地図:マィアウリス丘陵周辺
舞台の地理を把握しやすくするため、大まかな地図を載せておきます。例によって本文がないと投稿できないので、ちょっとしたお話つきです。
■シマヴィルの森
エルフの純血種すなわちハイエルフは、今やシマヴィルの森にしか棲息していない。ハイエルフは自然を唯一の掟として生きている。それゆえ正確には自分たちの〈国〉というものを持たず、あらゆる外交問題に対して中立の立場を保っていた。
だから魔王軍の使者が威圧的な要求を携えて森にやってきたときも、ハイエルフたちは使者の腕を折って軍に突き返した。ひと月の後、オークとゴブリンの混成部隊がやってきてシマヴィルの森の五分の一を焼き払った。その報を受けて亞人国家連合が送った援軍が辿り着いたのはさらに一ヶ月後だったが、その頃には既に魔王軍の姿はほとんどなく、略奪の跡ばかりが残されていた。
魔王軍は森をさらなる侵略の拠点として利用することを目論んでいたが、ハイエルフによって森中に張られた魔術結界のために占領を諦めたようだった。しかしハイエルフたちが壊滅的な打撃を受けたことに変わりはなく、シマヴィルの森が持っていた緩衝地帯としての機能は失われた。
ある人間の宮廷魔術師が、亞人連合軍の部隊に付き添ってシマヴィルの森に来ていた。表向きは「森に張られた高度な結界を破るため」という名目での従軍であったが、実際は〈特任〉という曰く付きでやってきた怪しい魔術師の腕試し、という意味合いもあった。この魔術師は「魔王を倒す勇者を召喚する」という絵空事を描いて、軍に莫大な予算を要求していたのだ。
魔術師は難なく結界をくぐり抜け、監視役の目を納得させた。軍は広い森のなかに散り散りになっていたエルフたちをかき集め、状況を把握することに勤めた。それで上記のような経緯がわかった。
仲間と生きて再会できたエルフたちは互いに抱き合った。一部のエルフたちは軍に感謝し、共に戦おうと言って軍に加わった。他のエルフたちは、やはり中立を保とうと言って森に残った。
最後にひとり、誰も引き取り手が現れないエルフの子供が残った。銀髪の、まだ幼さが残る少女であった。エルフたちの〈自然の掟〉に従えば、孤児はひとりで生きていくしかない。
泣き止まない子供を前に、どうしたものかと兵たちが相談していると、宮廷魔術師が一歩進み出て、こう言った。
「私が引き取ろう。ちょうど助手が欲しかったところだ。エルフなら魔術の素養もあるだろう」
軍からも、ハイエルフからも異論は出なかった。
それが人間の魔術師ヨルガリア=ブーグルトと、エルフの少女ペオル=ターパーの出会いだった。
今夜か明日の朝あたりにもう一度更新する予定です。本編の続き。




