051 そして実践
つまり、オークたちの渾身の攻撃を受けようが、ストーンゴーレムが削れるだけで、僕自身は痛くも痒くもない。
それに、ストーンゴーレムはオークたちの一撃を耐えられるだけの耐久力を持っている。
そこから導き出される答えは、僕に防御という概念は必要ないということ。
ストーンゴーレムが壊されたとしても、次のストーンゴーレムがいる。
この物量こそが僕の力だ。
だからこそ、僕は今度は量ではなく質を上げようと戦闘技術を学ぼうと思ったのだけど、そもそもゴーレムの戦闘技術に防御は必要ないということに気が付いた。
だって、壊されても復活できるんだもん。
それなら、防御して自分の行動を絞るよりも、肉を切らせて骨を切るを目指した方がいい。
だから、僕は防御を捨てて攻撃を当てることに全神経を集中させた。
左右のハルバードを高く高く振り上げ、その時を待つ。
僕の動きが変わったことに気が付いたのだろう。オークたちが一瞬だけ動きを止めた。
しかし、オークたちにはストーンゴーレムを倒すしか手段が残されていない。
僕がすべてのストーンゴーレムに進軍を命じたら、オークたちの負けは確定する。
たとえそれが罠だとしても、オークたちには飛び込むしか道がないのだ。
そして、ハルバードを持ったオークが突っ込んできた。
でも、冷静になって見ると、その一撃は軽い。
今までの僕なら、どうにかしてこのハルバードの一撃を防ごうとしただろう。
そして、無駄に腕を動かして反撃のチャンスを自ら潰していた。
それだけではなく、この後に待っているオークたちの連撃という本命の攻撃で倒されていたのだ。
この最初のオークは、いつでも回避に移れるように敢えて軽い攻撃をしているのだ。
ならば、このオークを狙っても回避されるだろう。
実際、今までに何度も回避されてきたからね。
狙うならば――――二番手のオークだ。
一番手のオークを完全に無視すると、一気に視界が開けた気分がした。
それだけ一番手のオークによって視野を狭められていたということだろう。
そして、今までの僕はそのことにすら気が付かなかった。
そりゃ負けるはずだよね。百体のストーンゴーレムを使っても一体のオークも倒せないという恥ずかしい記録を打ち立てるわけだ。
広くなった視界で確認すると、二番手のオークはすぐに見つかった。
それは残り六体のオークの中で、一番目立っていないオークだ。
オークたちは、まるでそのオークを体を張って隠しているような違和感に気が付いたのだ。
気が付いてその隠れたオークに注視すると、力を溜めているのがわかった。
オークの持っている武器は大剣。鉄の塊であり、鉄と石のどちらの方が硬いかと言われれば、鉄ではないだろうか?
でも、硬さだけ比べれば、そんなに鉄と石にそんなに大差はない気がする。
そんな鉄の大剣でストーンゴーレムの体を破壊してきたのだ。ストーンゴーレムを倒すのには、かなりの力が必要だともう嫌になるくらいわかっているだろう。
だから、精神を統一し、一撃にすべてを賭けている。そのための溜めだ。
それがわかれば、二番手がこのオークであることは明白だった。
だったら、このオークから潰せばいい。
一番手のオークの攻撃がストーンゴーレムの胴体を削る。
でも、表面を削るだけで、致命傷には程遠い。あくまで、僕の意識を攪乱するための一撃だ。
でも、僕はその誘いに乗ることにした。
振り上げたうちの右のハルバードを高速で一番手のオークに振り下ろす。
しかし、一番手のオークはしてやったりと言わんばかりに軽く避けてみせた。
そして、本命の一撃がくる。
バッとオークたちが広がり、今まで隠されていた二番手のオークが攻撃するスペースを確保する。
二番手のオークは、渾身の突きを放った――――直後に縦に真っ二つになる。
二番手オークの渾身の攻撃はストーンゴーレムに届くことなく、二番手オークの体は、まるで最初から切れていたかのように左右に分かれて、べちゃっと湿った音を響かせて床に落ちた。
「やっあー!」
やっとオークを一体倒せたぞ!
長かったなぁ。かなり時間がかかってしまった。まるで高難易度のゲームをクリアした時のような達成感を感じる。
これも、気付きを得られたからだろう。
気付くまでに百体以上のストーンゴーレムを無駄にしちゃったわけだけど……。
我ながら鈍感だとは思うけど、最終的に気付けたのだからOKとしておこう。
さあ、次だ! っと思ったら、オークたちは呆然とした様子で倒された二番手オークの体を見下ろしていた。
僕にオークの顔色なんてわからないけど、まるで、信じたくないものを見てしまったかのような、かなり大きな衝撃を受けている様子だった。
まぁ、今まで死者なく百以上のストーンゴーレムを倒してきたから、今さらストーンゴーレムなんかに負けるわけがないとか思っていたのかな?
でも、今まで通用していた連携が、いきなり通用しなくなったのだからビックリしても仕方ないかな?
次はどんな手を見せてくれるのだろう。
わくわくするね?
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