第15話 正解、しかし
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第15話 正解、しかし
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残ったのは。
俺と、五百旗頭と、東海林。
……いや。人数を、数えるのは、やめておこう。とにかく、少なく、なった。
広い、図書室に。空いた、椅子が、いくつも、並んでいる。
日下部の、椅子。御手洗の、椅子。不破の、椅子。
みんな、"観戦席"に、行った。無事だ、と、日下部は、言った。
でも。
ここに、いないことに、変わりは、ない。
◇
「――わかりました」
その日。五百旗頭が、突然、顔を、上げた。
何日も、数式と、格闘して。隈を、作って。ぼろぼろに、なって、いた、五百旗頭が。
目に、光を、宿して、いた。
「森本くん。東海林さん。聞いて、ください」五百旗頭は、立ち上がった。「わたし、全員の、役割が、わかりました」
「全員の?」
「ええ」五百旗頭は、指を、折り始めた。「日下部くんは、『全員の役割を、特定する』役。御手洗さんは、『本当の恋心を、見つける』役。不破くんは、『あなたと、東海林さんを、妨害する』役。東海林さんは、『あなたを、守る』役。そして――」
五百旗頭は、俺を、見た。
「森本くん。あなたは、『わたしから、恋愛感情を、引き出す』役」
「……」
全部、当たっていた。
こいつ、本当に、解いたのか。全員の、勝利条件を。
「そして、わたしは」五百旗頭は、続けた。「『わたしを、攻略する役が、誰か、特定する』役。……その、答えは、あなた、森本くん」
五百旗頭は、少し、さびしそうに、笑った。
「あなたは、最初から。わたしを、攻略する、役だった。……全部、ゲームの、役割、だったんですね」
◇
「――ちが」
俺は、言いかけて。
やめた。
だって。
半分は、本当だ。俺は、五百旗頭を、攻略する役、だった。恋愛感情を、引き出す、ために、近づいた。
でも。
残りの、半分は。
宇宙の話で、笑ったのも。猫の話を、したのも。「今の、お前のほうが、いい」と、言ったのも。
あれは。
役割じゃ、なかった。と、思う。
でも――それを、どう、証明すれば、いいんだ?
「……とにかく」五百旗頭は、端末に、向かった。「役割は、全部、わかった。これを、入力すれば、クリアの、はず。……ここから、出られます」
五百旗頭は、端末に、一人ずつ、役割を、打ち込んで、いった。
日下部。御手洗。不破。東海林。森本。そして、自分。
全員分。
打ち込んで。
最後に。
エンターキーを。
押した。
◇
画面が、明滅した。
そして。
《判定中……》
《…………》
《正解》
「――やった!」俺は、思わず、声を、上げた。「正解、だってさ! さすが、五百旗頭!」
五百旗頭も、ほっとした、顔で、端末を、見た。
東海林も、少しだけ、肩の力を、抜いた。
出られる。
やっと。
この、長い、閉じ込めから。
解放される。
――でも。
待っても。
待っても。
ドアは。
開かなかった。
「……あれ?」
俺は、出口に、駆け寄った。ドアを、開ける。廊下。歩く。曲がる。
――同じ、本棚。
戻って、きた。
「なんで、だよ」俺は、もう一度。ドアを、開ける。歩く。
――同じ、本棚。
出られない。
正解、したのに。
出られない。
◇
「そんな……」五百旗頭が、端末を、見て、青ざめた。「正解、と、出たのに。なぜ、出口が、開かないんですか」
五百旗頭は、必死に、端末を、叩いた。
「役割は、全部、当てました。判定も、正解。論理的に、完璧なはず。なのに――どうして」
五百旗頭の、声が、震え始めた。
「わたしの、推理は、正しい。答えも、正しい。……なのに、出られない。そんなの、ありえない。数式は、嘘を、つかないのに。正しい、答えを、入れたのに。……なんで」
五百旗頭が、崩れそうに、なった。
論理の、天才が。数式を、信じてきた、こいつが。
正解を、出したのに、報われない、という。
その、理不尽に。
打ちのめされて、いた。
――そのとき、だった。
「……なあ、五百旗頭」
それまで、黙って、見ていた、俺が。
口を、開いた。
自分でも、なんで、そんなことを、言ったのか、わからない。
ただ、ふと。
引っかかった、ことが、あった。
「俺たちさ」
「……なんですか」
「誰が」
俺は、言った。
「――『役割を、全部当てれば、出られる』って、言ったんだ?」
しん、と。
なった。
五百旗頭が。
大きく、目を、見開いた。
まるで。
足元の、地面が。
音を立てて、崩れていく、みたいに。
(第15話 了)




