第一話 不条理な現実
「だる・・・。」
と、神様らしい人が言う。なんというここまで来ての態度だ。
「あんさ、神様ってね、偉い人のはずなのに、なんで三途の川の前で死んだ人をいちいち待っていたりさ、長い長い三途の川を渡る船のオールを漕いだり、その後はな、この忌々しいぐらいに花の匂いのキツイ畑なんかに行かなきゃいけないんだ。」
・・・・・神様ってこういう人なんだ?と、疑問を持つ。いい加減な人で、いい加減すぎる人だ。
「とりあえずね、街はここから三キロメートル程あっちの道を歩けば行ける。あと、街に行くときは、入場するために必要なパスポートがある。それは今な、俺の手元にある。タダでやるから、ほら、さっさと言ってくれ。」
「は、はぁ・・・。」
ここから三キロメートル・・・遠いな・・・。さっきまですごく急な坂を登っていって、オールを漕ぐのを手伝わされたっていうのに今度はそんなに歩くっていうのか・・・。
「あと、言い忘れたが、ここから超オトク情報だ。」
「オトク・・・情報?」
神様からのオトク情報。いったい何なのか。神様の世界でのオトク情報。人間界級ではないということになる。
「今まで忘れていたせいで、一万年ほど誰にも言ってなかったが、実はな、三日間だけ生き返るキャンペーンがある。これはお前らの世界で言う一万年ほど前から、二十一世紀の始め頃。正確には二千七年十一月二十四日、今日までなんだ。それでな、三日間以内にだ、『神宝』というものを手に入れれば、生き返ることが出来る。」
「へ〜。そうなんですか。」
つまりこのキャンペーン対象は自分だけってことだ。そして、『神宝』というものを手に入れれば、生き返ることが出来る。つまりだ。今、自分は死んでいる。
「それでだ、その『神宝』を探すための話だが、あくまで俺は生き返らせると言っただけで、その魂を現実界、リアルと言えば良いか。ここはジオルという。そこで動かすための体が必要になる。それは生きている上に、その体の持ち主から許可をいただく必要がある。」
なんかややこしい話になってきた。
「だからだ、体が無ければ、このキャンペーンも受けられないということだ。だから、今から六時間以内に体を捜して来い!リアルに六時間だけ帰らせてやる。」
「は、はぁ・・・。」
なぜか命令された。タイムリミットは六時間、だとのこと。
「うわぁ!?」
急に目の前が真っ暗になる。そして、いつの間にか着いていた。
自分の体と、それ以外の人の体が見える。自分の体は動いていなかった。死んでいるということだ。つまり、自分の体以外で動く必要があると言うこと。
「お兄ちゃん・・・・・・」
陽菜が僕の目の前で泣いている。タイムリミットは約五時間と五十八分。まだまだ楽勝だ。よし、陽菜の体を借りよう。
――陽菜、聞こえるか?
僕は現実に聞こえる声が出せないのでテレパシーのようなもので語りかけてみる。
「・・・・・・・・」
相変わらず陽菜は泣いたまま・・・・・やはり通じないのだろうか。
――陽菜!聞こえない?
「お兄ちゃん?」
通じた!
――陽菜、聞こえるか?今兄ちゃんは幽霊になってお前にお願いをしに来たんだ。
「ユーレー?お、お化け!?」
――声に出さなくていい!心で話せば大丈夫だ!
「わかった」
――だから心で言えば・・・・・・ほら、父さんや母さんが変な目で見てるぞ!
『わかった。聞こえる?』
――ああ、聞こえるさ。
『了解』
――で、早速頼みたいのだが・・・・・・
『うん、でも死体を焼く時に一緒にお兄ちゃんのベットのベットカバーの裏に縫い付けてあるポケットの中にあるエロ本を一緒に燃やせって言うお願いは勘弁ね』
――あぁそれは大丈夫・・・・・・って何故それを!?まぁいい、お願いというのだけど・・・・・・・・陽菜の体を貸してくれないか?
『え、や、ヤダヨ!!』
いくら兄のためといえども陽菜も十四歳・・・・・さすがに兄なんかに体は貸したくないはずだよな・・・・・・・・・。
――じゃあこういう話に持ち替えてみよう。僕を三日間だけ生き返らせてくれないか?
『三日間だけ?なんでよ。どうせならずっとでも良いのに。』
――いい加減な神様にさっき会ってきた。嘘じゃない。紀元前七千年から二十一世紀の最初ぐらいまでよくわからないキャンペーンがあってな、それに参加するためさ。
『その神様の話もキャンペーンの話、嘘でしょ?』
――本当だ。今までお前に嘘をつくことはありすぎたが、今度は本当だ。そのキャンペーン、内容についてだが、三日間他人の生きた体を借りることを条件に、参加が可能です。この世のどこかに置いてあるという『神宝』という宝を見つけ出せば、生き返ることが出来ます。たったそれだけだ。
『ますます嘘っぽい。』
と、まあこんな感じに信用しようとしないマイシスター、こうして一生のお願いと言うべきなのか知らないが、生きていないので言えない兄の頼み。
まさに歯車で例えたら、両方とも噛合わずにぶっ壊れるね。
『お兄ちゃんさ、結局、生き返りたいんでしょ。』
――いや、生き返りたいわけではない。ただ神様に無理やり参加させられたというか、キャンペーンに参加し終わるまで天国から追い出されたと言うか・・・。
どういうことなんだろう。結局ここまで来ての話だが。
『お兄ちゃんみたいな人が天国行けるんだね。そっちのほうに驚いたほうが良いかも。』
――ちなみに言っておこう。体を借りるために用意されてしまった期間は六時間です。ここの時計を確認する限り、あと五時間五十五分ぐらいだ。
と、一日考えさせて、と言わせない作戦に出る。誰でもわかるだろう。重要な考え事はなぜか一日考えてしまう人間の特徴のことを。
『で、お兄ちゃん。』
――なんだ?
『姿、見せてくれない?』
――無理。やり方知らない。でも心霊現象なら起こせるかもしれない。ポルターガイストとか。
『やってみせてよ。本当に幽霊さんなのか確かめてやる。』
――そんなのは必要ないな。まずテレパシー的なことを今やっている。つまりそれ自体が僕が幽霊だという証拠だ。
『私の勝手な妄想かもしんないでしょ!』
と、なぜか心の会話で怒られる。これじゃ一方的な以心伝心をする気じゃなくなる。
『とりあえずねいろいろな意味でこの体を貸しちゃ、いけないの。わかった?』
――そうか、今ならもし生き返ることが出来たら、ケーキとかお菓子とかおごってやってもいい気分なんだけどな。
とりあえずこの方法をとってみる。妹の好きな食べ物、甘いものオンリーだ。
『本当に!?じゃなかった・・・。そんな釣竿は簡単に破壊しちゃうよ。』
とのことだ。この妹、なかなかしぶとい。
――しょうがない。じゃあ言おう。僕はね、今ならどんなことでも出来る。お前を操ることができる。幽霊さんだからね。目の前に怪物を出現させて驚かせることも出来る。幽霊さんだからね。お前の存在を消すことも出来る。幽霊さんだからね。それでも良いのか?
こんなに言い張った。しかしだ。こんなこと出来ない。単なる脅しで、いろん
な意味で大人が子供に言うことをきかせるときの冗談に聞こえてくるような感じ
もする。
『そんなぁ。お兄ちゃん、そんなことしないよね?』
――お前が僕に体を三日間貸してくれたらな。
『しょうがない。存在消されたくないし、生き返って欲しいし、許可するよ。』
――サンキュー。
『ただし!プライベートな時間、趣味の時間、私が断固拒否したその時間、以外の時間だけだよ!わかった!?絶対変なことするんじゃないよ!わかったね!』
と、テレパシー状態だからこそ言えるようなことを連発された。意外とコイツの本音はかなりヤバイ。
でも、そう言ったからには、とりあえずだ。とりあえず体を借りることに成功した。
――じゃあ、神様のところに戻るね。
『う、うん。絶対戻ってくるんだよ。』
――ああ、保障はできないが約束する。
そう言った途端に、再びあの嘔吐寸前の状態になりそうな、目の前の真っ暗が訪れる。そして、目を開けた。




