第一話 オリジン
光の速度を超えたメッセージはあるひとつの惑星に辿り着いたのであった。
惑星『ニロスッタ』
物語は唐突に。
見覚えのない天井から始まる。だが何か初めて見た景色ではなかった。
視界が白に染まっていく中でひとつ、体内時計が狂っている気がする。目覚めが悪かったわけではない。ただただ、体は本能でここはどこかと探っていく。
とりあえず外に出てみることにしよう。結論はあまりにも一瞬で決まった。
人の声が聞こえる。その方向へと俺は歩み寄っていた。
ここは宇宙船、少しずつ脳が活性化されてくる。札にラウンジと書かれてある部屋の前で足を止めた。
「ん、おはよー」
人がいれば挨拶をする、知人がいるなら尚更だ。自分の纏う空気が四方からの呆れた声で吹き飛ばされる。出迎えの空気感は全くもってなかった。
「はあ?」
視線が一斉に自分の元に集まっていた。これは俺に対して言ってたのだと完全に目覚めた脳が判断をくだす。
「お前のせいで予定遅れてんねんけど?まずは謝罪してもらうで。ほんまになにしてんの?」
マルーノ・マーシャルが俺に怒鳴る。彼女は昔からこういうやつだった。傲慢な態度で椅子にもたれかかっている。円卓の騎士、この言葉が似合う。席は五つしかなく満席だ。
ピリピリしていた空気に恐怖が混ざり出し、宙を漂っている。
宇宙船の共同スペースで、俺は
土下座をすることになった。
「すまなかった、申し訳ない。何か詫びさせてはくれないか?」
地面に頭を擦り付ける。でもなんで謝罪なんてしてるんだ?疑問が言葉にのってしまっていた。それを今までの付き合いで感じたマルが俺に声をかける。
「なんだろう、気持ちがこもってないよね。適当にしてるようにしか感じんよ、それ。ちゃんと一人一人に謝ってほしいな」
周りを見渡すと頷くのが五人。一人は眉ひとつ動かさずに、静止している。
「俺はなんで謝らないといけないんだ?理由がないのに謝る義理はない。」
呆れた声で聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
「なぜわからない?時計みろよ、時計を」
ジョナサン・フルマティックの言葉にハッとしてしまう俺がいる。時計?もしかして寝坊したのか、俺。いまは暦二〇六〇年四月の二八日、そして時間は九時をまわっていた。ふと思うことがある……九時という時間に。
今日は月例行事の特殊清掃日だった。だから今、俺たちはニロスッタに宇宙船でやってきている。
「すまなかった、申し訳ない。それでなんで君たちはここに?」
また呆れた関西弁が飛んでくる。今度はもっと深いため息と一緒に。
「お前のために予定ずらしてんやん、そんくらいわかれよ。だから謝罪求めてんねん。僕らは」
やはり俺の脳は他責をしたいようで疑問が頭に浮かんでくる。そして、まるで自分が悪くはないような言い草で彼らに問いかけた。
「なんで起こさんかったん?てかそこの三人は初めましてよな、なんでそんな馴染めてんの?」
本当にこいつはバカだな。揺るがぬ空気の中にその言葉が五回、俺の横を通り過ぎる。そして、マルが口を開いた。
「お前が起きるまでにどれだけの時間があったと思うの?私たちはもう仲良しなのよ」
確かになぜ馴染めているか聞いた。だけど返答して欲しいのはなぜ起こさなかったか。そんなのは二の次だ。
「マルってアホやねんな」
ここでマルのすぐ横から俺の核心をつく鋭いナイフが飛んでくる。
「なに言ってんの?一回起こしにいったやん。んだけど、起きる気配せんかったから。いや、てかどうやったら起きるん?お前って」
俺は今まで一回たりとも寝坊をしたことなんてなかった。そして、誰かに起こしてもらうことさえなかったはずだ。なぜかここで一人の人物が俺たちの間に割って入ってきた。
「さっきから聞くだけだったけどね、私にも話させなさい。自己紹介もまだだっていうのに、勝手にそっちで進めないでくれる?」
空気が空気で顔を直視できなかったけど、よくみたらすげえ美人じゃん。同級生にこんな子いたか?化粧もめちゃめちゃ上手だし、マルとは大違いだ。この子とは仲良くなっておきたいな。なんか寝坊なんてどうでもよくなってきた。
「俺の名前はイノ・トツシン、以後お見知り置きを」
キメ顔を作り、角度も調整して自分が一番かっこよく見えるよう努力をする。思い出せば口が悪いような気がするが気にしない。
「私はカーラ・ゾルディックよ、よろしく頼むわね。ほら、残りの二人も挨拶しなさい」
カーラか、いい名前だな。にしても、態度がデカすぎやしないか?きっとこれまで持て囃されてきたんだな。次に男が続く。
「僕はシーナ・サルマットだよ、よろしくね。イノくん」
日本人……に似てるのか?教科書で見た程度だが、特徴が当てはまりすぎてる。というか、カーラとの関係性はあるのかどうか探っていく必要がありそうだ。
「私はシェール・ニコラス、方言バッチバッチやで。よろしく頼むね」
これで俺たち六人は全員が顔見知りとなった。
そして、俺たちはまだ知る由もなかった。
ここから『オリジン』というグループになることを。
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