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049 しんせつせっけい

 俺はゲルドバーン。ここ対ニンゲンの最前線にある城塞都市アッガイアの主だ。


「はぁ……、はぁ……、はぁ……」


 俺は今まで生きてきた中で、最大級のピンチを迎えていた。


 城塞都市アッガイアの砦の中段にある広間。そこに続々と現れる正体不明の石のバケモノ。


 そう。俺たちは、訳のわからないうちに呪いにでもかかったのか、奇怪な動く石のバケモノによって追い詰められていた。


 かつては三万の兵力を誇ったこのアッガイアが、今では俺含めて八名しか残っていない。


 アッガイアは陥落したと言ってもいい状況だ。


 一応、襲撃されていることを他の領地にも伝える伝令を走らせたが、援軍は間に合わないだろうな。


 まさか、このアッガイアが一日も保たずに陥落するとは思わなかった。


 部下の報告では、石のバケモノは突然このアッガイアの外壁の中に現れ、頼みの内壁もすり抜けてきたらしい。


 もう訳がわからん。


 この石のバケモノは、ゴーストか何かなのか?


 しかし実体がある。


 俺は腕っぷしだけで城塞都市の主にまで登ってきた根っからの武闘派だ。その分、知識の方は弱い。


 もしかしたら、そんな俺を補うために付けられた副官ならば何かわかったかもしれないが、そんな副官はもういない。


「はぁー……」


 太い息を吐き、呼吸を落ち着ける。


 どうせ考えてもわからんのだ。そんなことに力を割くくらいならば、目の前の敵を倒すために全力を尽くすべき。


 広間を埋め尽くさんばかりにいる石のバケモノ。こいつらを全員破壊しなければ。


「もう三十は倒しただろう? いったいどれだけいるんだ……」


 だが、口から愚痴が出るのは止められなかった。


 その時だった。


 石のバケモノの中から、一体だけ前に出てきた。


 その瞬間、何かが違うことに気が付く。


「気を付けろ! こいつ、まるで生き物みたいだ!」


 先ほどの石のバケモノは、まるでそう造られた機械のように感情や個性のようなものは感じなかったが、今回の石のバケモノはどうやら違うらしい。


 ほんの些細な違いだが、何か意志のようなものを感じる。


 それを証明するように、目の前の石のバケモノは、今まで見せたことがない武器を構えるという行為を見せた。


 その構えから、どうやらこの石のバケモノはそれほど武術に精通しているわけではないというのが窺えた。


 一応、武術というものがあるというのは理解しているのだろう。


 だが、まるで初心者が熟練者の型を見よう見まねで構えているようにしか見えない。


 どういうことだ?


 そんなことを思っていると、石のバケモノが動き出す。


 その動きは、まぁ、やりたいことはわかる。


 だが、その動きは初心者そのものだ。


 これなら、先ほどまでのまるで感情の見えない、自壊も恐れない虫のようなバケモノを相手にしていた方がやりづらかった。


 部下たちも同じ気持ちなのだろう。先ほどまでよりも楽に石のバケモノを倒すことができた。


 ガラガラと崩れる石のバケモノ。


 すると、それを待っていたかのように、石のバケモノが一体前に出てきた。


 その歩みを見ればわかる。今度のも感情が読める。


 しかも、石のバケモノ全軍で圧し潰せばいいものを、一体ずつの逐次投入。


 まるで、バカにされているかのような気分だ。常ならば、怒り出していただろう。


 だが、このバケモノが調子に乗っているうちにすべての石のバケモノを片付ければ、もしかしたら生還できるかもしれない。宝も守ることができるだろう。


 ならば、己の感情はさておいて、今はできることを精いっぱいやるしかない!


「わかっているな? 少しでも多くのバケモノを倒す。それだけを考えよ」

「へい!」

「承知です!」

「了解でさあ!」


 最後の砦として集めた精鋭たちは、まだ戦える状態だ。


 また一体だけ投入された石のバケモノを協力して倒す。


「ちいッ!」


 舌打ちが聞こえた方向を見れば、部下の大剣にヒビが入っていた。


「ハルバードを使え!」

「うす! ハルバードを使うのは久々だが、いけそうです!」


 敵のバケモノは兵士から奪ったのか、ハルバードを両手に持っている。


 つまり、敵を倒せばハルバードが手に入る。


 石を殴っているのだ。今使っている愛用の武器はおそらく最後まで使えないだろう。


 だが、オークならばハルバードは最初に使う武器だ。馴染みがある。


 また一体だけ投入された石のバケモノを破壊する。


 硬いものを叩きすぎて、もう反動で手が痺れるのを超えて痛み始めていた。マメは潰れ、皮膚が破れ、ぬるりと血で武器を握る指が滑りそうになる。


 仲間たちも顔を顰めている。


 だが、気が付けば石のバケモノは残り十体以下になっていた。


 これ以上増える気配はない。


 それでも、敵は石のバケモノの逐次投入をやめない。


 か細い。非常にか細いが、希望の糸が見え始めていた。


 残り三体。


 最後の力を振り絞り、なんとか味方と力を合わせて石のバケモノを破壊する。


 残り二体。


 成長しているのか、だんだん石のバケモノの動きがよくなってきている。


 だが、残り一体。


 これを倒せば、終わりだ!


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 俺も曲がったハルバードで石のバケモノの体を砕き、ついに、最後の石のバケモノを倒した!


「ぐ……ッ」


 さすがに、疲れた。歓声を上げる余裕すらない。


 だが、俺たちは――――。


「え……?」


 その声は誰のものだったのか。もしかしたら、俺のものだったかもしれない。


 今まで散々砕いてきた石のバケモノ。その砕いた石が独りでに動き始めた。


 そしてできあがったのが、もう見たくもない石のバケモノだった。


 しかも――――。


「マジかよ……」

「ハハッ……」

「そいつぁねえよ……」


 整然と並ぶ百を超える石のバケモノ。


 そして、また勝負だと言わんばかりに石のバケモノが一体だけ前に出てきた。


 何か大切なものが折れるような音が聞こえた気がした。


 だが、ここで負けるわけにはいかんのだ! 我らが宝を守らなければ!

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