↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛推理ゲーム  作者: SSS
恋愛推理ゲーム

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
5/112

第4話 攻略対象

====================

第4話 攻略対象

====================



俺の勝利条件は、五百旗頭(いおきべ)から、俺への恋愛感情を、引き出すこと。


で、あの箸休めみたいな時間のあと、俺は、ちょっとだけ、思った。


(あれ。これ、意外と、いけるんじゃね?)


だって、宇宙の話で、あんなに、盛り上がった。猫の話も、聞いてくれた。「知りたい」とか、言ってくれた。


これはもう、実質、両想い――



「森本(もりもと)くん」


「はいっ」


「なぜ、そんなに、にやにやしているのですか。気持ち悪いですよ」


「ひどっ」


撤回。実質でもなんでもなかった。



◇



とはいえ、やらなきゃ、出られない。


俺は、勇気を出して、五百旗頭に、話しかけた。攻略、開始だ。


「なあ、五百旗頭。あのさ」


「なんですか」


「昨日の、宇宙の話、面白かった。もっと、聞きたいな、と」


我ながら、下手くそだ。でも、間違ってはいない。もっと話して、距離を縮めて、いい感じになって、恋愛感情を、引き出す。作戦としては、正しい。


ところが。


五百旗頭は、俺の顔を、じいっと、見た。


それから、すっと、目を、細めた。数学の問題を、解くときの、あの目で。


「……森本くん」


「な、なんだよ」


「あなた、急に、優しいですね」


「え」


「昨日から。やけに、わたしに、話しかけてくる。宇宙の話を、聞きたがる。猫の話も、した」


「そ、それは」


「――このゲームは、恋愛推理」五百旗頭の声が、低くなった。「誰が、誰を、好きな『役』か、当てるゲーム。だとすれば」


まずい。こいつ、勘が。


「森本くん。あなた、もしかして――わたしを、『攻略』する役、なのでは?」


ばれた。


いや、正確には、当てられた。


しかも、思いっきり、正解を。



◇



「ち、ちがう」


「またまた。図星の顔をしていますよ」


「してない」


「では、聞きますが」五百旗頭が、ずい、と、詰め寄ってきた。「昨日の『知りたい』は、本心ですか。それとも、攻略の、一環ですか」


「それは……」


言えない。だって、両方だ。半分は、作戦。でも、半分は――いや、それも、よくわからない。


俺が、黙っていると。


五百旗頭は、ふ、と、口の端を、上げた。


「――いいでしょう」


「え」


「あなたが、わたしの『攻略役』かどうか。それを、確かめます」


「確かめる、って」


「簡単なことです」五百旗頭は、腕を組んだ。「あなたを、観察します。四六時中。あなたが、本心で近づいているのか、役割で近づいているのか。論理的に、見極める」


「四六時中!?」


「ええ。ではでは、覚悟してください、森本くん」



……あれ。


これって。


攻略しようとした結果。


逆に、こいつに、張り付かれる、ことに、なったのでは?



◇



で、実際、五百旗頭は、俺に、張り付いた。


「森本くん、その漫画のどこが好きなんですか。論理的に説明してください」


「論理も何も、面白いから面白いんだよ」


「非論理的ですね。減点です」


「減点すんな」


飯を食うときも。


「森本くん。なぜ、そんなに、早く食べるのですか。観察の対象として、興味深いです」


「見んな。食いにくい」


寝るときも。


「森本くん。寝相を、観察しても?」


「寝れねえよ!」


……こいつ。攻略対象を、観察するって、こういうこと、じゃないだろ。


でも。


張り付かれて、四六時中、一緒にいて。


気づいたら、俺たちは、めちゃくちゃ、喋っていた。


くだらないことも。宇宙のことも。猫のことも。


攻略、とか、観察、とか、そういう名目で。


ただ、ずっと、一緒に、いた。



◇



「――ねえ」


御手洗(みたらい)が、遠くから、その様子を、眺めていた。こてん、と首をかしげて。


「あの二人、なんだか、仲がいいわね。まるで、ロミオとジュリエットの、バルコニーの――」


「出た」と、通りかかった俺は言った。


「出た、じゃないの。世界史じゃなくて、文学だったでしょう、今の」


「あ、ほんとだ。珍しいな」


「わたしだって、たまには、文学の、たとえくらい――」


「まあ、いいや」



このとき、俺は、聞き流した。


御手洗の、たとえが、ほんの少し、いつもと、毛色が違ったことを。


世界史の女が、文学のたとえを、したことを。


――たいしたことじゃ、ない。そう、思った。


思って、しまった。



(第4話 了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。