第11話 守る役
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第11話 守る役
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日下部が、消えて。
御手洗が、消えて。
残ったのは――俺と、五百旗頭と、東海林と、不破。
四人に、なった。
いや、人数を、数えるのは、やめておこう。とにかく、減った。減ってしまった。
図書室は、広く、感じた。
空いた、椅子が、やけに、目立った。
◇
「――森本」
その日、東海林が、めずらしく、俺に、話しかけてきた。向こうから、というのは、珍しい。
「なんだよ、四季」
「……あんまり、うろうろ、するな」
「うろうろ?」
「……端末に、近づいたり。棚の、奥に、行ったり。……危ない」
「なんで、危ないんだよ」
「……勘」
東海林は、それだけ言って、また、黙った。
でも、その日から。
東海林は、なぜか、ずっと、俺の、近くに、いた。
俺が、動くと、ついてくる。俺が、端末を、見に行くと、さりげなく、間に、入る。俺が、五百旗頭と、話していると、少し、離れた、ところで、じっと、見ている。
まるで――俺を、守って、いるみたいに。
◇
「……なあ、五百旗頭」俺は、こっそり、聞いた。「東海林の、やつ、なんか、変じゃ、ないか。ずっと、俺の、そばに、いる」
「気づいて、いなかったのですか」五百旗頭は、あきれた顔で、言った。「東海林さんは、あなたを、守ろうと、しています。たぶん――彼女の、勝利条件は、あなたに、関係している」
「俺に?」
「ええ。推測ですが」五百旗頭は、声を、ひそめた。「『森本を、脱落させない』。あるいは、『森本を、守る』。そういう、条件なのでは、ないかしら」
俺を、守る。
それが、東海林の、勝利条件?
「でも」俺は、首を、ひねった。「それ、確かめられ、ないだろ。だって、役割を、見抜いたら――」
「見抜いた、本人が、脱落する」五百旗頭が、頷いた。「そう。だから、わたしたちは、東海林さんの役割を、口に、できない。確かめた、瞬間に、消えるから」
……そうだ。
第10話の、あの、ルール。
御手洗が、五百旗頭の役割を、暴いて、消えたときの、あれ。
誰かの、秘密に、近づきすぎると。近づいた、自分が、消える。
だから。
俺は。
東海林が、なぜ、俺を、守るのか。
その、理由を。
確かめることが、できない。
◇
でも、俺は、思う。
かりに、東海林の、勝利条件が、『森本を、守る』だったとして。
じゃあ、こいつが、俺を、守るのは。
ゲームの、役割、だから、なのか。
それとも――
「四季」
「……なんだ」
「お前さ。なんで、俺のこと、守るんだ?」
東海林の、肩が、ぴくり、と、動いた。
「……ルールで、言えない」
「役割のこと、聞いてるんじゃ、ない」俺は、言った。「役割、抜きで。お前が、どう、思ってるか。それを、聞いてる」
「……」
東海林は、しばらく、黙って、いた。
それから。
ぽつり、と。
「……森本は」
「ん?」
「……昔から、そう。自分のことは、平均点だって、言うくせに」
「まあ、平均点だし」
「……ピンチのときだけ。急に、本気に、なる」
「……」
「わたしは、それを」東海林は、俺を、まっすぐ、見た。表情の乏しい顔で。でも、その目は、なぜか、少し、潤んで、見えた。「……知ってる。ずっと、昔から。だから」
「だから?」
「……森本が、本気を、出す、その日まで」
「……」
「……わたしが、守る。役割とか、関係なく」
しん、と、なった。
役割とか、関係なく。
東海林は、そう、言った。
それが。
本当なのか。
それとも――このゲームで、俺を、油断させる、ための、嘘なのか。
判別する、方法は、ない。
このゲームは、嘘を、ついても、いいから。
でも。
なぜだろう。
俺には。
東海林の、その言葉が。
嘘には、聞こえなかった。
◇
遠くで。
それを、見ていた、不破が。
めずらしく、静かに、していた。
いつもなら、「モブ」と、突っかかってくる、はずなのに。
ただ、じっと。
東海林の、横顔を。
見て、いた。
その、目が。
とても、さびしそうだったことに。
俺は、気づかない、ふりを、した。
◇
その夜。
俺は、東海林の、言葉を、思い出していた。
「森本が、本気を、出す、その日まで、わたしが守る」。
……本気、か。
俺は、本気を、出したことが、ない。面倒くさいから。
でも。
このゲーム、報酬が、あるっていうし。みんな、消えていくし。
そろそろ、ちょっとは。
本気、出しても、いいのかも、しれない。
……いや。
まだ、だ。
まだ、その、ときじゃ、ない。
なぜか、そう、思った。
まるで――本気を、出す、タイミングを。
俺自身が、どこかで、計っている、みたいに。
(第11話 了)




