030 初芋掘り
何度目かの宴も終わって数日。僕の姿は畑にあった。
「クラーク様、こっちのおっきー!」
「クラーク様、こっちの方が大きいわよ!」
「あんまり大きいと、持てないんじゃないか?」
「それはそうかも?」
「んゆ?」
僕の他にも多くの子どもたちの姿がある。みんなその手には小さな木のスコップを持っていた。
今日は一年で最初のお芋の収穫の日なのだ。
「ほれほれ、早く収穫せんと終わらんぞ?」
「芋を踏まんようにな?」
「畝を掘ると、芋が出てくるぞー」
畑の周りには、子どもたちの保護者の姿があり、子どもたちを見守っている。
僕は小さすぎて去年は参加できなかったけど、今年からこの「初芋掘り」というそのまんまな名前の行事に参加することになった。
子どもにやらせるのは、農業の楽しさを知ってもらうためなのかな?
そういえば、日本の小学校でもバケツで稲を育てたことがある。あれに近いのかもしれない。
ぶっちゃけ、ネコゴーレムを使えばすぐに収穫が終わるんだけど、さすがにそんな無粋なことはしないよ。ネコゴーレムも畑にいるけど、あくまで子どもたちのフォローのために動いてもらっている。
「ん!」
僕は畝の傍でしゃがむと、畝を横に掘るように木のスコップで土を避けていく。
すると、そこにはジャガイモとサツマイモを足して二で割ったような芋の姿が現れた。これが目的のお芋である。みんな芋としか呼ばないので、正式名称はわからないけど、この村では主食としてほぼ毎日食べられているお芋だ。
「採れたー!」
「私も採れたー!」
「おらも!」
子どもたちが、自分の掘ったお芋を誇らしげに掲げていた。
「んー!」
僕も鈴なりに成ったお芋を両手でも持ち上げると、畑の外で見ていたお父さんとお母さん、おばあちゃんに見せる。
「いいぞお、クラーク! その調子だ!」
「大きいですね。今年は豊作かもしれません」
「爺さんにも見せたかったのう……」
お父さんもお母さんも嬉しそうだね。
僕は傍にいたネコゴーレムにお芋を渡すと、次々にお芋を収穫していく。
そんな僕の姿を見てなのか、他の子どもたちもせっせとお芋の収穫に精を出していた。
そして、ネコゴーレムが持ち切れないほど大量のお芋を収穫すると、僕はお芋を両手に持ってお父さんとお母さん、おばあちゃんの所に向かう。
「すごいぞ、クラーク! こんなに収穫するとは見事だ!」
「あら? お顔に土が付いていますよ」
「がんばった証じゃて」
そう言って、おばあちゃんがハンカチで僕のほっぺに付いた土を拭ってくれた。
「ありり!」
「クラークはもうお礼の言葉が言えるんだねえ。驚いたよ」
「クラークはよくしゃべりますから、話せるようになるのも早いかもしれませんね」
「そうだな!」
「にひひ!」
お父さんたちに褒められて、僕はご機嫌だ。
周りを見ると、似たような光景がいくつも広がっている。その中には元からランドール村に住んでいた住民もいるし、新しく越してきた住民もいる。みんな仲良さそうでよかったよ。
こうした行事や作業を一緒にすることによって、もっと仲良くなれるといいな。
こうして子どもたちによって収穫されたお芋は、ネコゴーレムが掘った芋穴という場所に保存するらしい。僕にはよくわからない原理だけど、こうした方が長持ちするようだ。
「クラーク様、バイバイ!」
「じゃあね!」
「またねー!」
「ばい!」
子どもたちと別れて、僕はお父さんたちとお屋敷に帰る。
すると、ケリーが迎え出てくれたのだけど、僕を屋敷に入れてくれなかった。
どうして?
「クラーク様、お服に付いた泥を落としませんと、お屋敷が泥だらけになってしまいますわ。ここはお任せを」
そう言って、ケリーが僕の服に付いた泥を叩き落としてくれる。
僕も自分の手が届く範囲の泥を叩き落とした。
「もう大丈夫でしょう。ですが、まだ砂が付いていますので、お早めに着替えた方がいいでしょう」
「わたくしがやろうかね」
「いいえ、お義母様。わたくしにやらせてください」
「はっはっはっ! クラークはモテモテだな!」
「にへへ」
間違いなく確信できる。僕は家族に愛されているのだと。
その愛が嬉しくてたまらない。だから、僕は少しでもみんなに恩返しがしたいのだ。みんなに幸せになってほしいのだ。
そのためには、もっとがんばってモンスターを倒して、お金を稼がないとね。
僕はべつに幸せはお金で買えるとは思っていない。
でも、あるに越したことはないと思うんだよ。今の素朴な辺境での暮らしも嫌いじゃないけど、みんなにはもっと贅沢をしてもらってもいいんじゃないかなと思っている。
まぁ、贅沢と言ってもおいしいものを食べたり、いい服を着たりくらいしか思いつかないけどさ。
それでも、借金だけはしないような生活がしたいよね。
あと、僕はもっと強くなりたい。この世界にはモンスターがいる。きっと、今の僕じゃ倒せないモンスターもいることだろう。
そして、今まで僕がオークの村を蹂躙してきたように、より強い者が弱者を蹂躙するのはよくあることだ。
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