第七話 日本編 カーラ奪還作戦
--タイムリミット残り三百五十三日二十一時間
『日本編
基本情報 人口七〇〇〇万人
高齢化率四〇%
AI化率三〇%
最低賃金一七〇〇円 』
「これって必要な情報なん?なんか最低賃金とかいらんくねって思ったりするんやけど」
AI化率はまだしもとは思ったな俺も。
『まあこれはあるネットサイトから拾い上げたものだからね』
げっ。とんでもAIやな、ワトソンは。
「AIなのにめんどくさがりはよくわからんね」
『カーラちゃん。ここはオリジンのメンバーとして見逃すところじゃないのかい?』
ほんまにこいつAIか?めっちゃ親の私情挟んでそうやな。
「はいはい、面倒なAIね」
「てかさ、このデータって今のものじゃないんじゃないの?」
シーナが的確な質問を投げかける。俺もさっきスマホを使おうとしたが使えなかったし。
『そうだね、でもここは過去なんだ。普通に考えてこのデータは有効なはずだろ?』
「いや、僕が外出た時は全然ちゃうかった気がするねんな。ほんとに日本かってつい思ってまうことがあったんよな」
そういえばこいつは生まれは違うけど育ちは日本だって言ってたな。
『それは本当なのか?逆に私はザ・日本な感じがしたけどね』
「それはないやろ。なんか人の温かみを感じんかったし、なんか景色も冷たい感じがした」
ワトソンという名のAIを信じるか、ジョナサン・フルマティックを信じるかと言われたら俺は後者を選ぶだろう。
「ジョナくんはいつまで日本に住んでたの?」
なんだろう、この違和感。このカーラの発言に何かが隠れている気がする。
「二歳から十四歳までや。さあ、もうええやろ。本題に移ろうや」
俺の中の違和感は不思議とどこかへと消えていく。
『ちょっと待て。今、シェールから連絡が入った。明日この一軒家にて合流すると』
なにしてるんだ?あいつは。単独行動できるレベルのなにかを隠し持っているのか?
「了解」
この言葉を合図に俺たちは親指を立てて前に突き出した。
『詳しい概要はシェールから伝えてもらう。今日は自由にしてもらって構わない』
--タイムリミット残り三百五十三日二十時間
「なんだか懐かしいなあ、去年までここにいたもんなあ」
懐かしげに浸っているジョナに対して、俺は試しに無茶振りを振ってみた。
「さあ、ジョナくん。ここで一句!」
「陽炎や AIだとか 人間や 汗で知らせし 真偽の泉」
うおー!すげえな。意味は理解できないけど……
「ここが和泉って地名であることと金の斧、銀の斧とをかけてみたんやで。今の日本を背景にして」
なるほどねー、そう言われてもやっぱりわかんないや。
「あ、コンビニや。ちょっと寄ってくるわ」
あれ?カーラいたんだ。全然気づかなかった。彼女は俺たちを後ろから静かに追っていた。それに二人とも気づかなかった。
「じゃあ俺らは先帰ってるな」
「りょーかい」
――
『まずいことになった、カーラが逮捕された。それも相当重い罪に問われているそうだ』
あいつ何したんだ?俺たちが帰ってからまだ三〇分も経ってないぞ。
『クレジットカードの不正利用らしいんだ。君たちはこの世界では中学生だ。カード偽造と年齢詐称で捕まっているらしい』
「それは完全に盲点だった、高校生になってできることが増えたけど、今は中学生として動かないと」
シーナですら抜けていた点だ。俺も気をつけないと。
『今から予定を後に回してカーラ奪還作戦に移行する。すでにシェールには伝えてある。今夜合流する予定だ』
俺の真の力を発動させる時がきたか、フハハ。
「げっ、きも。何ニヤニヤしてんのよ。あんた」
え、誰のことかな。そんなキモいやつどこにいるんだ?俺はマルに視線を向ける。あれえ、俺に向いてるやん。
「いいじゃないか、カーラを奪還してその勢いで俺は告白するぜ」
「成功確率およそ五%未満」
静かにシーナがつぶやく。
「いや、独り言だとしても聞こえてるからな?聞かせてるとしたら許さないぞ?」
「実はね、僕も好きなんだ。カーラのことが」
ならやることは一つだよな。
「俺たち二人は命をかけてカーラを奪還しにいく。元はといえば俺たちの確認不足だったけど……」
「みんなー、久しぶりやね」
お、ついにお出ましか。
「シェール!」
マルが声を上げる。なんだか声に抑揚がのってとっても嬉しそうだった。
『帰ってきたか。それでは早速だが、今回の計画を教えてやってくれ。この計画はAIの私から見ても完璧だ』
「でもまずは謝らせてもらうよ。みんな今までオリジンの清楚系枠の座を開けてしまってごめんね」
なんだか急に部屋の気温が上がってきた気がする。
「清楚系は私よ。何を勘違いしているの?」
やはりか、マルが対抗しだす。
「あなたは全くもって清楚じゃないわ。特にその対抗心は熱血でかっこいいじゃない。体育系女子枠でしょ?」
「いや、その口の汚さよ。人をここまで貶すやつが清楚なわけないじゃない」
「一回黙ろうか、僕たちには時間がないんじゃないのかい?」
確かに、言い争っている暇はない。
「そんなことはないねんけど……まあいいや。本題に入ろうか」
「彼女は今、すでに神戸にある唯友刑務所に入れられている。別名は『絶対に出れない刑務所二十四時』だ」
え?時間は十分にあるってことか。てか、名前の癖がすごいぃ。
「さっきまで浜松刑務所にての捜査を行っていた。はっきり言って脱出する道はいくらでもあるで」
「それは僕のような運動音痴でもか?」
ここにきて自虐を入れてくるシーナ、なかなかやるな。
「僕も怪我してんねんけどいける?」
「リーダーは確か……いや……」
なんだか少しシェールの纏う空気が変わる。
その後も計画の話は続いていき、
――
かくかくしかじか。
「わかった?あとは指示を聞いてな」
それじゃあ行こうか。
「ミッション開始」
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