第二話 くまのぬいぐるみ
結局、高校への連絡がいってしまったのだろうか。俺は学校に戻った時、怒られてしまうのだろうか。
「予定を遅らせたなら今から行くってことか?」
もう終わらせたという可能性はない。つまり、俺は予定を遅らせてまで掃除を行うことになったということだ。きっと俺らが終わる頃にはみんな遊びに行ってるだろうな。帰りたい、地球に
「いや、それが学校から連絡返ってきてないねん。今までこんなことあったか?」
「いや、なかったと思う。僕が連絡を入れた時は毎度五分以内には返ってきてたはずだ。…………」
ジョナの言葉に呼応するようにシーナが何かを言ってたが、後半は難しすぎて俺には聞き取れなかった。
「じゃあ、学校は今どうなってるの?」
「もしかして、飛んでいいやつなん?」
「乗るしかない、このビッグウェーブに」
俺以外みんな理解しているようだ。俺から見てもアホそうなカーラさえわかってるらしい。もしかしたら、この中でいちばんのアホはイノ・トツシンなのかもしれない。
「すまん、俺にもわかるように説明してくれ」
「つまりだね、清掃がなくなるかもしれないんだよ」
なるほど、激アツじゃん。他のみんなはちゃんとやってんのかな?てか、最初からそう言ってくれよシーナくん。あれ?これってまずいんじゃないか?
「え、でも連絡つかんならまずくね?俺たち帰れなくないか?」
「確かに、考えてもみなかったな。いや、最悪緊急連絡をとる。これで解決するはずだ」
この数分だけでシーナへの信頼はマルを超えた。これからも頼りにしていこう。
「俺は早く帰りたいからもう連絡しようや。後でやっても今やっても一緒よ?」
「そうやね、帰るのがいまは最優先やと思うわ」
わかってるじゃないか、シェールくん。てかあんなぬいぐるみ持っていたか?
「このグループのリーダーである僕が連絡するわ。待っとってやみんな、司令室行ってくるわ」
そう言ってジョナは談話室を出て行った。ここに残ったのは五人。俺は空いた席につく。もちろん何も起きないはずもなく……
――
俺たちは指スマを始めていた。待ち時間にすることがなかったから罰をかけたゲームをすることになった。
「罰ゲームは一位の人が最下位の人にひとつ命令できる。これでどう?」
うんうんとみんなが頷き、それに流されて俺も頷くことになった。
そして、試合が始まる。序盤は接戦が続き、全員があがりにリーチをかけた。
「指スマ六」
「え?何してんの?」
マルが声を出した。周りも声こそ出さなかったが、この状況が全く理解できてないないようだった。遅れて俺も気づいてハッとする。
「もしかしてマックスが五だった?うっわー、負けたやん。絶対」
一位が遠のく、訳ではあるものの最下位にさえならなければいい。こんな時こそ割り切りが大事だと思う。
「指スマ三……。よっしゃ、あがりー。たいおつでした」
そのまま順調にみんなあがっていき、最下位はマルとなった。ん?この状況不味くないか?俺は直感で足を動かしていた。今は彼氏がいない、ということは確実にキレている。
こんな時に限って自動ドアが開くのが遅い。足踏みをしながら待っているとすぐにマルが俺に飛びついてきた。完璧な卍固めを決められた。だが、そこに神は舞い降りてくる。
「ジョナ、帰ってきたか。早く俺を解放してくれ、命が持たない」
呆れた様子だが、なぜか額に汗をかいている。
「もしかして連絡つかなかった?どうみても焦ってるようにみえるけど」
それは間違いない、カーラの言葉にみんな頷く。
「お前何してんの?一人で。今それどころやないねんけど」
あれ?気づいた頃には俺だけが地面に転がっていた。後ろを振り返ると椅子に座り直しているマルが視界に入った。あいつは後で締め返す、絶対だ。
「どういうことだ?何があった?」
冷静な口調でシーナが声をかける。ジョナも今の言葉で少し落ち着いたのだろう。一回深い呼吸を行う。
「どうやら連絡をする手段がなくなったみたいや。つまり、音信不通になっている僕らは退学ってわけや」
え、それって俺らが悪いの?てか、それどころじゃない。焦ればこんなにも頭が働かなくなるのか、こいつは。
「は?そんなわけないでしょ、ばっかじゃないの。目を覚ましなよ。つまり、ここに閉じ込められたのよ?退学云々じゃないでしょ?」
え?なんでこっちに向かってくるんだ?カーラちゃん。
「グハッ……」
鳩尾に中段のキックが突き刺さる。え?俺は瞬く間に気を失ってしまった。そして、次に目を覚ますとカーラが元の位置に戻っていた。なんかシェールがくまのぬいぐるみを抱えている?いつの間に?
「なんかこの子が話したいんやって、みんなテーブルを囲んでくれへん?」
久々にシェールが俺たちに声をかけた。なんだこのぬいぐるみは?いかにも話し始めそうだ。
「えーかわい、いー。ぎゅーしたーい」
カーラが抱きつきにいこうとした時に、目が赤く光った。
『今から端的にこの状況を話す。少し黙って聞いてくれ』
どう考えても若い声ではなかった。そして、これは五〇歳のある研究者の声に似てる気がした。
『まずは一つ。今現在、地球は火の海と化している』
一体どういうことだ、このAIは嘘をついているのか?
「そんなわけない。地球が火の海になるとすればAIと人類の全面戦争くらいだ」
シーナの言うことはなぜか納得できる。みんなもそうなはずだ。
「シーナの言うことは基本的に正しい、間違ったことはない。特に私の前では。つまり、地球は全面戦争に突入している」
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