第20話 今年だけが、おかしい
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第20話 今年だけが、おかしい
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すべてが、終わった――はず、だった。
密室の、正体も、わかった。学校の、秘密も、暴かれた。七人目、湊ミライの、存在も、明らかに、なった。
大人たちは、俺たちを、「今年の、突破者」として、称え。
手続きが、どうの、今後の、支援が、どうの、と、話し始めて、いた。
俺は、正直、もう、くたくたで。
早く、帰って、寝たかった。
――でも。
一人だけ。
まだ、終わって、いない、やつが、いた。
◇
「――待って、ください」
五百旗頭だった。
大人たちの、話を、遮って。まっすぐ、手を、挙げて。
「ひとつ、納得の、いかないことが、あります」
「どうした、五百旗頭くん」担任が、言った。
「このゲーム。……わたしたちのことを、知りすぎて、います」
ざわ、と。
ホールが、静かに、なった。
「森本くんの、勝利条件は、『わたしから、恋愛感情を、引き出す』でした」五百旗頭は、言った。「でも――なぜ、森本くんと、わたし、なんですか?」
「それは……」
「森本くんが、昔から、わたしを、知っていたこと」五百旗頭は、続けた。「東海林さんと、森本くんが、幼馴染で、あること。不破くんが、東海林さんを、好きだったこと。……このゲームの、勝利条件は。全部、わたしたちの、個人的な、関係を、正確に、なぞって、いました」
「……」
「事前調査を、した、と、言われれば。それまでです。でも」五百旗頭の、声が、鋭く、なった。「ここまで、個人的な、感情を。正確に、把握して、ゲームに、組み込むなんて。……ただの、調査じゃ、できません」
◇
大人たちが。
顔を、見合わせた。
何か、ざわざわと、囁き合って、いる。
「五百旗頭くん」年上の、人の、一人が、慎重に、口を、開いた。「……鋭いね。実は、我々も、少し、困惑して、いるんだ」
「困惑?」
「今年の、ゲーム。……本来の、予定とは。違うんだ」
その、言葉に。
俺も、思わず、顔を、上げた。
「本来の、予定?」
「毎回、ゲームは、事前に、設計される」その人は、言った。「今年の、ゲームも、ある人物が、設計した。……でも、その、設計図と。君たちが、実際に、体験した、ゲームは。……違う」
「違う、って」
「本来、予定されていたのは」その人は、言った。「『恋愛推理』では、なかった。もっと、別の、ゲームだった」
しん、と、なった。
「誰かが」その人は、言った。「土壇場で。ゲームを、書き換えた。……『恋愛推理』に。我々の、知らない、ところで」
◇
「書き換えた……?」五百旗頭が、つぶやいた。「誰が。何のために」
「わからない」その人は、首を、振った。「だが、書き換えた、人物は。君たち、六人――いや」
その人は、ちらり、と、ミライを、見た。
「七人の、個人情報を。深く、知る、人間だ。それも、我々、学校側でも、把握していない、レベルで」
ぞわり、と、した。
誰かが。
俺たちのことを。
学校よりも、深く、知っていて。
その、知識を、使って。
ゲームを、書き換えた。
……何のために?
「そして」その人は、続けた。「もうひとつ。……そこにいる、七人目。湊ミライ、くん」
全員の、視線が。
ミライに、集まった。
「彼女もまた」その人は、言った。「我々が、選抜した、参加者では、ない。……いつの間にか。ゲームに、紛れ込んで、いた。誰が、彼女を、送り込んだのか。我々にも、わからない」
◇
俺は。
ミライを、見た。
御手洗に、そっくりな、小柄な、女の子。
こてん、と、首をかしげる、癖まで、そっくりな。
でも。
その、目の奥は。
御手洗とは、違って。
どこか、底が、知れなかった。
「……ミライ」俺は、聞いた。「お前、誰なんだ? なんで、このゲームに、いた?」
ミライは。
少しだけ。
笑った。
「さあ?」
それだけ、言って。
また、こてん、と、首を、かしげた。
「わたしにも、わからないの。……気づいたら、ここに、いたのよ。応仁の乱の、あとの、京都みたいに。……ぐちゃぐちゃで。誰が、誰やら」
相変わらず。
たとえが、日本史だった。
でも。
今度は。
なぜか、それが。
少しも、可笑しく、なかった。
◇
「――今日は、ここまでに、しよう」
担任が、手を、叩いた。
「君たちは、よく、やった。今日は、ゆっくり、休んでくれ。……書き換えの、件は。我々の、ほうで、調査する」
大人たちが、ぞろぞろと、引き上げて、いく。
ミライも、いつの間にか。
その、人波に、紛れて。
消えて、いた。
まるで、最初から、いなかった、みたいに。
「……なあ、五百旗頭」俺は、言った。「結局、なんだったんだ? 今の」
「わかりません」五百旗頭は、眉を、寄せた。「でも、ひとつだけ、確かなことが、あります」
「なんだよ」
「このゲームは」五百旗頭は、俺を、見た。「まだ、終わって、いない。……密室も、学校の秘密も、七人目も。全部、解けた。でも――『誰が、ゲームを、書き換えたのか』。それだけが。まだ、解けて、いない」
五百旗頭は、遠くを、見た。
ミライが、消えて、いった、方向を。
「わたしは」五百旗頭は、静かに、言った。「それを、突き止めます。……このゲームの、本当の、黒幕を」
その、横顔は。
宇宙に、ガチギレしていた、あのときと。
同じ、目を、していた。
まだ、誰も、解いていない、答えに。
手を、伸ばそうとする。
あの、目を。
(第20話 了)




