↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛推理ゲーム  作者: SSS
しずかな、うらぎり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
55/114

第7話 証拠らしきもの

====================

第7話 証拠らしきもの

====================



噂は。


放っておけば、消える。


……はず、だった。



◇



「――森本(もりもと)。ちょっと、いいか」


昼休み。


担任に、呼ばれた。


職員室では、なく。


廊下の、隅。


それが、逆に。


嫌な、感じ、だった。


「なんですか」


「文化祭の、備品の、件だが」担任は、言いにくそうに、切り出した。「……パイプ椅子が、一脚、破損している。脚が、曲がっていた」


「知ってます。撤収のとき、聞きました」


「うん。それでな」担任は、言った。「……その椅子の、下から。これが、出てきた」


担任が。


ポケットから、取り出したのは。


――俺の、キーホルダーだった。


家の、鍵に、つけてた、やつ。


少し前に、なくした、と、思ってた。



◇



「……これ、俺のです」


「そうか」


「でも」俺は、慌てて、言った。「俺、その椅子、触ってません」


「そうか」


「本当です」


「うん」担任は、頷いた。「まあ、それはいい。……ただ、お前、文化祭の、あの時間。どこに、いた?」


……。


うっ。


「……逃げてました」


「そうだよな」担任は、ため息を、ついた。「つまり、お前には、その時間の、アリバイが、ない」


「アリバイって」


「先生も、そんな大げさな話に、したくない」担任は、言った。「椅子一脚だ。弁償で、済む話でもある。……ただな」


「……」


「最近、お前の、噂が。……いろいろ、聞こえてくる」


……ああ。


そっちか。


「先生は、噂は、信じない」担任は、言った。「でも、こういう、物が、出てくると。……庇いにくくなる」


……。


何も。


言い返せなかった。



◇



放課後。図書室。


俺は、その話を。


全部、話した。


「……キーホルダー、ですか」


五百旗頭(いおきべ)が。


眉を、寄せた。


「なくしたのは、いつですか」


「たぶん、文化祭の、少し前。……気づいたら、なかった」


「どこで?」


「わからん。……教室か、部室か、廊下か」


「拾った人が、いれば」五百旗頭は、言った。「……置くことは、可能です」


「置く?」


「破損した椅子の、下に。……置いておけば」五百旗頭は、言った。「あなたが、そこに、いた、ように、見える」


ぞ、と、した。


「……そんなこと、するか?」


「わかりません。……ただ」五百旗頭は、言った。「偶然、あなたのキーホルダーが、そこにあった。……その確率は、低い」


五百旗頭は。


指を、折り始めた。


「あなたが、なくしたのは、文化祭の前。破損は、文化祭当日。……なくした場所と、破損場所が、一致する、必然性は、ありません」


……そう、言われると。


たしかに。


変だ。



◇



でも。


それだけじゃ、なかった。



三日後。


今度は、こんな話が、出た。


「――森本くん、放課後、体育倉庫に、いたよね?」


一年生の、女子に、話しかけられた。


まったく、面識のない、子だった。


「え? 行ってないけど」


「あれ? でも、見たよ。先週の、水曜」


「水曜?」


「うん。夕方。……体育倉庫の、鍵、開けてた」


……。


行ってない。


体育倉庫なんて。


一度も。


でも。


その、女子は。


心底、不思議そうな、顔で。


「……絶対、森本くんだったけどな」


と、言った。



◇



「――また、それか」


俺は、頭を、抱えた。


「また、『見た』ってやつだ。……前と、同じだ」


「……いえ」


五百旗頭が。


首を、振った。


「今回は、違います」


「なんで、そう言える」


「前回は、あなたが、有名になったことで。……顔を知らない生徒が、勝手に、誤認しました」五百旗頭は、言った。「でも、今回」


五百旗頭は、俺を、見た。


「――体育倉庫の、鍵の、貸出記録を、見ました」


「……は?」


「生徒会の、書記ですから」五百旗頭は、淡々と、言った。「備品管理の、書類は、見られます」


……そうか。


こいつ。


生徒会に、入ったんだった。


「先週の、水曜。夕方。……体育倉庫の、鍵は、確かに、貸し出されています」


「誰に!?」


「……署名欄には」五百旗頭は、言った。「『二年二組・森本基成』と、書いて、あります」


……。


心臓が。


跳ねた。


「書いてない!」俺は、叫んだ。「俺、そんなの、書いてない!」


「筆跡は」五百旗頭は、静かに、言った。「……あなたのものと、よく、似ています」



◇



しん、と、なった。


図書室が。


やけに、静かに、感じた。


「……偽造?」俺は、かすれた声で、言った。


「わかりません」五百旗頭は、首を、振った。「ただ、可能性は、三つです」


五百旗頭は、指を、立てた。


「一。あなたが、書いた。……そして、忘れている」


「忘れてない!」


「二。誰かが、あなたの筆跡を、真似た」


「……」


「三。誰かが、あなたに、書かせた」


「書かせた?」


「たとえば、別の書類に、署名させて。……それを、差し替える」五百旗頭は、言った。「あなた、最近。何かに、名前を、書きましたか」


……。


書いた。


山ほど、書いた。


文化祭の、参加名簿。


応援演説の、承諾書。


進路希望調査。


委員会の、確認書。


……全部。


誰かに、渡した。


「……いくらでも、あるな」


「ええ」五百旗頭は、言った。「……つまり、三の可能性が、いちばん、高い」



◇



「……なあ、五百旗頭」


「なんですか」


「これ、やってるやつ」俺は、言った。「……俺の、近くにいる、やつだよな」


五百旗頭は。


答えなかった。


でも。


その、沈黙が。


答えだった。


キーホルダーを、拾える距離。


署名した書類に、触れられる立場。


俺の、行動を、把握している人物。


……近い。


かなり、近い。


「……気持ち悪いな」


俺は、そう、言うのが、精一杯だった。



◇



その、とき。


図書室の、扉が、開いた。


「……」


東海林(しょうじ)四季だった。


いつもより。


さらに、遅い、時間に。


「四季」


「……ん」


「今日も、部活か」


「……うん」


四季は。


席には、座らずに。


立ったまま。


言った。


「……ごめん。……今日、すぐ、帰る」


「え?」


「……明日、練習試合。……早い」


「……そうか」


「……ん」


四季は。


それだけ、言って。


扉に、向かった。


でも。


その、途中で。


一度だけ。


立ち止まって。


振り返らずに。


言った。


「……森本」


「なんだよ」


「……気を、つけて」


「……何に?」


「……」


四季は。


答えなかった。


そのまま。


出て、いった。


……。


気を、つけて。


何に?


……わからない。


でも。


その、声が。


いつもより。


少しだけ。


硬かった、気が、した。



(第7話 了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。