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第十一話 日本編 カーラ奪還作戦 第二の罠

「俺たちは進むしかないのか?」


俺は迷路といっていいほど曲がり角が多くて、形も単調なところにいる。


「そうだね、この地図もここからは当てにならない。扉の位置がわからない以上どうしようもない」


罠がわからない状態で罠に突っ込むアホはいない。俺はマルを先に歩かせることにした。


「どう?何かある?」


俺たちは丁寧に歩き続ける。時間の余裕はいくらでもあるから。少し歩いたところで気づく。


「これってただの迷路なんじゃないか?」


そうだとしてもここまで何もないのは違和感だ。俺はただの迷路と発言したものの、ただのすぎて怖い。


「そうだね、今のところは。でもこの地図に罠だよって書いてるところがこの迷路の先に存在するんだよね」


「それは一体どういうことだ?」


シェールが今まで黙っていたことに怒りを表しつつも、一回冷静になって質問する。


「吹き出しに罠だよって書かれてるねん。そのままやで。あ、ちなみに今ちょうど罠のとこ」


は?え、ちょまっ……もうすでに俺たちは罠に足を踏み入れていた。


「構造は単純よ。ただの一本道!」


シェールの言葉を聞いて俺は理解する。それと同時に後ろを振り返る。案の定だった。


「扉……また閉まったわね」


今回は天井も飛べるような高さではない。そして、罠が何かわかっていない。


「くるぞ、構えろー!」


え、なんだ……なにがくる?俺は出てきた細長い棒状のものと目を合わせる。


「え、何が起きるの?え?」


俺たちは目を合わせてから十秒ほど経った。でも、何も起きない。


「く、くるぞー!」


俺たちは目を合わせてから六十秒ほど経った。でも、なにも起きない。


「こ、こんどこそー」


「なんだ、何も起きないじゃん。私たち何してたんだろうね」


俺たちは一気に緊張を解いた。呼吸の回数が多くなり、心拍数があがる。


「なんだ!?急に地図が光り出したぞ。これは一体……」


俺たちはまた構える。


「き、きたー」


何かが舞ったのは見えた。赤い何かが。


俺は咄嗟に目を閉じる。でも、全てを防ぎきれているわけではない。


「いったあ‼︎」


二人の怒号が響き渡る。俺たちはすぐに目を擦る。


「唐辛子だ……」


シェールがそう呟く。なんか急に罠のレヴェルが下がった気がする。ほとんど子供騙し。だが、どうせ目潰しは次の罠をより効果のあるものにするためだろう。


「てか、前が見えない。しかも、目を擦ってしまったで」


「一回落ち着いてくれ。驚くべきことが起きた。水飲み場ができてきたぞ。手探りで見つけれるか?」


それも罠なんじゃないのかと、頭をよぎるが今はそれどころではなかった。目が焼けるような痛み。それを水で洗い流し続ける。


「カプサイシン……おそるべし」


俺の呟きと同時に次の罠が作動する。今度は鼻か……


ひん曲がりそうだぜ。そうか……鼻栓‼︎俺は即座に鼻へと突っ込む。ふう、これで一安心っと。


「マル!大丈夫か、マル!」


俺は体をさするが一切動きをしていない。もうカプサイシンの効果が切れているはずなのに額から水滴が溢れ出しそうになる。


「一回落ち着け!イノ!彼女はただ眠らされているだけだ……」


シェールの一言で俺は一回冷静になる。そして、手首に指をあて、脈を測る。大丈夫だ、生きてる。


俺の額から涙がこぼれてしまう。喜びの涙で押し出した、悲しみの涙が。


「俺は今から何をしたらいい?ただ罠を待つだけじゃ、二人ともやられる。マルの前で罠を止めないと!」


「そうだよね、でもどうするんや?眠ったままのマルを動かすのは現実的じゃない。かと言って罠を止めるのも現実的じゃないだろ?」


そうだ、そうだ。今度こそ本当に万事休すなのかもしれない。


「フッ」


俺は不適な笑みを浮かべて、自信満々に話し始める。


「この四面楚歌な状況でこそ、俺の真価は発揮される!」


「はあ、最近覚えたのね。四面楚歌って言葉を」


クッ……なぜバレた?いや、だがそんなのは関係ない。シラをきればいい。俺のさっきの涙がどこへ行ったのか。そんなもいい。


ただ今の状況が俺にとって、不愉快だ。


「あのお、まだ涙出てますけど?」


え?あ、まじか。俺はすぐに腕で涙を拭く。そして、もう一回決め直す。


「俺には孤軍奮闘という言葉が似合う。そして、俺は一人のときこそ、真価を発揮する!」


今度こそ完璧に決まった。監視カメラに向かって指も指した。


「それも最近覚えた言葉でしょ。使いたくなるのはわかるけど知ったかぶりはよくないよ」


は、何を言っている?俺は……ニヤリ。


「君こそ四面楚歌や孤軍奮闘の意味を知っているのかな?」


勝った、勝ったぞ。


「もちろん知ってるで。流石に高校生で知らんかったらまずいやろ」


そうなのか!?四字熟語は必修ではなかった気がするぞ?現に俺が知ったのも最近だし……


「じゃあ、答えてみろよ。知ってるんだろ?」


俺はそれでも強気に出る。ここで勝てなければ、シェールには一生勝てないだろうから。


「味方がおらず周囲から孤立しながらも、一人で懸命に戦い続けること。総括するならこんな感じかな?」


ほら言った、俺は一人で今から戦う。周囲に仲間なんていないんだよ。


「じゃあ、合ってるじゃないか。この状況こそ、四面楚歌であり孤軍奮闘だ!」


「いや、それは違うね。君には私がついている。そして、今から私はそこへ行く!」


は?それってどういう意味だ?


「君の周りにずっとまとわりついていたものは何かわかるかい?もちろん今もだけど」


もしかして、こいつか!情報共有してたこの謎のやつ。俺はそれに向かって指を指す。


「今からそっちに行くよ。実態ではないけどそっちに意識を飛ばす」


眩い光と同時に俺の目の前には人影が映し出された。

 


読んでいただきありがとうございます。


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次回もよろしくお願いします。

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