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第十話 日本編 カーラ奪還作戦 第一の罠

「なぜ私を巻き込んだの?」


マルに返事をしようと、俺はペンを持って書こうとする。


「ここは喋っても誰もこないわよ。罠だけで人を釣れることがわかってるからね」


「捕まるよりはましな選択だった。そう思わない?」


俺は過去を振り返りながら答える。あのまま普通のルートを辿っても二人なら捕まっていたと思う。


「まあ、確かに……」


反論の余地がないマルはそう言って黙ることしかしなかった。


「俺たちに立ち止まってる暇はない!シェールの指示に従って進もう」


「まず第一に、奥に見えるあの赤いのがゴールよ。そこまでにたくさんの……」


そうなのか、簡単じゃないか。俺は最後まで聞くことなく、足を前に踏み出す。


『ゴンッ‼︎』


「はあ」


ここで今までに聞いたことのないほど大きなため息が、おでこを抑えている俺の耳に侵入してきた。


「君の猪突猛進な性格はどうにかならないの?そんな簡単にゴールできるわけないやん」


少し空気感が緩くなりシェールも逆に落ち着けている。すると、マルは俺がぶつかった壁を押し始めた。


「うわ、ガラス張りになってる。絶対さっきの音的に痛かったんちゃう?」


珍しくマルが心配してくれる、がその心配も束の間。


「いま、何か音がしなかったか?」


俺は重要なことに気づく。マルが押した部分が凹んでいる。てことは……


「罠が発動している!このままいけば君たちはぺったんこね」


つまり2Dになるってことかよ。いや、その前に死ぬか。


「君たちに罠が到達するまでの時間はおよそ二分。それまでに解決策を見出すのよ」


右か左か……きっとどちらかのみから罠はやってくる。


「俺は右を確認する!マルは左の構造を確認してくれ」


基本構造は完全にただの直方体だ。逃げ道なんて存在しないようにしか見えない。万事休すか?


「あと六十秒や、スピード上げてきてるで?」


二人が生き残るか、どちらかが生き残るか。どっちを選べばいい?ただこれを一人で突破するのは無理だ。俺はマルのいる左側に合流する。


?なんだこの違和感。右とは違うなにか。


「シェール!ここの左右の構造の違いを確認できるか!」


俺は一番客観視できるシェールに頼む。


「ちゃんとマップは持ってるのよ。えーとね、左の方が少し傾斜になってる!」


つまり、右かー!俺は強引にマルの腕を引っ張る。


「こっち‼︎」


俺はすぐに右の道へと入る。確かにこっちは平衡な気がする。


「あと十秒でくる!一応あれを構えて!」


あれってなんだ?あれって……俺はひたすら思考する。止めるな、止めるな。


あれか!その手があったか。俺は天井を確認する。やっぱりか、少し高い天井にしてくれている。なんて親切な設計なんだ。


「一回俺におぶられてみないか?」


俺はマルを無理にでもおぶる。そして、足に手をかける。前か!


「前や!飛ぶな!」


飛ぶな?なんでお前(シェール)は俺の飛翔のことを知っている?いや、そんなのはどうでもいい。一旦、難は逃れたってことでいいんだよな?


「まずい!君たちの左側が閉じた。こっちへくるぞ!」


俺たちはT字路にいた。そして左から罠はやってきた。左は上り坂になっている。つまり、あっちからくるなら下り坂。そして今は閉じられて一字路になってる。


「まっすぐくるってことかー!」


飛ぶしかない‼︎ちょっと待てよ、それなら後ろに道はあるような。いや、そんなこと考えるな!


飛翔(ひしょう)


飛翔とは――筋肉を瞬間的に下方向に凝縮してその反動を使って、上へと飛ぶ技である。また、垂直跳びの上位互換である。


今だ‼︎いっけぇー‼︎


あれ……不発した?詰んだ……俺の頭の中で走馬灯が流れ始める。記憶が再起していく。


高校生になってから仲良くなったジョナの記憶が最初にやってくる。だが、急に現実に引き戻された。


「あれ?俺……生き……てる……」


何が起こったんだ?俺は確かに丸い石に踏み潰されて2Dになって人生エンドだったんじゃ。


「なぜだかわからないけど君たちの前に、壁が降りてきたのよ」

 

は?一体どういうことだ?俺たちの選択は少なからず合っていた。もし右にいたらペシャンコで元の位置にいても閉じ込められてエンド。可能性があるなら右の道だった。


「ここは侵入者を処刑する場所ではなかったのか?なぜ俺たちを助けるようなことになった?」


「わからない……というかそのまま後ろにいけば曲がり道があったんやで?」


後ろ?俺はマルと一緒に後ろに歩き出してみた。ここから見れば、どう考えても行き止まりだよな?


「また壁に何かあるのか?」


マルが壁を触り始める。だが、特に何も起きない。


「マップには左に道が続いてるんやけど?もしかしてこれは偽物……?」


左?俺は試しに左を押し込んでみる。


「うわあ」


情けない声が出てしまい、俺は地面に倒れ込んだ。あれ、マルは?周りを見渡すとさっきと同じ景色。


「イノー?どこいったー?」


後ろから声が聞こえてくる。俺はそれに呼応する。


「ここやでー」


マルは俺の声を頼りにこちらに向かってくる。


「うわあ」


次はマルが情けない声を出して倒れる。それに巻き込まれた俺もまたまた横たわる。少し落ち着いて後ろの扉を押してみる。なるほど。


「これはなんていうんやろ、押したら一回転する扉!」


「なるほど。この図には普通の扉として書かれていたけど、これからは色々な扉を想定しないといけないやんな。りょーかい」


結局、飛翔が不発した理由は分からなかった。だが、俺たちはなぜか第一の罠を突破することができた。このレベルがまだあると思うとゾッとする。


俺たちはまたしても赤いゴールへと向かう。この迷路を辿りながら。



 



読んでいただきありがとうございます。


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毎週月、木、土曜日の投稿を目標に更新していきます。


次回もよろしくお願いします。

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