↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛推理ゲーム  作者: SSS
七人目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
95/112

第2話 新しい選抜

====================

第2話 新しい選抜

====================



◇


翌日の放課後。


図書室に集まったのは、五人だった。


俺、五百旗頭、御手洗、ミライ、そして不破。


日下部は「用事がある」と言って来なかった。東海林は部活。


「――で、どういうことだ」


不破が言った。


「昨日の夜、申請書類を見つけました」五百旗頭が言った。「旧校舎二階の使用申請です」


「使用目的は」


「空欄です」


「申請者は」


「空欄です」


……。


「ふざけているのか」


「ふざけてはいないでしょう」五百旗頭は言った。「――そういう申請だ、ということです」


……。


目的も、名前も書かない。


それでも、承認される申請。


◇


「それだけで、断定はできませんね」御手洗が言った。


「ええ」五百旗頭は頷いた。「ですので、他の記録も調べました」


「何かありましたか」


「――備品の移動です」


五百旗頭は、メモを開いた。


「今週、旧校舎の二階に、机と椅子が運び込まれています」


……。


「あの部屋、空っぽだったよな」


「はい」五百旗頭は言った。「十年前の事件以降、備品は全て処分されていました」


「じゃあ、今回、新しく入れたのか」


「そうなります」


◇


「――机と椅子は、何脚ですか」


御手洗が聞いた。


いい質問だった。


「机が一つ」五百旗頭は言った。「椅子が、六脚」


……。


空気が、少し重くなった。


「六人だな」不破が言った。


「はい」


「十年前と、同じ数だ」


「……はい」


◇


「――偶然じゃないの?」


ミライが言った。


「六って、普通の数字だし」


「その可能性もあります」五百旗頭は言った。「ですが、もう一つ、気になることが」


「なに」


「――申請期間です」


五百旗頭は、書類のコピーを見せた。


「二月十日から、二月十二日まで」


「三日間か」


「はい」五百旗頭は言った。「金曜の夕方から、日曜まで」


……。


全員が、黙った。


金曜の夜から、月曜の朝まで。


十年前と、ほとんど同じだった。


◇


「……なあ」俺は言った。「これ、確定でいいのか」


「確定はできません」五百旗頭は言った。「ですが、可能性は高いと思います」


「じゃあ、止めよう」


「――どうやって?」


……。


……あ。


「そうか」


「はい」五百旗頭は言った。「わたしたちには、権限がありません」


「先生に言えば」


「なんと言いますか」五百旗頭は言った。「『机と椅子が運び込まれたので、危険です』とでも?」


……。


言えない。


何も、起きていないのだから。


◇


「――そもそも」


御手洗が言った。


「わたしたちが体験したものは、危険ではなかったのでしょう?」


「まあ、そうだな」


「誰も死ななかったし、怪我もしなかった」御手洗は言った。「脱落した人も、無事に戻ってきたわ」


「ああ」


「だとしたら」御手洗は言った。「――止める理由は、あるのかしら」


……。


「……ないな」


「ないわね」


……。


そうなんだ。


制度としては、安全に設計されている。四巻で、それは確認した。


誰も死なない。危険があれば止まる。


……なら、俺たちが騒ぐ必要はない。


◇


「――でも」


ミライが、ぽつりと言った。


「なんだよ」


「安全だからって」ミライは言った。「――怖くないわけじゃないよね」


……。


「わたしたちのときも」ミライは言った。「安全だったよ。誰も死ななかった」


「ああ」


「でも」ミライは言った。「――普通に、怖かったでしょ」


……。


……そうだ。


閉じ込められて。仲間が消えて。誰を信じていいかわからなくなって。


安全だったと、あとから知った。


でも、あのときは。


本気で、怖かった。


◇


「……対象は、誰なんだ」


俺は聞いた。


「わかりません」五百旗頭は言った。「選ばれる基準も、公表されていませんから」


「予想は」


「三つの可能性があります」五百旗頭は言った。「一。現在の二年生。二。一年生。三。学年混成」


「うちの学年って可能性もあるのか」


「あります」五百旗頭は言った。「ですが、可能性は低いでしょう」


「なんで」


「――わたしたちが、経験者だからです」


……。


ああ。


一度やった人間を、もう一度呼ぶ意味はない。


「だとすると」御手洗が言った。「――一年生かしら」


◇


その日の夜。


俺は、家で、ずっと考えていた。


一年生。


顔も名前も知らない、六人。


その子たちが、来月、あの部屋に閉じ込められる。


何も知らされないまま。


……。


俺たちも、そうだった。


何も知らずに、あの部屋に入って、ゲームだと言われて、疑心暗鬼になって。


……そして、なんとか、出てきた。


……。


あの子たちも、出てこられるだろうか。


◇


スマホが鳴った。


ミライからだった。


『ねえ』


『あんた、今、何考えてる?』


……。


俺は、少し迷ってから、返信した。


『一年のこと』


すぐに、返事が来た。


『やっぱりね』


『あんた、そういうとこあるから』


……。


続けて、もう一通。


『でも、わたしたちには関係ないよ』


『向こうも、知らない子だし』


……。


そうだ。


関係ない。


知らない子たちだ。


俺が、何かする理由はない。


……。


でも。


なぜか、寝つけなかった。



(第2話 了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。