第23章 揃った宝
月明かりが差し込む自室の書斎で、
グーリッジは古剣をしまうために長細い箱を用意した。
ふとデスクの上に散らばる、数枚の紙に視線が行く。
貴族のスーツのポケットから押収したものだ。
悪魔の召喚など――バカげたことを。
グーリッジは、ふん、と鼻を鳴らした。
ほぼ満月になった月に照らされ、古剣が怪しく光る。
かつての処刑人の剣。
なぜかグーリッジは、その輝きに魅入ってしまった。
古剣の刃に指を滑らせる。
赤黒い錆が、指先に付いた。
ふと、それを親指で擦る。
鉄臭い匂いが鼻を突き――気づけば、舌先に苦い味が広がっていた。
ふいに胸の奥から、満足感と愉悦がこみ上げる。
……カタ……カタタ……。
背後のデスクに揃っている宝が、共鳴するように小さく震えた。
グーリッジは唐突に、ある情景が浮かぶ。
山だ。
鳥のように上から俯瞰している。
視線が、何かに引き寄せられるように下へ降りて行った。
中腹の――開けた場所。
風でずれたテントの下に、円状に掘った溝――。
グーリッジは、強烈な衝動に襲われた。
――血の祭壇へ、行――。
「――!」
危うく古剣を落としそうになった。
一瞬、宝に意識を乗っ取られた感覚。
意識が戻ったのは、
宝が、
まだその時じゃないと気が付いたから――。
「……」
部屋に静寂と怪しさが満ちる。
悪魔の召喚など、するはずがない。
だが。
秩序と統制。
それを未来永劫、続けていくには、
あらゆるものを制御しながら利用しなければ。
(それができるのは、限られた人間だけだ)
頭の中に、そう囁く声が響いた。




