第7話 文化祭の、準備
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第7話 文化祭の、準備
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事件は、事件。文化祭は、文化祭だ。
証言の、謎は、まだ、解けていない。五百旗頭は、相変わらず、証言を、集めては、数式を、書いている。
でも。
世の中には、待ってくれない、ものが、ある。
そう。
文化祭だ。
「二年二組は、喫茶店だってさ」
クラス全員で、準備。……つまり、俺も、駆り出される。
面倒くさい。心底、面倒くさい。
でも――なんだかんだ、こういうの。嫌いじゃ、ない。
◇
で。
なぜか。
準備の、割り当てが。
俺と、五百旗頭、だった。
「……」
「……」
二人で、黙々と。
メニュー表を、作る。
気まずい。
めちゃくちゃ、気まずい。
だって。学校中が、俺たちを、「付き合ってる」と、思ってる。そんな二人が、隣同士で、作業してたら。
「ねー、見てー。森本くんと、五百旗頭さん」
「やっぱ、付き合ってるんだよ」
「お似合いー」
……ほら。
周りが、にやにや、する。
「……森本くん」五百旗頭が、小声で、言った。真っ赤な顔で。「わ、わたし、あっちの、作業に、移ります」
「あ、待て。……いや、待たなくて、いいか」
「な、なんですか、その、言い方!」
「いや、お前が、いると、余計、噂が」
「わたしの、せいだと!?」
……こいつ。
面倒くさいけど。
まあ。
嫌いじゃ、ない。
◇
昼過ぎ。
買い出し、当番に、なった、俺は。
なぜか、東海林四季と、二人だった。
剣道部が、休みらしく。四季も、クラスの、準備に、来ていた。
二人で、荷物を、抱えて、廊下を、歩く。
「……森本」
「なんだよ、四季」
「……五百旗頭と、仲いいね」
「また、それか」俺は、ため息を、ついた。「噂だって。付き合ってない」
「……知ってる」四季は、ぽつり、と、言った。「……森本、嘘、下手だから。……本当に、付き合ってないのは、わかる」
「なら、いいだろ」
「……でも」
四季は。
荷物を、抱えたまま。
少し、うつむいた。
「……最近、森本。……遠い」
「遠い?」
「……なんか。みんなに、囲まれて。……噂に、なって。……忙しそうで」四季の、声が、いつもより、小さかった。「……昔は。もっと、二人で、いたのに」
……あ。
なんか。
こいつ。
めずらしく。
素直だ。
◇
「……なあ、四季」俺は、言った。「今、二人だぞ」
「……え?」
「今。俺と、お前。二人きり、だろ」
四季は。
きょとん、と、して。
それから。
ほんの少し。
口元を、ゆるめた。
「……そうだね」
「だろ」
「……うん」
それきり。
俺たちは、また、黙って。
でも。
さっきより。少しだけ、近い、距離で。
廊下を、歩いた。
……こういうの。
悪くない。
昔から、そうだ。
四季と、いると。無理に、喋らなくても。平気なんだ。
それが。
幼馴染って、やつ、なのかも、しれない。
◇
夕方。準備も、大詰め。
教室の、飾りつけを、していると。
「よー、みんな、がんばってるー?」
湊ミライが。ひょっこり、顔を、出した。
「湊。お前、二年三組だろ。手伝いに、来たのか?」
「まさか。見物」ミライは、けらけら、笑った。「あ、でも。森本が、脚立の、上で、飾りつけしてる、姿は。……ちょっと、面白いから、見てく」
「面白がるな」
と。
そのとき。
御手洗が。飾りの、リボンを、抱えて、通りかかった。
「あら、森本くん。それ、そこじゃ、なくて。もう少し、左よ」
「こう、か?」
「そう。……ふふ。まるで、バベルの塔を、建てる、労働者みたいね」
「たとえが、また、世界史……」
「わかりやすいでしょう」
「わかりにくいって」
ミライが。
その、やりとりを、見て。
にやにや、した。
「ねー、御手洗さん」
「なあに?」
「森本のこと。……好きなの?」
ぶっ。
と。
今度は、俺が、脚立の上で、むせた。
「な、何、聞いてんだ、湊!」
「べっつにー。聞いてみただけ」ミライは、御手洗を、見た。「で? どうなの?」
御手洗は。
こてん、と、首をかしげて。
それから。
けろっと、した顔で、言った。
「好きよ?」
「――ぶっ!!」
俺は。
脚立から。
落ちそうに、なった。
◇
「お、お前、何を!」
「あら、だって」御手洗は、平然と、言った。「森本くんは、いい人だもの。好きよ。……友達として」
「――友達!」
「あら、違うの?」
「いや、違わないけど! ……びっくり、させるな!」
ミライが。
腹を、抱えて、笑って、いた。
「あっはは! 森本、顔! 一瞬、超、期待した、顔してた!」
「してねえ!」
「したー! 御手洗さんの『好き』で、どきっと、した!」
「してねえって!」
……くそ。
したけど。
ちょっと、だけ。
いや。しては、ない。
……たぶん。
でも。
その、笑い声に、囲まれて。
なんだか。
妙に。
あたたかい、気分に、なった。
事件も。噂も。証言の、謎も。
まだ、何も、解けてない。
でも。
今日、この、教室にいる、みんなが。
なんだかんだ、好きだな、と。
そう、思った。
――このときは。
まだ。
この、平和が。
当たり前に、続くんだと。
思っていた。
(第7話 了)




