第12話 情報屋の、再来
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第12話 情報屋の、再来
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それは、端末が、また、勝手に、灯った、ことから、始まった。
いつものような、ゲームの、指示じゃ、なかった。
画面に、表示されたのは、短い、メッセージ。
《やあ、みなさん。お久しぶりです》
「……この、口調」俺は、画面を、凝視した。「まさか」
五百旗頭が、息を、のんだ。
「日下部くん……?」
《正解です。さすが、五百旗頭さん》
《僕は今、"外"から、これを、打っています》
「外?」俺は、思わず、声を、上げた。「日下部、お前、無事なのか! どこに、いるんだ!」
《無事ですよ。ぴんぴんしています》
《ただ、少し、説明が、必要ですね》
◇
端末越しに。
日下部は、静かに、語り始めた。
《僕は、脱落しました。でも、消えたわけでも、死んだわけでも、ありません》
《脱落した人間は、"観戦席"に、移されるんです》
《今、僕は、そこから、みなさんを、見ています》
「観戦席……?」五百旗頭が、つぶやいた。「では、御手洗さんも――」
《ええ。御手洗さんも、こちらに。元気ですよ。相変わらず、不思議なことを、言っていますが》
俺は、ほっと、した。
御手洗も。日下部も。無事だった。
消えたんじゃ、なかった。どこかで、生きていた。
その、事実だけで。
胸の、つかえが、少し、取れた。
でも。
五百旗頭は、違った。
五百旗頭は、青い顔で、端末を、見つめて、いた。
「……日下部くん。ひとつ、確認させて、ください」
《なんでしょう》
「あなたは、第7話――いえ、最初に、脱落した。あのとき、あなたは、どの条件にも、当てはまって、いなかった。勝利条件の失敗でも、嘘の露見でも、役割の看破でも、なかった。……なのに、消えた」
《よく、気づきましたね》
「教えて、ください。あなたは、なぜ、脱落したのですか」
少しの、間。
それから、画面に、文字が、流れた。
《自分から、脱落したんです》
◇
「自分から……?」俺は、混乱した。「なんで、そんなこと」
《僕は、経験者です。前にも、こういうゲームを、くぐり抜けた》
《だから、知っていたんです。脱落は、負けじゃない。"別の出口"なんだと》
《クリアして、出るか。脱落して、観戦席から、出るか。出口は、二つ、ある》
――ああ。
そうか。
あのとき。
日下部は、言った。
「クリアすれば、出られる」と。
「自分は、前のゲームから、出られた」と。
でも。
一度も。
「自分が、クリアした」とは。
言って、いなかった。
あいつは。
前のゲームも。
きっと――脱落して。観戦席から、出たんだ。
《僕は、争いが、嫌いなんです》五百旗頭の、推理を、待たずに、日下部は、続けた。《多数決のゲームで、学びました。人を、蹴落として、生き残るのは、性に、合わない。だから、今回も、早々に、抜けました。観戦席から、安全に、出るために》
「……ずるいぞ、それ」俺は、言った。「一人だけ、先に、逃げて」
《ええ。ずるいです》日下部は、あっさり、認めた。《でも、森本くん。僕は、逃げた先で、あることに、気づいたんです。だから、こうして、連絡している》
◇
《観戦席から、見ていて、わかったことが、あります》
日下部の、文字が、続いた。
《このゲーム、僕たちを、観ているのは――僕たち、脱落者だけじゃ、ない》
「どういう、意味だよ」
《観戦席には、他にも、大勢、いるんです》
《僕の、知らない、大人たち。生徒。……それに、卒業生らしき、人も》
《みんな、みなさんの、ゲームを、見て。まるで――賭け事でも、するみたいに、盛り上がっている》
ぞわり、と、した。
賭け事。
俺たちの、必死の、脱出劇を。
誰かが、酒でも、飲みながら。
楽しんで、見ている?
《そして、もうひとつ》
《これが、いちばん、大事です》
日下部の、文字が、一拍、置いて。
《このゲーム。今年のものだけ、"何か"が、おかしい》
《観戦者たちも、ざわついている。「今年は、予定と、違う」と》
《誰かが――このゲームを、書き換えた、らしいんです》
◇
「書き換えた?」五百旗頭が、鋭く、反応した。「誰が。何を」
《そこまでは、わかりません》日下部の、返信は、そこで、少し、乱れた。《すみません。もう、時間です。観戦席からの、通信は、長くは、繋げない》
「待って。もう少し――」
《ひとつだけ。五百旗頭さん、あなたに》
《このゲームを、クリアするだけじゃ、足りない。"書き換えた誰か"を、見つけないと。本当の意味では、終わらない》
《それと――》
画面が、明滅した。
消える、直前。
最後の、一文が。
《みなさんの中に、まだ、僕の知らない"誰か"が、いる気がする》
「――は?」
俺が、聞き返す、前に。
画面は、暗転した。
日下部は、また、"外"へ。
消えて、しまった。
◇
「……今の、最後の」俺は、つぶやいた。「『知らない誰かが、いる』って、どういう、意味だ?」
「わかりません」五百旗頭は、眉を、寄せた。「日下部くんの、見間違い、かもしれません。観戦席から、見ていたら、脱落者と、参加者が、入り混じって、数を、見誤った、とか」
「まあ、そうだよな」
俺は、頷いた。
うん。そうだ。見間違い、だろう。
だって、ここに、いるのは。
俺と、五百旗頭と、東海林と、不破。
それと――
……いや。
やめておこう。
人数を、数えるのは、面倒くさい。
それに。
今は、そんなことより。
日下部の、言葉のほうが、重要だ。
このゲームを、書き換えた、誰か。
それを、見つけないと、本当には、終わらない。
話が。
どんどん。
でかく、なっていく。
(第12話 了)




