044 連携・戦術という概念
だったら、僕は強くなりたい。
強くなって、自分だけじゃなくて、みんなを守れるような、そんな強さが欲しい。
百を超えるゴーレムの視界を通して、中継されている蹂躙されているオークとゴブリンたちを見て、僕は強さの重要性を再確認した気分だった。
弱ければ、なにもかも奪われる。
しばらくすると、ゴーレムたちの暴虐を止めようと、あの日見たオークの軍隊と同じ格好をしたハルバードを持ったオークの集団が現れた。
やっぱりオークの軍隊は訓練されているのか、なんだか動きが他のオークたちとは違う。テキパキしている。
そして、一人ではストーンゴーレムに敵わないとわかっているのか、集団で立ち向かってきた。
その戦闘方法は、ハルバードという間合いの長い武器の長所を最大限有効に使ったものだった。ストーンゴーレムをぐるりと囲み、ゴーレムから離れたところからチクチク攻撃してくる。
そんな攻撃では、ストーンゴーレムは倒せないよ?
ストーンゴーレムはオークたちの攻撃を無視し、自分を囲うオークたちを倒そうとする。
そして、ゴーレムが一体のオークに狙いを定めてパンチを繰り出すと、そのオークはまるで予想していたかのようにパンチを間合いの外に逃げるように避けた。
オークには掠りもせず、ストーンゴーレムのパンチは何もない宙を穿つ。
その瞬間、ゴーレムの背後に陣取っていたオークたちが一気に間合いを詰めてきて、ハルバードで全力の攻撃を仕掛けてきた。
少しだけ欠けて飛び散るストーンゴーレムの背中。
ダメージとしては大したことはない。すぐに修復して、なかったことにできるほどの極小さなダメージだ。ダメージと呼ぶのも烏滸がましいレベルである。
「おー」
でも、僕は別のことに感心していた。
それは、オークたちの連携というべき戦術についてだ。
一人では敵わないから、みんなで戦う。それはわかる。
でも、オークたち各々が自分の役割を全うして、見事自分たちには損害なく、ストーンゴーレムにダメージを与えることに成功していた。
もし、僕のゴーレムに自己修復機能がなければ、オークたちは時間がかかるだろうけど、ストーンゴーレムを自分たちの損害なく倒せたかもしれない。
僕はそのことに感動すら覚えていた。
思えば、僕は今までゴーレムのスペックの高さを活かしたゴリ押しでの戦闘しかしたことがなかったのだと気付かされた。
このオークたちのように戦術を組み立て、実際に連携し、強い敵を倒すビジョンというものがなかった気がする。
僕はどこか慢心していたのかもしれない。
僕は、もしストーンゴーレムたちが倒されるようなことがあれば、さらに多くのストーンゴーレムを投入して数で蹂躙したり、アイアンゴーレムを創ったり、とにかくゴーレムの強さで勝負しようと考えていた。
このオークたちの連携は、僕に戦闘について根本から考えを改めさせるような、強い衝撃をもたらしたのだ。
たぶんだけど、この兵隊オークも、さっきまで蹂躙していたオークたちとそんなにスペックが変わることはないと思う。
それでも、部隊の運用次第でここまで変わる。
これは革命かもしれない。
僕はゴーレム軍団の創造者であると同時に指揮官でもある。
同じスペックのゴーレムでも、運用次第ではここまで結果が変わる。
なんだかオークたちに集団戦闘での基礎を教わった気分がした。
ありがとう。でも、殺すね?
オークたちの戦術は、対戦相手がちゃんとした生物なら機能しただろう。
でもね、オークくん。キミたちが相手にしているのは、痛みも感じないし、怯みもしないし、関節による可動域の制限というものとは無縁のゴーレムなんだ。
僕が指示を出すと、パンチを繰り出したゴーレムの上半身が、パンチを繰り出した勢いのまま回転を始めた。
両腕を広げたダブルラリアットである。
しかも、回転しているのはストーンゴーレムの上半身部分だけ。下半身や顔は動かず、ダブルラリアットは加速する。
まず犠牲になったのは、ストーンゴーレムの背中を攻撃したオークたちだ。きっと彼らは何が起こったのかもわからず、大質量のストーンゴーレムの高速で回る腕に薙ぎ倒されたことだろう。
ストーンゴーレムは、オークを倒したことで宙に舞った鉄のハルバードを両手にキャッチすることで、攻撃の間合いが倍になる。
それによって、ストーンゴーレムを囲んでいたオークたちは、ストーンゴーレムの攻撃を避けようとするが、突如倍になった攻撃の間合いの前には無意味だった。
加速したダブルラリアット。その先端であるハルバードの最高速度は時速どのくらいなんだろう?
少なくとも、オークを両断するのには困らないくらいの速度は出ているらしい。
スパッと斬れたオークたちの首や上半身が、まるで遠投したように宙に飛んでいく。
うん。ちょっと攻撃力過剰かも?
でも、攻撃力が足りないよりいいよね?
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