第九話 日本編 カーラ奪還作戦 マル合流
ここは、どこだ?俺は確か倒れて……
「起きたか、今すぐに動けるか?」
シェール!?の声が右耳から聞こえる。
「寝起きだからってボケすぎや。スピーカーつけてるやろ?」
ああ、そうだったな。でも俺は警備員から逃げて倒れて捕まったんじゃ?
「君は本当にすごいよ。時計を見てごらん」
時計?俺、時計なんてつけて……つけてないよね!そうだよね!
「あんたは時計もつけてないの?じゃあスマホは?」
スマホも今のが使えないからないぞ。一応ポケットを探ってみる。誤魔化す、これこそ最強の戦法だ。
「あ、ほんまや。めっちゃ時間経ってるー」
「棒読みすぎるし、今はもう映像復活してるで」
あれー?誤魔化し損やん。しかもめちゃめちゃ恥ずいとこ見られたし。
「そうならそうと言ってくれよ」
映像が復活したことで再度筆談が始まる。俺は壁にもたれかかり、空を見上げる。人工衛星!?
「もしかして俺の位置常にバレてる?」
「いや、そんなはずはないで。もしそうなら寝てる間に捕まってるはずやし」
俺の文面を見てから数秒で答えが返ってくる。こんなに時間がかかったのは初めてのことだった。
「ならよかった
もう少し休憩しようかな」
「休憩なんてしてる場合じゃないで。もうみんなは潜入が完了してるねんから」
俺は表情だけでなんで?という言葉を伝える。
「ここまでは私の予想通りやねんな。イノがここじゃなかったら、きっと今頃全滅していた」
なんだか誇らしい気分になる。でも、俺が一番難しいとこに置かれたってことやな。シェール許すまじ。
「とりあえず、そのまま前進してくれたら西門につく。そこでマルと合流してくれ」
よりによってマルか、まあいい。パッパといくか。
「イノ!そっちじゃなーい!」
え、なんて?聞こえなかったぞ。まあいいや。すすめー!
ん!?なんだこの異臭は!さっきのゴミの臭いか。てことは……逆方向いってるじゃねえか。
「そっちじゃないって言ったやん。自分の足を見てご覧なさい」
確かに俺は何かを踏んだような……
気づいた頃にはもう遅かった。靴にゴミがまとわりついている。
「そうだろうと思ったよ、君の靴は特殊構造だからゴミが吸い寄せられる」
でも俺が気絶する前も踏んだような気がする……
「そうか、理解できないか。瞬足を使っている間は磁力が働いて、他を寄せ付けないんだ」
なるほどそういうことか。とりあえず、西門へと向かおう。
「てか今の時刻は?」
俺はまたしてもペンを走らせる。
「まだここについてから十五分しか経ってないから、まあ余裕ではあるって感じやな。あ、そこ右」
あれって警備員じゃね?こっちも行けないのか。俺は右に曲がったものの踵を返すことにする。
「そいつらはAIだ。今回も視覚を操作しているから、声を出さなければ通れるはずや」
それならいけるか。俺は一歩ずつ慎重に門に向かって足を出す。門の前の警備員はまるで見回り鬼だ。どこに視野が広がっているのかわからない。
「そのまま行ったらいけるぞ」
シェールも小声にして音を出さないようにする。
「うわあ!」
俺は急に動き出した警備員に首を掴まれる。い、いきができない……
このままだと気絶させられてしまう。俺は力を振り絞って腕を解放しようとする。だが、現実は無慈悲だ。AIに力勝負で勝てるわけがなかった。
あれ?急に首を掴む力が緩んでいく。
「久しぶり、イノ!」
マル‼︎
よかった、マルで。でもじゃあ隣のAIって……
「大丈夫やで、気絶させてるから」
ふう……
「気絶させれるん?俺倒すの不可能って言われたで」
「そのくらいならいけるってシェールが言ったからさ。意外と簡単やったわ」
はーん、俺は少し冷静さを取り戻した。そこで俺は過去を振り返ってみる。マルいることってシェール知ってるやん。
「騙したなー‼︎シェール‼︎」
俺は大声を出して怒りを露わにする。大声を出してしまった?つまり、追っ手がくる?
「逃げるぞ。イノ」
俺の判断よりも早く、逃げる判断をマルがする。だが、遅かった。足が、遅かったー!
「はあ……」
走りながらでも聞こえるレベルの呆れた声が右耳から聞こえてくる。仕方がない、こうなったら……
『瞬足』
これを何度も使用すると、どうなるか俺は悟っていた。足が麻痺してちょっとの間動くことができなくなる。
「そこに入っちゃいけない‼︎」
シェールの掛け声で俺は止まる。だが、そんなにすぐ止まることなんてできなかった。すぐに後ろを振り返る。俺一人ならどうにかなったかもしれない。だけどマルを背負っていた俺は閉まる扉を通り抜けることはできなかった。
「申し訳ない」
マルが珍しく申し訳なさそうにしてる。
「いや、仕方がない。こうなったら君たち二人には最高難易度の脱出に挑んでもらう。カーラは残りで肩をつける」
「シェール、残念ながらそれはできない。俺はカーラと付き合うんだ。だから、シーナに先を越されるわけにはいかない」
告白が成功すればすぐに高校の友達に自慢する。なんなら中学の友達にも自慢するだろう。でも、忘れてた。今は連絡ができないんだ。
「それなら仕方がない。そっちの方向で私もプランを立ててあげる。その代わり長く難しい試練になるわよ」
それはわかってる。けど、俺はカーラを取り戻したい。そして、彼女にしたい!
「なぜ君たちが走っている間に攻撃が飛んでこなかったと思う?私がハッキングしているからよ。でも、君たちがいる場所はセキュリティが固すぎて突破できなかった。だから、罠だらけってことよ」
またしても標準語に戻り出す。これは相当まずいってことが簡単にわかる。シェールが関西弁になる時は自信がある時だ。だから、関西弁に近づかない限り俺たちに勝機はない。
「ただ監視カメラだけは抑えてある。そこに勝ちが眠っているのよ」
俺たちまだ知らない。この刑務所に隠された、とてつもない仕組みを。
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