第18話 選ばれた者たち
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第18話 選ばれた者たち
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開いた、ドアの、向こう。
まっすぐな、廊下を、抜けた、先に。
それは、あった。
大きな、ホールだった。
図書室の、隣に、こんな空間が、あったなんて、知らなかった。
そして――そこには、大勢の、人が、いた。
スーツを、着た、大人たち。何人かの、教師。生徒会の、腕章を、つけた、生徒。そして、明らかに、この学校の、生徒じゃ、ない、年上の、人たち。
全員が、俺たちを、見て。
そして。
拍手を、始めた。
◇
「――おめでとう」
前に、進み出たのは。俺たちの、担任だった。
いつも、事務連絡みたいな、顔で、プリントを、配る、あの、担任が。
今日は、なぜか、少し、誇らしげな、顔を、していた。
「よく、クリアした。……正直、驚いたよ。特に、後半は」
「先生」俺は、詰め寄った。「これ、どういうことですか。俺たち、閉じ込められて。消えて。……一体、何が」
「落ち着け、森本」担任は、言った。「まず、これだけは、言っておく。……今回の、ことは。この学校で、ずっと、続いてきた。非公式の、伝統行事だ」
「伝統……行事?」
「そうだ」担任は、頷いた。「毎年じゃ、ない。適性を、持つ、生徒が、現れたときだけ。開催される。……秘密の、選抜試験だ」
◇
「選抜試験?」五百旗頭が、鋭く、反応した。「何を、選抜するんですか」
「優秀な、生徒を、だ」担任は、言った。「知恵。度胸。人を、見る目。土壇場での、判断力。……ペーパーテストじゃ、測れない、力を、持つ、人間を。この学校は、昔から、こうやって、見極めてきた」
「見極めて。……どうするんですか」
「突破した、者には」担任は、少し、声を、落とした。「さまざまな、便宜が、与えられる。特別な、研究機会。奨学金。推薦。……そして、いちばん、大きいのは」
担任は、後ろの、年上の、人たちを、示した。
「この学校を、卒業した、各界の、有力者たちの、ネットワークだ。政治。経済。学術。……歴代の、突破者は、卒業後も、彼らに、支援される。……選ばれること、それ自体が。一部の、人間の、間では。名誉、とされている」
俺は、言葉を、失った。
閉じ込められて。仲間が、消えて。必死に、脱出した、あれが。
学校の。
秘密の、試験、だった。
俺たちは。
被害者だと、思って、いた。
でも。
学校側にとっては。
――「選ばれた者」、だったのだ。
◇
「ひどい」東海林が、めずらしく、声を、荒げた。「……人を、閉じ込めて。……消えたと、思わせて。……そんなの、ただの、脅しだ」
「消えた、というのは、演出だ」担任は、言った。「脱落した、生徒は、すぐに、安全な、観戦室に、移された。……危険は、一切、ない。そこは、信じてくれ」
「観戦室」御手洗が、こてん、と、首をかしげた。「ええ。快適だったわ。お茶も、出たし」
「お茶……」
「わたし、脱落してから、ずっと、あなたたちを、見ていたの」御手洗は、言った。「他の、大勢の、人たちと、一緒に。……ねえ、それが、いちばん、驚いたことなのだけれど」
◇
「観戦室には」御手洗が、続けた。「わたしたち、脱落者だけじゃ、なくて。大勢の、大人が、いたの。卒業生や、関係者が。……みんな、あなたたちの、ゲームを、見て」
御手洗は、言った。
「賭けて、いたのよ」
「賭けて?」俺は、聞き返した。
「オッズが、あったの」御手洗は、頷いた。「誰が、最初に、脱落するか。誰が、真相に、気づくか。誰が、最後まで、残るか。……全部、賭けの、対象だった」
日下部が、苦笑した。
「僕も、観戦室で、見ましたよ。オッズ表を」日下部は、言った。「いやあ、面白かったです。……本命は、五百旗頭さんでした。ぶっちぎりの。『高い論理力で、ゲームを解く』と。みんな、彼女に、賭けていた」
「まあ、当然、ですね」五百旗頭が、少し、得意げに、言いかけて。
「そして」日下部が、にっこり、笑った。「森本くんの、突破予想は。……最下位でした。ぶっちぎりの」
「……は?」
◇
「『何を、やっても、平均点』」日下部は、オッズ表を、思い出しながら、言った。「『目立った、実績なし』。『突破の、可能性、極めて、低い』。……ゲーム開始時、あなたに、賭けた人は。ほとんど、いませんでした」
「……ひでえ」俺は、頭を、抱えた。「モブ扱いに、も、ほどが、あるだろ」
「でも」日下部は、言った。「最終的に。ゲームの、ルールそのものを。『役割を、当てても、出られないんじゃ、ないか』と。疑ったのは」
日下部は、俺を、見た。
「あなた、でした。森本くん」
しん、と、なった。
ホールに、いた、大人たちの、視線が。
一斉に。
俺に、集まった。
さっきまで、五百旗頭を、見ていた、目が。
今は。
俺を、見て、いた。
まるで――初めて、俺という、人間を。
見つけた、みたいに。
◇
「面白い」
年上の、人たちの、一人が。
静かに、つぶやいた。
「本命が、解くと、思われたゲームを。最下位の、無印が、引っくり返した。……こういう、番狂わせは。久しぶりだ」
「あの、生徒。名前は?」
「森本、基成」
「……覚えておこう」
ざわ、と。
ホールが、ざわめいた。
俺は。
ただ、居心地が、悪くて。
頭を、かいて、いた。
「いや、あの。俺、別に。……たまたま、ですよ。たまたま、気づいただけで」
――でも。
そのとき。
隣で。
東海林が。
ぽつり、と。
言った。
「……だから、言ったでしょ」
「四季?」
「……森本は」東海林は、俺を、見て。小さく。でも、はっきりと、言った。「……本当は、やれば、できる、って」
「……いや」俺は、目を、そらした。「たまたま、だって」
東海林は。
それ以上は。
言わなかった。
ただ。
ほんの少し。
得意げに。
鼻を、鳴らした、気が、した。
(第18話 了)




