤独に感じているかもしれない。だけど、いつかあなたの心の再び癒してくれる人が現れる。私にあなたが現れたようにね。」
そんな人いらない。
ラヴァンデさんがいい。
「もういいか?」
「ええ。私はあなたと行く。だから、アベルには手を出さないで。今までも、そしてこれからも。」
「いいだろう。」
待ってよ。
俺はラヴァンデさんに行かれたら・・・。
すると、ラヴァンデさんは俺にそっとキスをした。
「ラヴァンデさん・・・。」
「これで踏ん切り着いたわ。今までありがとう、アベル。」
ラヴァンデさんは微笑んだ。
「行くぞ。」
ミストラルがそういった。
「待って!おいていかないで!駄目だ、ラヴァンデさん!」
俺はラヴァンデさんを行かせまいと必死に叫んだ。
無駄だと分かっているのに。
俺は、俺は何もできないまま彼女に守られて終わるのか?
やめろ、やめてくれ!!
俺の叫びもむなしく、ラヴァンデさんが連れられて行く。
そして、去り際に彼女はこう言った。
「アベル、私もあなたのことが大好きよ。」
はかない笑顔で彼女はそういった。
ラヴァンデさん・・・。
「ラヴァンデさん、俺、君を救って見せるから、だから待ってて!」
必死に叫んだその言葉にラヴァンデさんは満面の笑みを浮かべ闇夜に消えた。
そして彼女がいなくなった後、
彼女との楽しかった日々を思い返しながら、俺は体を丸めて泣いた。
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朝が来た。
昼が来た。
とっくに学園は始まっているだろう。
でも、行く気になんかなれない。
「ラヴァンデさん・・・。」
俺は彼女が過ごしていた部屋の中で茫然としていた。
「一人にしないで・・・帰ってきて・・・。」
いっそ忘れてしまいたい。
忘れてしまえばこの喪失感を感じなくて済む。
でも、ラヴァンデさんのことを忘れるのはどんなことよりもつらい。
また、二人で楽しく過ごしたい。
そう、また二人で。
その時、一つの考えに至った。
・・・なら、彼女を救い出せばいいのではないか。
いや、でも、昨日は何もできなかった。
また、ああなってしまうのではないか。
そもそもあいつらが何者だったのかもわからないのだ。
情報がほぼゼロだ。
ソルシエール教が関係していること以外は。
そんな状態で格上相手に勝ち、彼女を助けられるのか?
ミストラルには瞬殺されたんだぞ?
その時、ラヴァンデさんの顔が頭に浮かんだ。
『アベル、私も大好きよ。』
いや、助けるんだよ。
それに、俺はラヴァンデさんに言ったんだ。
助けて見せるって。
俺には大義も信念もない。
だけど、会いたい人がいる。
だから、たとえこの世界が敵だとしても俺はあきらめない。
いつか、ラヴァンデさんと平穏な暮らしに戻るその日までは。
「絶対に君を救い出してみせる。」
アベルは、こうして激動の人生を迎えることになる。
遂に人生の大きな転換点を迎えたアベル。
彼はこれからどうなるのか・・・。
次回!シュリエッタ再登場!
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