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恋愛推理ゲーム  作者: SSS
しずかな、うらぎり

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65/117

第15話 なぜ

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第15話 なぜ

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翌日。


放課後。


図書室。


誰も、いない、テーブルに。


俺と、五百旗頭(いおきべ)は。


向かい合って、座った。



「まず、確認します」五百旗頭は、ノートを、開いた。「わたしたちは、これまで。……『誰が、やったか』を、追って、いました」


「ああ」


「それは、終わりました」五百旗頭は、言った。「東海林さんが、認めた。……犯人は、確定です」


「……ああ」


「では、今日から」五百旗頭は、顔を、上げた。「――『なぜ、やったか』を、追います」


「……頼む」


「ただし」五百旗頭は、指を、立てた。「感情で、考えるのは、やめましょう」


「え?」


「『きっと、何か、理由が、あったはずだ』」五百旗頭は、言った。「……そう、思いたい気持ちは、わかります。でも、それは、願望です」


「……」


「わたしたちが、やるのは」五百旗頭は、言った。「――行動の、再解釈です」


「再解釈?」


「東海林さんが、実際に、やったこと。……それを、全部、並べます」五百旗頭は、言った。「そして、『別の目的』で、説明が、つくかどうかを、検証します」



◇



五百旗頭は。


ノートに。


箇条書きで。


書き始めた。


「一。森本くんの、噂を、流した」


「……ああ」


「二。物証を、配置した。キーホルダー。署名」


「うん」


「三。湊さんの、信用を、破壊した」


「……」


「四。自分から、図書室に、来なくなった」


「……」


「五。認めたが、理由を、言わなかった」


「……」


「六」五百旗頭は、ペンを、止めた。「――『第七役職を、調べるな』と、言った」


六つ。


並んだ。


「では」五百旗頭は、言った。「仮説を、立てます。……仮説A。『東海林さんは、あなたを、嫌っている』」


「……」


「この仮説で、六つの行動は、説明できますか」


俺は。


考えた。


「……一と、二は、できる。噂を、流して、証拠を、置く。……嫌がらせだ」


「三は?」


「湊を、潰したのは。……邪魔だから、か?」


「では、四は」五百旗頭は、言った。「なぜ、図書室に、来なくなったのですか」


「……気まずいから?」


「嫌っている相手に、気まずさを、感じますか」


……。


感じない。


嫌いなら。


むしろ。


平然と、していられる。


「五は」五百旗頭は、続けた。「なぜ、理由を、言わないのですか。嫌いなら、言えばいい。……『お前が、嫌いだった』と」


「……」


「そして、六」五百旗頭は、言った。「――嫌っている相手に、なぜ、『第七役職を、調べるな』と、忠告するのですか」


……。


……そうだ。


あれは。


忠告、だ。


嫌がらせじゃ、ない。


「仮説Aは」五百旗頭は、静かに、言った。「……成立しません」



◇



「では、仮説B」五百旗頭は、新しい行を、書いた。「『東海林さんは、誰かに、脅されて、いた』」


「ありそうだ」


「では、聞きますが」五百旗頭は、言った。「脅されている人間が。……なぜ、あんなに、堂々と、認めるのですか」


……。


ああ。


そうだ。


あいつは。


目を、そらさなかった。


「脅されているなら」五百旗頭は、言った。「普通は、隠します。あるいは、助けを、求めます。……少なくとも、『わたしが、やった』と、即答は、しません」


「……」


「仮説Bも」五百旗頭は、言った。「……成立が、難しい」



◇



「じゃあ」俺は、言った。「なんなんだよ」


「仮説C」


五百旗頭は。


ペンを、握った。


その、手が。


少し。


震えて、いた。


「――『東海林さんは、あなたを、守ろうと、していた』」


……。


図書室が。


静かだった。


「……検証します」五百旗頭は、言った。「一。噂を、流した」


「……」


「これで、何が、起きましたか」


「……俺の、評判が、落ちた」


「もっと、正確に」五百旗頭は、言った。「あなたは、どう、見られるように、なりましたか」


……。


俺は。


考えた。


噂の、中の、俺。


文化祭を、逃げた、やつ。


備品を、壊した、やつ。


責任から、逃げる、やつ。


目立とうと、した、やつ。


それは。


つまり。


「……『たいしたやつじゃ、ない』」


俺は、言った。


「そう」五百旗頭は、頷いた。「あなたは、『信用できない、平凡な生徒』に、なりました」


「……」


「思い出して、ください」五百旗頭は、言った。「その、少し前。……あなたは、どう、見られて、いましたか」


……。


少し前。


二巻の、事件が、終わった、あと。


「……『あの事件を、解決した、やつ』」


「そう」五百旗頭は、言った。「そして、その前は」


「……図書室の、ゲームを、突破した、やつ」


……。


心臓が。


冷たく、なった。


そうだ。


俺は。


いつの間にか。


「何かを、解決する、やつ」に。


なって、いた。


それが。


今。


消えた。


綺麗に。



◇



「二。物証の、配置」五百旗頭は、続けた。「これは、噂を、補強するためです。……ただの噂なら、消えます。物証が、あれば、消えない」


「……」


「三。湊さんの、信用破壊」五百旗頭は、言った。「彼女は、あなたに、警告しました。……つまり、あなたを、助けようと、していた」


「……ああ」


「彼女が、動けば」五百旗頭は、言った。「あなたの、名誉は、回復するかも、しれません。……それを、防いだ」


「……なんで、そんなこと」


「四」五百旗頭は、答えずに、続けた。「自分から、離れた」


「……」


「これは」五百旗頭は、言った。「――あなたを、自分から、遠ざけるため、です」


「……」


「五。理由を、言わない」五百旗頭は、言った。「言えば、あなたが、追いかけてくるからです。……理由が、わかれば、あなたは、解決しようと、する」


……。


……そうだ。


俺は。


そういう、やつだ。


「そして、六」


五百旗頭は。


ペンを、置いた。


「――『第七役職を、調べるな』」


……。


「これが」五百旗頭は、言った。「――結論です」


「結論?」


「六つの、行動は、すべて」五百旗頭は、俺を、見た。「……ひとつの、目的で、説明が、つきます」


五百旗頭は。


ノートに。


一行。


書いた。


『森本基成を、第七役職から、遠ざける』



◇



……。


息が。


止まった。


「……どういう、ことだ」


「わかりません」五百旗頭は、首を、振った。「でも、式は、成立します」


「式?」


「あなたの、評判を、落とせば」五百旗頭は、言った。「あなたは、『たいしたことのない生徒』に、なる。……もし、誰かが、あなたに、興味を、持っていたとしたら」


「……」


「――興味を、失います」


……。


ぞ、と、した。


「あなたを、庇う人間を、潰せば」五百旗頭は、続けた。「あなたは、孤立する。……協力者が、いなくなれば、調査は、できません」


「……」


「自分が、離れれば」五百旗頭は、言った。「あなたは、彼女を、追わない。……そして、彼女が、知っていることにも、辿り着かない」


「……」


「理由を、言わなければ」五百旗頭は、言った。「あなたは、真相を、追えない。……そして、危険にも、近づかない」


五百旗頭は。


顔を、上げた。


「東海林さんは」


「……」


「――あなたを、無害な生徒に、戻そうと、して、いました」



◇



俺は。


何も。


言えなかった。


頭の中で。


いろいろな、ものが。


音を、立てて。


組み替わって、いく。


あいつが。


図書室に、来なくなった、こと。


目を、そらした、こと。


「気を、つけて」と、言った、こと。


「もう、話しかけないで」と、言った、こと。


「森本と、いると、また、やる」と、言った、こと。


全部。


……全部。


「……なあ、五百旗頭」


「はい」


「これ」俺は、言った。「……もし、本当だとしたら」


「はい」


「あいつ」


声が。


震えた。


「……全部、一人で、やったのか?」


五百旗頭は。


答えなかった。


ただ。


少しだけ。


目を、伏せた。


「……誰にも、相談せずに」俺は、言った。「誰にも、言わずに。……全員に、嫌われる、覚悟で」


「……」


「なんで」


俺は。


テーブルに。


拳を、置いた。


「なんで、そんな」


「……森本くん」


五百旗頭が、言った。


「わたしたちは、まだ、何も、知りません」


「……」


「これは、仮説です。……証明が、必要です」


五百旗頭は。


ノートを、閉じた。


「……調べましょう」


「……ああ」


「第七役職を」五百旗頭は、言った。「――東海林さんが、『調べるな』と、言った、その、意味を」



(第15話 了)

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