↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛推理ゲーム  作者: SSS
きみを見ていたのは、誰?

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/112

第4.5話 アガサみたいで、かわいい

====================

第4.5話 アガサみたいで、かわいい

====================




事件だ、なんだと、五百旗頭は、息巻いていたけど。


それはそれ、これはこれ。


人間、四六時中、推理ばかりは、していられない。


だから、その日の、放課後も。


俺は、いつも通り、図書室で。漫画を、読んでいた。


……そして、気づいた。


御手洗《みたらい》の、様子が。


いつにも、増して。おかしい、ことに。



◇



御手洗(みたらい)澪は。


本棚の、前で。


じーっ。


と。


一冊の、本を。


睨んで、いた。


微動だに、せず。


何分も。



「……御手洗?」俺は、声を、かけた。「何、してんだ」


「しっ」


御手洗は、俺を、手で、制した。


「今、いいところ、なの」


「いいところ?」


「この本が。……逃げるか、どうか」


「本は、逃げない」


「わからないわよ」御手洗は、真剣な顔で、言った。「昨日、この本を、戻したとき。背表紙が、一ミリ、ずれたの。……誰かが、動かした、証拠だわ」


「お前が、ずらしたんだろ」


「わたしじゃ、ないわ」


御手洗は、そう言って。


そーっ、と。


本に、手を、伸ばし。


びくっ。


と、手を、引っ込めた。


「……今、動いた」


「動いてない」


……こいつ。


相変わらず、何を、考えてるのか。


さっぱり、わからん。



◇



それから、しばらく。


御手洗は、図書室の、あちこちで。


意味不明の、行動を、続けた。



窓際で、日向ぼっこを、するみたいに、目を、細めたり。


誰も、いない方向を、じーっ、と、見つめたり。


かと、思えば。急に、トトト、と、小走りで、本棚の、陰に、隠れたり。


「……御手洗さん、今日、特に変ね」


通りかかった、五百旗頭も、首を、かしげていた。


でも。


俺は。


その様子を、見ているうちに。


だんだん。


……なんか。


むずむず、してきた。



◇



だって。


そうだろ。


日向で、目を、細めて。


意味もなく、小走りで、隠れて。


誰もいない、方向を、じっと、見て。


それ。


完全に。


猫の、動きなんだよ。



俺は。


昔、猫を、飼っていた。


アガサ、っていう、名前の、三毛猫だ。


気まぐれで。急に、走り出して。日向で、寝て。誰も、いない、方向を、じっと、見て。


……御手洗の、動きが。


そのアガサに。


あまりにも。


そっくり、なんだ。



「――あー、もう」


気づいたら。


俺は。


御手洗の、頭に。


手を、伸ばして、いた。



◇



わしゃわしゃ。


「……ふぇ?」


御手洗が。


きょとん、と、した。


でも、俺は、止まらなかった。


わしゃわしゃ、わしゃわしゃ。


「アガサみたいで、かわいいなー、お前」俺は、デレデレ、しながら、言った。「よしよし。ほんと、猫みたいだなー。よーしよし」


「あ、アガサ?」


「昔、飼ってた、猫。お前、そっくりなんだよ、動きが。……よーしよし、いい子いい子」


「ちょ、ちょっと」御手洗の、顔が、みるみる、赤く、なった。「な、なれなれしい、わよ! やめ……やめなさい!」


「よしよしよし」


「ふにゃっ……や、やめ……!」


……あ。


やば。


なんか。


めちゃくちゃ、かわいい。



◇



「――うわっ」


と。


背後から。


心底、引いた、声が、した。


湊(みなと)ミライだった。


入り口で。


ドン引きの、顔で。


俺を、見て、いた。


「な、なにこれ……森本、あんた……」ミライは、後ずさり、した。「うわっ……きもちわる……」


「き、キモくねえよ!」


「キモいって! めっちゃ、キモいって!」ミライは、鳥肌を、さすった。「女子の、頭、いきなり、撫でて。『よしよし』って。『かわいいなー』って。……うわ、思い出しても、無理。鳥肌」


「違う! これは、猫で! アガサで!」


「アガサって、誰!」


「猫! 昔飼ってた!」


「余計、こわいわ!」ミライは、叫んだ。「女子を、猫だと思って、撫でてる、男子とか! いちばん、やばいやつじゃん!」


「うっ……」


「言っとくけどね、森本」ミライは、腰に、手を、当てて。びしっ、と、俺を、指さした。「これ、一般社会なら。完全に、セクハラで、アウトだからね? 訴えられても、文句、言えないやつ」


「そ、そんな、大げさな」


「大げさじゃ、ないよ」ミライは、じとーっ、と、した。「まあ、今回は。……御手洗さんが、いいって、言ってるみたいだから。特別に、見逃して、あげるけどー?」


「――み、見逃すも、何も!」


御手洗が、真っ赤な顔で、割り込んできた。


「わ、わたしのことは! わたしが、決めるの! 湊さんに、見逃してもらう、いわれは、ないわ!」


「はいはい」ミライは、にやにや、した。「で? 御手洗さんは、撫でられて。……嫌だったの? 嫌じゃ、なかったの?」


「そ、それは……」


御手洗は。


言葉に、詰まって。


さらに、赤く、なった。


……なんで、みんな。


俺を、置いて。


勝手に、盛り上がってるんだ。


……言われて、みれば。


客観的に、見たら。


女子の頭を、いきなり、撫でて、デレデレしてる、俺は。


完全に。


不審者、だった。



◇



「……はっ」


我に返って。


俺は、手を、引っ込めた。


「わ、悪い、御手洗。つい」


「……」


御手洗は。


真っ赤な顔で。


うつむいて。


……何も、言わなかった。


あれ。


怒った、か?


いつもなら、「なれなれしい!」って、キレるのに。


「御手洗?」


「……別に」御手洗は、ぼそっ、と、言った。「……嫌じゃ、なかったから。……いいの」


「え?」


「な、なんでもない!」御手洗は、真っ赤な顔で、立ち上がって。「わ、わたし、資料、探してくる!」


ぱたぱた、と。


逃げて、いった。


その、後ろ姿は。


やっぱり、どこか。


猫みたいで。


……ちょっと、かわいかった。



「……ねえ、森本」


ミライが、じとーっ、と、俺を、見て、言った。


「あんた。……ほんと、罪な男だね」


「なんでだよ」


「わっかんないなら、いい」ミライは、ため息を、ついた。「はー。……こりゃ、噂が、立つわけだ」


ぼそっ、と。


そう、つぶやいた、のは。


俺には。


聞こえ、なかった。



(第4.5話 了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。