第十一話
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馨さまを送り出したあと、私は開口一番、岬さんに宣言しました。
「岬さん、私ハイカラなお料理を作ります」
──馨さまにコロッケ弁当を持って行ってもらう。
それが私──園子の目標になりました。
ことの始まりは、胃腸を壊し、寝込んでいた時に岬さんから「ハイカラ婦人」という雑誌をいただいたことでした。
「奥様、読まれますか?」
「これは…?」
「最近創刊された婦人雑誌だそうです。私は学がないので文字が読めませんから、奥様に」
「ハイカラ婦人……このような本があるんですね」
私は白眼の呪いを持っておりますため、新居から出るのは避けております。買い物は岬さんにお願いしてましたが、その際に、町で婦人雑誌をいただいたようなのです。
私が虐げられてきたにもかかわらず、文字が読めたり、多少の学識を持っているのは、瑠璃子の身代わりを務めてきたからでした。
女学校の宿題や作文、お習字、それにラブレターもすべて私が代わりに書きました。瑠璃子に恥をかかせるなと言われ、小説を読んで独学で知識を得てきました。(ところで今、瑠璃子は大丈夫なのでしょうか…?)
話は戻しますが、婦人雑誌は始めて読みました。
嫁ぐ前、私は炊事・洗濯・掃除を担当してきており、人並み以上に得意なつもりでおりましたが、「ハイカラ婦人」の記事を見て、世の中には私の知らないことがまだまだたくさんあると気付いたのです。
雑誌をいただいたその日の夜から、私は穴が開くくらい見ております。銀座のモダンガール、カフェーという喫茶、どれも目からうろこなことばかりです。
その中で特に目を引いたのが「ハイカラな洋食の作り方」という内容でした。オムレツ、コロッケ、トンカツといったハイカラなおかずが巷では人気らしいのです。
池田家では、和食が食事の中心でした。しかし油小路家は侯爵家ですし、このような瀟洒な洋館をご購入されるならきっと、馨さまは西洋文化に詳しいに違いありません。洋食も召し上ってきたのではないでしょうか。これまで通り和食中心のお食事を続けていては、新鮮味に欠けるはず。
というわけで、馨さまを送り出したあと、私は開口一番、岬さんに宣言したのです。
「岬さん、私ハイカラなお料理を作ります」
「は、ハイカラですか!? それはとても…とても…素敵です!!」
岬さんはその言葉に妙に食いつきました。もしや、岬さんもハイカラに憧れているのでしょうか?
早速雑誌を広げて二人で作戦会議を始めます。
「この雑誌『ハイカラ婦人』で特集されたメニューは自宅でも作れるそうです」
「自宅でも?」
「そうです! 馨さまはすでに召し上がられたことはあるかもしれませんが、こういうものもお弁当や夕食に取り入れてみたいなと」
「奥様、素晴らしいお考えです! となりますと、一度くらいは味見をしたほうがよいのではないですか?」




