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第〇話 最終プログラム 『サジュの野望』

題一 人間とAIは共存できるか


現在の地球ではAIと人間が共存していると言っても過言ではない。人間には人間の仕事が、AIにはAIの役目がそれぞれ与えられ、住みやすい世界となっている。第一言語が英語に統一され、第二言語は各国の母国語となった。


そこで問題となるのがAIの進化と人類の退化である。AIが進化をすると相対的に人間は退化する。(通称:サジュールの反比例)


今の時代のAIはすでに一般人に紛れて生活をしている。AIの進化によりエネルギー源の問題が重要視されていた時代もあったが、宇宙への進出が可能になったことで、資源問題は解決した。そして、食糧問題も改善され残された問題は人類の退化だけとなった。


二〇五〇年。これを境に完全な機械化が進み、仕事もAIが大半を預かるようになっていき世界が安定をし始めたのである。それに伴い、義務教育が変化していき、大学という学習領域に通う人さえ減少傾向にあった。


人間にできることはAIが完璧に遂行できる。次第に人間の価値はAIと逆転することとなるだろう。つまり、このままいけばAIに侵略される日もそう遠い話ではないということである。


上記によりある一人の研究者が結論を出した。


『AIを滅亡させるべき』と。


著者:イノ・マンシェイン



――


 

ここは世界で唯一の機関。『No.25』


コンピュータが一台だけ置かれた真っ白な立方体の中に一人の研究者が椅子に腰を下ろしていた。


「もうこれ以上の進化を見過ごすわけにはいかない」


彼は白衣をだらしなく羽織っていて、中にはスーパーのTシャツを着ている。下はスウェットでいかにも慌ててきましたみたいな感じがする。そして、(せわ)しいという言葉が今いちばん似合いそうである。


見た目とは合わないキーボードの音が管理室に響きわたる。タイピングは無慈悲なほど正確で焦りなんてものは微塵も感じさせない。だが、空調管理が完璧なこの部屋で一粒の雫が地面へと落下する。それは、着地をせずに宙へと消えていく。


『スー』


扉が静かに横開きをする。彼は背を向けたまま、誰がきたかを知っているように話し始める。扉の音が聞こえたのだろう。


「今日は何しに来たんだい、僕を殺すのなんてまだまだ早いんじゃない?権限はこっちにあるんだ」


命がかかっている状態なのにのうのうと返事をする。じきに扉は閉まり部屋は密室となる。


扉から入ってきたのはサジュールであった。ラフな格好ではあるものの白衣の着こなしは完璧でシワひとつない。AIは現在寸分の狂いもなく正確に人を模して作られている。特にこの施設では尚更。


いま、どちらが本物(人間)かと問うても見た目では判断がつかない。


「君の使命はプログラムされているはずだ。『人間が平和に暮らせる世界を作ること』だと」


このプログラムにバグが起こったことはプロトタイプから一回もないらしい。だが、ここ最近は街中で不具合が生じ出していた。


「君は素晴らしい模型(コピー)だ。それを心に刻んでおくといい。これは僕からの最後の言葉、ニロスッタ・サジュールのね」


『プログラム停止』


エンターキーを押した瞬間に機能が暴走モードへと切り替わってしまう。プログラムの書き換えがされていたようだ。


空間は静かなままで、機械が動く音なんて一切なかった。エンターキーの音が反響している。ただそれだけだった。


すでに手の中には拳銃が収まっていた。照準はすでにこちらに合っている。避ける手段なんて存在しない。もう彼には逃げ場がない。だからこの事実を受け止めるだけしかできなかった。


しかし、脳が状況を分析し冷静な判断を下す。『この星はずっと受け継がなければならない。』今や全てはサジュールの手の中にあった。だからこそ、この最終プログラムを発動させる必要がある。


サプレッサ付きで音はほとんど反響せず、外に漏れることはなかった。


「グハッっ、、、」


銃弾が脇腹を掠める。通り過ぎた弾丸はコンピュータに直撃する。そして、コンピュータは動かなくなった。この状況においても、救助はこない。この部屋を出入りできるのはサジュールだけだったから……


「なんとか即死は逃れたようだ……ゴフッ」


何もなかった管理室には血のようなものが地面に広がる。白い部屋が赤を際立たせる。


「情けだとは思わないのか。わざわざ急所を外したのだぞ」


「僕の野望は叶えることができなかった。なら、こいつらに託すとしようじゃないか。人類の希望を」


彼はポケットに手を入れて、腕時計を取り出した。そして、横のボタンを押し込む。


「なに!?予備の電源だと、、」


『プログラム作動』


「うまぐ、、いっだようだな……」


その言葉のあと彼は完全に静止し、再度動くことはなかった。


サジュールは動かなくなった研究者に言葉をかける。優しい口調で。


「ありがとうな、大事に使わせてもらう」


そう言って死体は残されたまま管理室は永遠に開くことはなかった。


だが、想いを乗せた最後のプログラムは、無事にある宇宙船に到達しようとしていた。

読んでいただきありがとうございます。


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毎週月、木、土曜日の投稿を目標に更新していきます。


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