第17話 本当の恋
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第17話 本当の恋
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「――整理、しましょう」
五百旗頭が、言った。もう、あの、絶望した、顔は、していなかった。
「消えた、みんなの、『役割では、説明できない、行動』。そこに、本当の、気持ちが、ある。それを、ひとつずつ、解いて、いきます。……でも、わたし、一人じゃ、無理。だから」
五百旗頭は、俺と、東海林を、見た。
「二人の、記憶を、貸して、ください。わたしが、論理を、組みます。あなたたちが、実感を、埋めて、ください」
「ああ」
「……わかった」
◇
「まず、御手洗さん」五百旗頭が、切り出した。「彼女は、わたしの、役割を、暴いて、脱落した。役割を、暴けば、暴いた自分が、消える。……なのに、なぜ?」
「……あいつ」俺は、思い出しながら、言った。「消える、直前。お前に、言ってたよな。『あなたの、勝利条件は、誰かを特定すること』って」
「ええ」
「あれ、たぶん」俺は、言った。「お前に、気づかせようと、したんじゃ、ないか。『お前は、人を、特定しようと、しすぎてる』って。……論理ばっかり、見て。大事なものを、見落としてる、って」
「……」
五百旗頭が、はっと、した。
「御手洗さんは」五百旗頭の、声が、震えた。「自分を、犠牲にして。わたしに、教えようと、した。……『推理だけじゃ、ダメだ』と。……そういう、こと、ですか」
「たぶんな」
「……あの人らしい」五百旗頭は、少し、泣きそうな、顔で、笑った。「不思議で。猫みたいで。……でも、いちばん、人のことを、見ていた」
その、瞬間。
端末が、ぽう、と、灯った。
《御手洗澪の、本心を、証明しました》
◇
「次は、不破くん」五百旗頭が、続けた。「彼の、役割は、あなたと、東海林さんの、妨害。……なのに、最後に、彼は」
「東海林が、見てるのは、俺だ、って」俺は、言った。「教えて、くれた。……妨害する役、なのに。俺と、東海林を、くっつける、ような、ことを、言って、消えた」
「なぜ、だと、思いますか」
「……わからん」俺は、正直に、言った。「でも」
隣で。
東海林が、ぽつり、と、言った。
「……不破は」
「四季?」
「……わたしを、好きだった。だから」東海林は、目を、伏せた。「……わたしが、幸せに、なることを。……最後に、選んだ。自分の、勝利より」
しん、と、なった。
「……自分の、負けが、確定しても」東海林は、続けた。「……好きな人が、好きな人と、結ばれる、ほうが。……いいって。……そう、思ったんだと、思う」
東海林の、声が。
少し、湿って、いた。
「……ばか、だよね。不破」
端末が、また、灯った。
《不破楓也の、本心を、証明しました》
◇
「最後に、日下部くん」五百旗頭が、言った。「彼は、自分から、脱落した。安全な、観戦席へ。……争いが、嫌いだ、と」
「でも、あいつ」俺は、言った。「わざわざ、連絡して、きた。『ゲームが、書き換えられてる』って。『気をつけろ』って。……自分は、もう、安全なのに」
「なぜ、そんなことを?」
「……お節介、だからだよ」俺は、笑った。「あいつ、そういう、やつだ。誰にでも、いい顔して。広く、浅く、付き合って。……でも、本当は。放って、おけない、やつなんだ。困ってる、やつを」
「……聞き役に、徹して」五百旗頭が、続けた。「自分のことは、話さない。でも、いざと、なると。誰よりも、先に、動く。……そういう、人、でしたね」
「ああ」
「彼の、本心は」五百旗頭は、言った。「『みんなを、無事に、帰したい』。……それが、争いを、避けて、観戦席に、逃げた、本当の、理由。誰も、脱落させたく、なかったから。自分から、抜けた」
端末が、三度、灯った。
《日下部久遠の、本心を、証明しました》
◇
三つの、光が。
端末の、上で。
静かに、灯って、いた。
御手洗。不破。日下部。
みんなの、本当の、気持ちが。
役割の、裏に、隠れていた、本心が。
いま。
証明、された。
「……あと」五百旗頭が、小さく、言った。「残って、いるのは」
五百旗頭は、俺を、見た。
それから、東海林を、見た。
そして、自分の、胸に、手を、当てた。
「わたしたち、三人の。本当の、気持ち」
「……」
「でも」五百旗頭は、ふ、と、笑った。「それは。ゲームの、ためじゃ、なくて。……ちゃんと、自分の、言葉で。あとで、伝えます。……ゲームが、終わったら」
その、瞬間。
《…………》
《すべての、本心が、示されました》
《GAME CLEAR》
◇
ゴォン、と。
空気が、震えた。
ずっと、開かなかった、図書室の、ドアが。
ゆっくりと。
開いて、いく。
その、向こうに。
まっすぐな、廊下が。
見えた。
同じ、本棚じゃ、ない。ちゃんと、続く、廊下が。
「……出られる」俺は、つぶやいた。「出られる、ぞ! 五百旗頭! 四季!」
そして。
ドアの、向こうから。
足音が。
聞こえて、きた。
一人。二人。三人。
「――やあ、みなさん。お久しぶりです」
日下部が。にこにこ、笑って。
「まったく。手こずらせて、くれるわね」
御手洗が。こてん、と、首をかしげて。
「……ふん。遅い」
不破が。ぶっきらぼうに。
みんな。
帰って、きた。
消えたと、思った、みんなが。
ちゃんと。
無事で。
笑って。
戻って、きた。
「……よかった」
俺は、その場に、へたり込んだ。
力が、抜けた。
よかった。
本当に。
誰も。
消えて、なんか、いなかった。
――このときは。
まだ。
思っても、いなかった。
このあと。
もっと、驚くべき、真実が。
待っている、ことを。
そして――帰ってきた、この、顔ぶれの、中に。
まだ、俺が、言っていない、"ひとり"が。
いることを。
(第17話 了)




