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恋愛推理ゲーム  作者: SSS
十年前の、密室

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72/114

第1話 冬の図書室

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『恋愛推理ゲーム 4』

第1話 冬の図書室

====================



十二月。



銀杏は、とっくに、落ちて。


グラウンドの、土が。


朝は、白く、なって、いる。


制服の、上に。


コートを、着ないと。


もう。


無理な、季節だ。


……そして。


図書室の、暖房が。


効きすぎて、いる。



◇



「……暑い」


俺は。


ブレザーを、脱いだ。


「暖房、強すぎだろ」


「窓際は、寒いですよ」


五百旗頭(いおきべ)が。


生徒会の、書類から、顔を、上げずに、言った。


「図書室の、空調は、書架の、保護が、優先です。……人間の、快適性は、二の次です」


「本のほうが、偉いのか」


「本のほうが、古いですから」


……。


相変わらず。


屁理屈が。


うまい。



◇



「――あら、暑いの?」


御手洗(みたらい)が。


資料を、抱えて、やってきた。


制服の、上に。


今日は。


蛍光レッドの、カーディガン。


……冬でも。


目に、痛い。


「暑い」


「わたし、ちょうどいいわ」


「お前、それ、着てるだろ」


「これ、薄いのよ」


「見た目が、暑苦しいんだよ」


「失礼ね」


御手洗は。


ぷう、と。


頬を、膨らませて。


それから。


いつもの、席に、座った。


……。


いつも通り、だ。


少なくとも。


表面上は。



◇



三か月、経った。


秋の、あの、騒動から。


学校は。


すっかり。


元通りに、見える。


噂は、消えた。


誰も。


森本基成のことも。


東海林(しょうじ)四季のことも。


話さなく、なった。


……人は、忘れる。


面白くなくなれば。


すぐ。


それが。


いいことなのか。


悪いことなのか。


俺には。


まだ。


わからない。



◇



図書室の、扉が、開いた。


「……」


東海林が。


入ってきた。


コートを、着て。


竹刀袋を、担いで。


前と、同じ、格好で。


でも。


前と、同じでは、なかった。


「……こんにちは」


東海林は。


小さく。


頭を、下げた。


「……こんにちは」五百旗頭が、返した。


「……こんにちは」御手洗も、返した。


それだけ。


東海林は。


少し、離れた、席に。


座った。


いつもの、俺の隣、じゃ、なくて。


一つ、空けた、席に。


……。


三か月。


ずっと、そうだ。


東海林は。


図書室に、来る。


でも。


毎日じゃ、ない。


週に、二回か、三回。


そして。


隣には、座らない。


誰も。


何も、言わない。


でも。


全員が。


気づいて、いる。



◇



……修復した、とは。


言えない。


でも。


壊れたまま、でも。


ない。


五百旗頭は、東海林と、事務的な会話をする。


御手洗は、普通に、話しかける。


不破(ふわ)は、たまに、突っかかる。


日下部(くさかべ)は、いつも通り、微笑む。


湊(みなと)ミライだけは。


まだ。


東海林と。


一言も、口を、きいて、いない。


……三か月。


まあ。


一生、根に持つ、って。


言ってたしな。


あいつ。



◇



「……そういえば」


俺は、話題を、変えた。


「柏木先生の、件。……何か、わかったか?」


五百旗頭が。


ペンを、置いた。


「……何も」


「何も?」


「ええ」五百旗頭は、ため息を、ついた。「三か月、調べました。……ですが、何も、出ません」


「教員の、記録は?」


「見ました。普通です」五百旗頭は、言った。「二十七歳。教員歴、四年目。この学校に、三年前に、着任。……担当は、進路指導と、二年生の、現代文」


「うん」


「勤務態度、良好。生徒からの、評判も、悪くない」五百旗頭は、続けた。「……唯一、変わっているのは」


「十年前の、卒業生ってことか」


「そうです」五百旗頭は、頷いた。「母校に、戻ってきた。……それ自体は、珍しくは、ありません」


「でも」


「ええ」五百旗頭は、言った。「――なぜ、あの人が、あなたを、『七人目』と、呼んだのか」


……。


三か月。


その、謎は。


まったく。


解けて、いない。



◇



「あと」俺は、言った。「あの、カードは?」


「《第七役職》ですか」


「ああ」


「まだ、机の中に、あります」五百旗頭は、言った。「わたしのほうでも、いろいろ、試しました。……紫外線。薬品。透かし」


「探偵かよ」


「探偵の、真似事です」五百旗頭は、少しだけ、笑った。「……結果は、何も。ただの、紙です」


……。


行き詰まり。


完全な。


行き詰まり。


「……あのさ、五百旗頭」


「なんですか」


「これ、もう。……追わないほうが、いいのかな」


五百旗頭は。


顔を、上げた。


「……なぜ、そう思うのですか」


「いや」俺は、言った。「三か月、何も、出ない。……それに」


俺は。


少しだけ。


東海林のほうを、見た。


東海林は。


こっちを、見て、いなかった。


本を、読んで、いた。


……でも。


たぶん。


聞いて、いる。


「……もう、いいのかな、と」


五百旗頭は。


少し、黙って。


それから。


静かに、言った。


「……わたしは、追います」


「なんで」


「気持ち悪いからです」五百旗頭は、あっさり、言った。「解けない問題を、放置するのは。……気持ちが、悪い」


……。


こいつ。


ぶれないな。


「でも」五百旗頭は、続けた。「森本くんが、やめたいなら。……わたしは、止めません」


「……」


「あなたは、もう、十分、巻き込まれました」五百旗頭は、言った。「……降りる権利は、あります」


……。


降りる。


権利。


……そうか。


そうだよな。



◇



と。


そのとき。


図書室の、扉が。


勢いよく。


開いた。


「――失礼しまーす!」


見知らぬ、女子が。


立って、いた。


髪を、後ろで、ひとつに、まとめて。


やたら。


目が、輝いて、いる。


「あの! ここに、二年二組の、森本くんと。二組の、五百旗頭さんは、いますか!」


「……いるけど」


「よかった!」


女子は。


ずかずかと。


入ってきて。


テーブルの、前に、立った。


「わたし、演劇部の、部長で。二年四組の、真壁(まかべ)です!」


「……はあ」


「実は」


真壁は。


手に持った、紙束を。


どん、と。


テーブルに、置いた。


「――お願いが、あります!」


……。


なんだ。


この、勢い。


いやな、予感が、した。



(第1話 了)

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