第14話 崩れる
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第14話 崩れる
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話が、広まるのは。
早かった。
◇
きっかけは。
たぶん。
誰かが、見ていた、ことだった。
校舎裏で。
俺と、東海林が。
話していた、ところを。
そして。
その、内容が。
少しずつ。
漏れて、いった。
「――ねえ、聞いた?」
「うん。……東海林さんが、やったんだって」
「え、うそ。あの、東海林さん?」
「森本の、噂。全部、あの人が、流してたって」
「なんで?」
「わかんない。……本人が、認めたらしいよ」
……。
一週間。
いや。
三日も、かからなかった。
◇
学校の、空気が。
反転した。
これまで。
俺に、向いて、いた、目が。
今度は。
東海林に、向いた。
廊下で。
すれ違うと。
みんなが。
一瞬。
黙る。
教室で。
誰も。
話しかけない。
剣道部でも。
……たぶん。
何か、あったんだろう。
主将なのに。
部員と。
別々に。
帰るように、なって、いた。
……。
俺が。
経験した、ことだ。
全部。
あいつが。
俺に、した、ことが。
そのまま。
あいつに。
返って、いた。
◇
放課後。
図書室。
「……ひどい話ですね」
五百旗頭が。
静かに、言った。
「あんなに、早く、広まるとは」
「……ああ」
「わたしは」五百旗頭は、言った。「誰にも、話して、いません」
「知ってる」
「湊さんも、話していないと、思います」五百旗頭は、言った。「彼女は、『信じてもらえない』と、わかっていますから」
「……だろうな」
「では、誰が」
五百旗頭は。
そこで。
少しだけ。
眉を、寄せた。
「……いえ。今回は」
「ん?」
「今回は、たぶん」五百旗頭は、言った。「――誰も、流していません」
「……え?」
「ただ、広まったんです」五百旗頭は、言った。「面白い話だから。……人は、面白い話を、放って、おけない」
……。
そうか。
犯人が、いなくても。
噂は。
広まる。
……いちばん。
気持ちの、悪い、結論だった。
◇
その日。
図書室に、いたのは。
俺と、五百旗頭だけ、だった。
御手洗は、委員会。
不破は、部活。
日下部は、来なかった。
湊ミライも、来なかった。
そして。
東海林も。
……当然だ。
広い、テーブル。
七つ、あった、椅子。
今、座っているのは。
二つ、だけ。
「……静かですね」
五百旗頭が、言った。
「……ああ」
「少し、前まで」五百旗頭は、言った。「……ここ、うるさかったのに」
……。
そうだ。
二か月前は。
誰も、呼んでいないのに。
全員が、集まって。
御手洗が、世界史の、たとえを、して。
ミライが、俺を、からかって。
不破が、突っかかって。
日下部が、笑って。
東海林が、隣に、座って。
五百旗頭が、本を、読んで、いた。
……あれ。
なんだったんだ。
あの、時間は。
◇
「……森本くん」
「なんだよ」
「わたしは」五百旗頭は、言った。「……間違えました」
「何を」
「東海林さんに、辿り着いたとき」五百旗頭は、言った。「……言うべきか、迷いました。そして、迷った、あげく。……あなたに、言いました」
「……ああ」
「でも」五百旗頭は、言った。「……本当は、先に、東海林さんに、聞くべきでした」
「……」
「わたしは、探偵の、真似事を、して」五百旗頭は、言った。「……犯人を、特定することばかり、考えて、いました。……理由を、聞くことを、忘れて、いた」
……。
御手洗と。
同じことを。
言って、いる。
「五百旗頭」
「なんですか」
「お前の、せいじゃ、ない」
「……」
「俺が、聞いた」俺は、言った。「俺が、あいつに、聞いて。……あいつが、認めた」
「……ええ」
「それだけだ」
……。
それだけ、なのに。
なんで。
こんなに。
何もかも。
壊れて、いるんだろう。
◇
その、夜。
帰り道。
俺は。
駅前の、交差点で。
東海林を、見た。
一人で。
竹刀袋を、担いで。
信号を、待って、いた。
……。
声を、かけようか。
迷った。
一秒。
二秒。
三秒。
その、間に。
信号が、変わって。
東海林は。
歩き出した。
俺は。
動けなかった。
……何を、言えば、いいんだ。
「大丈夫か」?
……大丈夫な、わけがない。
「なんで、やったんだ」?
……もう、聞いた。答えなかった。
「ごめん」?
……何を、謝るんだ。
悪いのは。
あいつ、だろ。
……そう。
悪いのは。
あいつ、なのに。
なんで。
こんなに。
追いかけたく、なるんだ。
◇
その、あと。
俺は。
一人で、歩きながら。
ずっと。
考えて、いた。
御手洗の、言葉を。
『猫は、理由を、言わないでしょう?』
『でも、本当は、理由が、あったのかも、しれない』
『言わない、だけで』
……理由。
あいつには。
理由が、あった、のか。
だとしたら。
何だ。
何が、あったら。
あいつが。
あんなことを。
――そこで。
思い出した。
別れ際の、あいつの、言葉を。
『……第七役職』
『……あれ、もう。調べないで』
……。
足が。
止まった。
なんで。
あのとき。
あの話が。
出た。
あれは。
一巻の、ゲームの、あと。
誰にも、配られなかった。
七枚目の、カード。
ずっと。
謎の、まま、だった。
でも。
あいつは。
「調べるな」と、言った。
まるで。
――知っている、みたいに。
◇
家に、帰って。
俺は。
机の、引き出しを、開けた。
一番、奥。
封筒の、中に。
あのカードが。
まだ、あった。
《第七役職》
何度、見ても。
それだけしか。
書かれて、いない。
……。
俺は。
そのカードを。
じっと、見ながら。
考えた。
東海林は。
なぜ。
これを、調べるなと、言ったのか。
……危険だから?
……知られたく、ないから?
それとも。
……。
俺は。
スマホを、取り出した。
そして。
五百旗頭に。
メッセージを、送った。
『明日、話がある』
『第七役職のこと』
既読が、ついた。
すぐに、返事が、来た。
『わかりました』
『わたしも、同じことを、考えていました』
(第14話 了)




