第十四話 日本編 カーラ奪還作戦 最後の罠
「なにかあったか?ここまでに」
俺は疑問を口にする。ただただ、耳が苛立ちを感じつつ歩いているだけ。罠なんてどこにもない。
「ないね、私が見る感じやと」
お前に聞いてない、なぜシェールが答える?これですらブラフの可能性があるんだろ?
「私も見てないね、もうすでにかかってたりして。ふふ」
それだとまずいんだけど……マルが答えてくれたのはありがたい。今の情報源はマルと俺だけだから。
「じゃあ、このまま進もうか。何もないようだし」
俺たちはひたすら歩き続ける。いつしか放送も聞こえなくなっていた。毎回の選択肢は二つ。右から左で、あってるかすらわからない。
「一回引き返してみる?」
これは俺たちにとって究極の質問だ。しかも、この提案がシェールのものともなれば尚更。彼女は微笑むだけ。ただただ、優しいおじさんが微笑んでいる。まるで、遊具で遊んでいる孫を見ているかのように。
「そうだな、君だけ引き返せばいいんじゃない?」
これで一時的にシェールとの距離を取る。そうすれば、少し気持ちが落ち着ける気がした。
「私は別に構わないけど……マルはいいんかな?」
そうだよな、一番客観的な視点で見れるのはマルだ。マルの判断に任せることにしよう。
「私はやだ!全員で行こう。ここで別れてしまえば、一生、心の距離が空いてしまう気がする。私たちの旅はまだ始まったばかりなのよ?ここで仲間割れはダメだと思う」
これが客観的な意見。いいや、何も知らない奴の意見だ。でも……マルが言うなら仕方がない。どうせここで俺が反発すれば、マルはきっとシェールについていくことになる。
「それで進むのかい?戻るのかい」
一番大事なことを忘れていた。今のところ主導権は全てマルが持っている。俺は彼女がどう答えるか分かった上で聞いた。
「もちろん進むでしょ。私たちに退く道なんて残されてないんだから。カーラを救うためなら前進あるのみよ」
やっぱり進む選択をするよな。俺はマルを信じるぜ。
「イノはもしかしてまだ不満があるのかい?さっきからずっと緊張を解いてない。常に見えるなにかに警戒しているように見えるけど」
もう何が何だかわかんねえよ。死んでもいいや。そんなことを思ったが、ふと一人の言葉が頭をよぎる。
『諦めたらそこで……』
えっとこれは違くて、これは某アニメのセリフでー、
『人生が二度訪れることはない。そして、今も二度訪れないんだ。だから、今を生きろ。どれだけ挫けても死ぬなんて考えるな!これがおばあちゃんの最期の教訓だよ』
あれ?なんだろう。額から涙が……
この言葉を思い出したのはこれが初めてだ。死を実感するってこういうことか。俺が死ねば悲しむ奴がいる。それは避けないといけないんじゃないのか?俺!死ぬのは老衰でって決めただろ。
「なんで泣いてるんや?あー、そういうことね。少しずつ方向が戻ってきているよ。このままいけばなんとかなるかもしれんね」
ダメだ、本当にこいつの思考が読めない。急に裏切り者のように振る舞ったり、時には預言者になったりする。
「さあ、少し足を止めようじゃないか」
俺はなりふり構わず腰を下ろした。一旦状況を整理したい。
「ほう、一体何がしたいんや?私はいない方がましか?」
んー、そうか。少し先に行っていてもらおうか。
「そうだね、少し先いっておいてもらえるかな?次は右に曲がってくれ」
「りょーかい、じゃあまたあとでね」
手を振る彼女を見送る俺とマル。手を振る方向は明らかにマルの方にだけだった。
「じゃあ、経緯を説明しよう。俺はシェールを裏切り者だと判断した。だから、ずっと警戒をしていた。歩いている時ずっと」
シェールが見えなくなってから話し始めた。
「でもさ、シェールが裏切り者であるエビデンスがないよね?」
エビダンス?一切合切こんな状況なのに、何を言っているんだ?俺は疑問を頭に浮かべる。
「こんな感じか?エビダンスって」
俺は実演してみることにした。緊迫していた空気が一時的に緩む。
「ごめん……それはなに?」
一体どういうことなんだー?俺は寝転びながらケノビのポーズでぐるぐる回転する。
「やっぱ、おもしろいわ。お前」
お?それはよかった。よかった。でも、俺は真面目にしてるんだよな。
「バカにされてることに気づかないのか?」
「え?」
えー!?今のってバカにされてたんや。
「じゃあ聞くけどさ、エビダンスって何?」
ここで一番の大爆笑が起きる。
「なるほどね、エビデンスを聞き間違えたんか。普通に考えてあの文面で、エビダンスにはならないでしょ」
さっきからずっと俺をバカにしながら笑ってる。
「じゃあ、教えてあげるよ。エビデンスってのはね証拠。証拠のことね」
じゃあ、最初からそう言ってくれないといけないよね?ね?
「はあ、俺でもわからない言葉があったなんてな」
あえて俺は誇らしく言ってやった。
「あんたは確かアップルしか英語しらないもんね。ごめんね。君の会話レベルに合わせてあげれなくて」
「まあ、いい。とりあえず証拠に近しいものはある!」
でもよく考えたら……裏切り者らしからぬ行動をしているような?
「一回シェールがいるか確かめにいこうよ。もしいたら裏切り者でいいかい?」
正直これが一番手っ取り早い。俺たちは右の通路へと足を進めた。
「いない……だと?」
俺が言った場所にいないとわけか。つまり一旦は裏切り者としていいということだ。
「本当にシェールが裏切り者なの?」
ああ、そうだ。彼女は裏切り者だ。でも待てよ?先に行かれたら、カーラや他のみんなが危ない!
早くみんなの元へ行かないと。
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