特別編・前編(第20.5話) 隣のクラスの、湊さん
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特別編・前編(第20.5話) 隣のクラスの、湊さん
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(※第1巻・本編後の、巻末特別編です)
第七役職の、カードを、見つけた、あの日から。
数日が、経った。
五百旗頭と、カードのことを、調べる――とは、言ったものの。何から、手を、つければ、いいのか、わからず。俺たちは、なんとなく、いつもの、日常に、流されて、いた。
その日も。
俺は、一人で、図書室を、出て。昇降口へ、向かって、いた。
みんなは、まだ、居残って、いた。五百旗頭は、宇宙の本。御手洗は、世界史。東海林は、剣道部の、練習。
俺は。
別に、用も、ないので。先に、帰ろうと、して、いた。
――そのとき、だった。
「よっ」
昇降口の、下駄箱に。
もたれかかるように。
一人の、女子が、立って、いた。
小柄で。目が、大きくて。
見覚えの、ある、顔。
いや。
見覚えなんて、ものじゃ、ない。
「……湊?」
「せいかーい」
湊ミライ。
七人目。
あの、ゲームで、御手洗に、化けていた、女の子が。
そこに。
けろっと、した顔で。
立って、いた。
◇
「お、お前」俺は、駆け寄った。「消えたんじゃ、なかったのかよ! 学校中、探しても、記録すら、ないって――」
「あー、それねー」ミライは、面倒くさそうに、手を、振った。「記録が、ないんじゃ、なくて。あんたたちが、探せてない、だけ」
「は?」
「わたし、ふつうに、この学校の、生徒だよ」ミライは、あっさり、言った。「二年三組。……あんた、二年二組でしょ。隣の、クラス」
「……隣の、クラス?」
「そう。隣。ずーっと、隣に、いたの」ミライは、にやり、と、した。「気づかなかった? まあ、気づかないよね。あんた、自分の、興味あること、以外、ほんっと、見てないもん」
……マジか。
隣の、クラス。
ずっと、そばに、いた?
あの、不気味な、七人目が。ただの、隣の、クラスの、女子?
◇
「い、いや、待て」俺は、混乱した。「だって、お前、あのとき、あんなに――」
「あんなに?」
「なんか、こう。不気味っていうか。底が、知れないっていうか。『さあ?』とか、はぐらかして。……日本史の、たとえ、しながら、消えて」
「あー」ミライは、ぷっ、と、噴き出した。「あれね。あれ、演技。びびった?」
「演技!?」
「そりゃそうでしょ。あんな、大勢の、大人が、見てる、前で。ぺらぺら、素で、喋るわけ、ないじゃん」ミライは、けらけら、笑った。「『七人目の、謎の少女』って、感じ、出しといたほうが。かっこいい、でしょ?」
……こいつ。
なんだ。
あの、緊迫した、空気は。
全部、こいつの、演出、だったのか。
「で」ミライは、下駄箱から、体を、起こした。「あんた、今から、帰り?」
「あ、ああ」
「じゃ、一緒に、帰ろ」
「は?」
「一緒に。帰ろ。って、言ったの」ミライは、当たり前みたいに、言った。「一回、聞こえたでしょ。あんた、耳、悪いの?」
「いや、悪くないけど。……なんで、お前と、一緒に」
「え、だめなの?」ミライは、こてん、と、首をかしげた。御手洗と、同じ、仕草で。「一緒に、命がけの、ゲーム、くぐり抜けた、仲じゃん。ほぼ、戦友じゃん」
「戦友って……」
「いいから、いくよ。ほら」
ミライは、さっさと、歩き出した。
……なんなんだ、こいつ。
初めて、二人きりで、喋る、はずなのに。
まるで、昔からの、友達みたいに。
ぐいぐい、来る。
◇
下校路。
夕暮れの、通学路を。
俺と、ミライは、並んで、歩いて、いた。
「ねー、森本」
「なんだよ。てか、お前、なんで、俺の名前」
「知ってるに、決まってるでしょ。隣の、クラスだもん。……ってか、あんた、わたしの、こと、ほんと、知らなかったんだ?」ミライは、じとっ、と、俺を、見た。「一年のとき、同じクラスだったのに」
「……嘘だろ」
「ほんと。ひっどいなー。まあ、いいけど」ミライは、けらけら、笑った。「あんた、そういうやつ、だもんね」
……こいつ。
なんか。
やたら、俺のこと、知ってる、な。
いや。
それは。
観戦席から、ずっと、見てたから、か?
それとも――
「あのさ」俺は、聞いた。「お前、なんで、あのゲームに、いたんだ? 学校の、選抜でも、ないんだろ。誰が、お前を、あそこに」
「んー」ミライは、空を、見上げた。「それ、聞いちゃう?」
「聞くだろ、そりゃ」
「教えなーい」ミライは、にっ、と、笑った。「まだ、ね。……そのうち、わかるよ。あんたたちが、あのカードを、ちゃんと、追えば」
「カード……第七役職の、こと、か?」
「さあ?」
――出た。
その、はぐらかし。
「けど」ミライは、俺を、見て。少しだけ、真面目な、顔に、なった。「ひとつだけ、言っとく。あのゲーム、書き換えたやつ。……ろくな、やつじゃ、ないよ」
「知ってるのか?」
「さあね」ミライは、また、はぐらかした。「でも、気を、つけな。……特に、いおきべさんとか。あの子、頭、いいから。深入り、しすぎる」
五百旗頭。
その、名前に。
俺は、少し、反応した。
それを。
ミライは。
見逃さ、なかった。
「……ふーん」
ミライの、口の端が。
にやり、と。
吊り上がった。
「なに、その、顔」
「え?」
「今、『いおきべ』って、言ったら。あんた、ちょっと、顔、変わったよ」
「変わってねえよ」
「変わったって」ミライは、俺の、顔を、下から、のぞきこんだ。「ふーん。へえ。そういう、感じ?」
「なんだよ、そういう感じ、って」
「べっつにー」
ミライは。
やたら、楽しそうに。
にやにや、して、いた。
……なんだ、こいつ。
やっぱり。
底が、知れない。
でも。
あの、ゲームのときの、不気味さとは。
ちょっと、違う。
なんか、こう。
もっと。
……たちの悪い、方向で。
(特別編・前編 了)




