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11 "あの日" 中編

11話です。

次回が1章の最終回になります。

次回の投稿時間は19時10分です。

お楽しみに!



「トレズ・シュバリエ 第2斬、ミストラルだ。」


男は、ミストラルはそう言った。


トレズ・シュバリエ?

なんだそれは。

聞いたことがない。


「お前・・・だ・・・」


刹那、ミストラルに向けて黒い閃光が放たれた。

放ったのはラヴァンデさんだった。

ミストラルは跡形もなく消し飛ばされた。


え?

殺しちゃった?

しかも、なんだあの魔法は。

とんでもない速さと威力だ。

そしてなんて魔力制御能力だ。

ミストラル以外何も傷ついていない。


「アベル!今のうちに逃げて!」


ラヴァンデさんが必死に叫ぶ。


どうして逃げないとやばいんだ?

あの男がラヴァンデさんが出ていくといった理由ならもう死んで・・・


「随分とそのガキに絆されているようだな。お前ひとりならすぐに逃げれるのに逃げもしないでこいつを先に逃がそうとして。」


ミストラルはいつの間にか後ろにいた。

何で生きてるんだ。

確かに攻撃は当たっていたはず。


「貴方、どうせ伏兵でも忍ばせているんでしょ。バレバレよ。出てきなさい。」


すると100人近い武装集団が出てきた。


気づかなかった。

魔力探知は高度な技術が必要なのに。・・・もしかしてラヴァンデさんは高名な魔術師だったのか?


「ラヴァンデさん。あなたは魔術師だったんですか?」


俺の質問にラヴァンデさんは答えなかった。


するとフフッと笑ってミストラルが言った。


「何も知らないんだな小僧。俺が代わりに教えてやる。そいつの正体は最古の魔女だ。忌まわしき女として歴史の授業でも習っただろう?」


____________________________________


最古の魔女。

それはエルベル神話にでてくるかつて世界を滅ぼしかけた存在。

そして、1000年前に封印されたといわれている。

思い出した。その魔女の名もラヴァンデだった。


嘘だ。

あのラヴァンデさんが魔女?

人見知りでアイスを食べるとはしゃぎだす彼女が?


「冗談だよね。ラヴァンデさん?」


「・・・本当よ。」


小さな声で悲しそうな顔でラヴァンデさんが答えた。


そんな。


「・・・随分ご傷心だな。あーあ。お前、これでまた一人になっちゃうな。」


ミストラルの言葉にラヴァンデさんは唇をかみしめてうつむいた。


また一人?


「な、なぁあんた、どういう意味だ。」


「ガキは知らなくていい。さぁ、怖い魔女と暮らしてたことを知って恐ろしくなっただろう?俺がそいつを連れてってやるからお前はおとなしくしてな。」


ラヴァンデさんの方を見ると彼女はすべてをあきらめた顔をしていた。


どうする。

このままラヴァンデさんを明け渡せばおそらく俺はなにもされない。

もし抵抗するならばどうなるか目に見えている。


俺は普通に暮らしたいんだ。

平穏でのどかな暮らしを。

ここで命を懸けることなんて・・・

その時あの時のことを思い出した。


『ごめんなさい。こんなつもりじゃなかったの。誰か・・・助けて・・・』


俺は剣を手に取った。


「何をしている。おとなしくしていればいいといったはずだぞ。」


「・・・アベル、なんで・・・。」


そんな泣きそうな顔しないでくれ。

思い出したんだよ。

あの夜、ラヴァンデさんが孤独の中でうなされていたことを。


そして、また一人になるというミストラルの発言。


君は昔から1000年も魔女として蔑まれ一人で苦しんでいたんだね。


「世界を滅ぼそうと本気で思っている人がこんな男とのんびり暮らすはずがないでしょ?君はきっと何かが原因で暴走してしまったりしたんじゃないか?」


「それは・・・でも、あなたが体を張る必要は・・・。」


「楽しかったんだよ。」


「え?」


「・・・俺は親が物心ついたころにはいなくてね。ばあちゃんも死んで一人だった。12歳で一人暮らし・・・怖かったし寂しかった。学園に入学してから友達ができた。だけど、俺は平民であっちは貴族。どこか、壁を感じていたんだ。」


「その時に君に会ったんだ。・・・明日の金ばかり気にして毎日楽しくなかった。だけど、君と過ごすようになって短い間だったけど、今までの3年間よりずっと楽しかったんだよ。君は孤独だった俺の心を満たしてくれた。」


ラヴァンデさんにかけるお金を心配したこともあるけどあれは楽しい思い出だしね。


「そんな、私はただの居候だったのに・・・。」


「それでいいんだよ。君がそばにいてくれるだけで俺は嬉しくなる。君の笑顔を見れるだけで幸せになれる。だから、今度は俺が君の孤独をなくしてあげたい。そして、君と一緒に平穏な暮らしをしたい。」


俺はまっすぐとラヴァンデさんを見つめた。

ラヴァンデさんは嗚咽を漏らしながら泣いている。


「どうして、どうしてそこまで・・・。」


当たり前だろう?

俺は結構わかりやすいタイプだと思うんだけどな。


でも、伝えなければ意味はない。

今、ここで言わなければ


俺はラヴァンデさんに向かっていった。


「ラヴァンデさん、好きです。あなたがどのような過去を持っていたとしてもこの気持ちが変わることはありません。」






次回、1章最終回!

果たして、アベルたちはどうなるのか?

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