妻の常識 『誓いの儀式』
ミラ・アリーの最恐タッグによる、リーンへの『教育』が行われた結果。
リーンの1番は、『今後1番長く想い続けられる人』に決まった。いいのかな? 俺は何も言ってないんですけど? そんな重たい覚悟を、そんな簡単に決めちゃって良いの?
エルフと人間による寿命の違い。それによって生じる様々な事柄。長生きするという事は、決して嬉しい事ばかりではない。エルフが普通に生きていけば、人間よりも、知り合い、大切な人と、先立たれる経験を何度も味わう事になるのだ。
リーンがエルフ、俺が人間である以上、逃れられないこの宿命。エルフが人間と結ばれるという事はそういう事だ。残される者としての覚悟があるのか。
実際の所、俺の事をどう思っているのか。どこに1番惹かれたのか。ミラとの馴れ初め、アリーとの『運命の人』話。『教育』ってなんなのさ?
深刻な話を始めたかと思ったら、自分達の在り方、これまでの経緯、そこで生まれてきた常識なんかを話して、しっかり説明してあげるのだとか。
3人での、うふうふ、きやっきゃっの『教育』と言う名の『おのろけトーク』は続き、めでたく? 無事に? ミラ・アリー・リーンの3人は意気投合。ミラ・アリーの2人からの了承は得られる事となりました。何の?
リーンは、エルフとして生きている以上、そんな『覚悟』なんて当たり前。幼い頃から、そういう教育は受けてきているし、それを分かった上で、人間である俺と結ばれたいと思っているのだとか。
後は、俺、本人のからの了承があれば、こちらサイドとしては、めでたく無事に『3番目』として迎え入れられる運びとなるのだとか。え? 何それ。俺の気持ちが1番最後って、おかしくない?
そりゃあ、リーンは物知りだし、性格もスッキリサッパリしてて、俺とも合うと思うよ? エルフだし、可愛いし、ツンデレ属性持ちは貴重だし? 間違っても、嫌じゃない。そんな事言う訳がない。
でも、俺にはミラとアリーが居るんだよ? 2人も居れば、もう別にいいんだよ? こんなに可愛くて、俺の事を思ってくれてる人が2人も居るんだよ。これ以上の女性は必要ないんだよ?
「まったく、何を言っておるのじゃ。じゃから、まずはわしら『妻』の了承が必要なのじゃ。『妻』であるわしら全員の了承が無ければ、話にならんでの。
まずはわしらが認めるか。その後で、旦那様が認めるかどうかの話なのじゃ。この順番は大事なのじゃぞ。よく覚えておくのじゃ。
それに、現に旦那様は、リーンの気持ちにも気付いておらんかったようじゃしの。下手したら、そこのモークよりも鈍感かもしれんのじゃ。じゃからこそ、わしらが先に了承せんといかんのじゃ」
「はい。そうですよ。何度も言ってますが、順番は大切です。今回は、私達『妻』としての役目の順番です。『妻全員』が認めてこその『次の妻』です」
うっ。出た。ミラの必殺、『順番論』。しかも、もう既にアリーナまで使いこなしてるし。
それを言われると、何だか確かにそんなような感じもしてしまう不思議理論。全く別の論点にすり替わっていても、そうとは思わせない畳み掛けぶり。うん。見事だね。これまた1本取られたね? もう1本いっとく?
でも、否定も出来ないその言葉。おっしゃる通り、全く気付いておりませんでしたが、何か?
こっちでそんなやり取りをしてる間も、モークとシーンは、ずっと2人で良い感じ? 以前はどうだったとか、私の方が先に気になり出したとか、こっちでも『順番論』が流行ってそうですね。やれやれだ。
勿論、断る理由はないけど、俺は、会って間もない女性に対しては、すぐにそんな気持ちなれないデリケートな男なのです。ヘタレ、チキンと人は言う。
そこで、なぜかミラ・アリーによる『先行儀式』が行われることになった。
『国境の町 オデルローザ』で買った、『リング付き魔石なしネックレス』。それが、ミラとアリーの手によって、恭しくリーンに渡された。
は? 何やってんの?
何それ。そう言う意味のネックレスなの? え? それって、確か全部で『7つ』買ったよね? 俺のを除いて『6つ』だね。
ミラ、アリー、リーンで3つ。残りの『3つ』はどうなるの? あっ。丁度3人分の予備って事になるんだね。そうだよね?
シルバーのチェーンに、同じくシルバーの丸いリングが付いているだけのネックレス。
ミラが同じ物を余分に購入するから、変だと思って聞いてみたら、『無くしたときのための予備』だって言ってたのにね。
あの時は、俺のが非常識かもって、ちょっとだけ思ってたけど、やっぱりおかしいのは俺の方じゃなかったね。はあ。
魔石は敢えて付けずに、自分達でモンスターを倒して手に入れるって、張り切ってたんだよね。ミラが。はあ。
最低でも、『青色の魔石』を4つはゲットしないといけないの? もしかしたら、それより上の『黒い魔石』になるのかな? あはははは。それって、やっぱりダンジョンアタックするって事だよね。
はあ。考えないでおこうと思って、知らないふりして過ごしてきたけどさ。あれれ~~? やっぱりそういう流れになるんだよね。フラグって言うんだよね。こういうの。
リーンも、物凄く良い笑顔で喜んでるし。ツンデレ属性忘れてるし。そんなに嬉しく思ってもらえるなんて、光栄な事だよね。
オイラ、またしても『モテ期』がやって来たみたいだよ。これは『2度目のモテ期認定』って事で良いんだよね。異議があるなら、申し立てるしかないんだよ? そんな場所はないけどさ。
いくらプロでも、この状況で自分を慰める術は知らないな? 嬉しすぎるから? なかなか理解が追い付かないから?
これも、『即行の町 アシャズ』ならではの光景か?
* *
そして、なぜかまた、『誓いの儀式』が始まるよ?
みんなぁ、集まれー! わー!
勿論、モークとシーンのだよ? この短時間で、そこまで話が盛り上がってたか。恐るべしエルフ。恐るべしシーン。やる時はやる女だね。多少は強引にでも話を進めないと、このモーク相手に進展は望めないからという理由らしいよ? やっぱり『即行の町』だった。皆そうなるんだね?
うん。そうみたい。それでいきなり『誓いの儀式』って? 結婚式は? 披露宴は? やっぱり早過ぎない? 『違いの儀式』とかと勘違いしてないよね?
え? そんな事はない? そもそも、そんな儀式はない? 知ってるよ? ノリで言ってみただけだから。あはは。え? 俺もやってる事は変わらないって?
は? 今から、『合同・誓いの儀式』になるの?
あれれ~~? なんでかな?
「いいじゃない。皆がしてるその指輪。デザインが一緒で、それぞれの人柄に合わせた色違いなんて、凄くお洒落だわ。私用にもないのかしら?
あなたが選んでくれた指輪なら、着けてあげてもいいわよ? 感謝しなさい?」
ツンデレ属性の復活です。こんなリーンも可愛いね?
まあ、確かに使ってない『指輪』もあるけどさ。また1つ増えちやったしね。リーンに似合うのは、やっぱり『青の指輪』かな?
うん。そうだね。実際に着けてみないと分からないからね。サイズは自動で調整されるから、心配いらないよ。知ってるよね、そんな事。こっちの世界じゃ常識だ。
えっ。俺が着けろって? まあ別にいいけどさ。出したついでだし。
うん。よく似合ってるね。氷結のリーン。氷魔法の使い手だからね。『青』の指輪がよく似合う。良いんじゃない? ミラもアリーも、そう思うよね?
※指輪は、手に入れた順番。
・認証の指輪 緑 0/20 元『6』アリー
・認証の指輪 赤 0/30 元『8』ミラ
・認証の指輪 緑 0/20 元『4』
・認証の指輪 青 0/40 元『10』リーン
・認証の指輪 黒 0/50 元『2』
・認証の指輪 金 0/60 現『俺』俺
なんて事やってたのがいけなかったらしいよ? 指輪を直接はめちゃったから。もう俺がオッケーしたのも同じ事。元々、リーンはそのつもりだったから、双方合意の上での『誓いの儀式』です。なんの問題もないらしい? 俺とリーンも、晴れて家族の仲間入り?
おう。マジか。軽い乗りで、『タビトが私に着けなさいよね?』なんて言われたから、普通に着けてあげただけなんだけど? そんな言い方で面と向かって言われたら、意味なんて考えずに、反射的に着けてあげちゃうよね? 男なら? 漢? だから深い意味なんてなかったよ?
あ。指輪を着けたのは、確かに左手の薬指だった。
ちーん!
* *
ご祝儀として、お店の飲食代金が8万(お土産代含む)。意味が分からんけど、俺がお支払する事に。
更に、『誓いの儀式』依頼料2組分で2万。合計10万エーン。勿論『フラナガン・マネー』で払ったよ?
『10万フラナガン・マネー』残5枚。
『1万フラナガン・マネー』残997-10=987枚。
ミラとアリーに渡しておいた、ほとんど使ってなかったと言う1000万エーン分の『フラナガン・マネー』。確認してみたら、3枚しか使ってなかったよ? 3万エーン? まあ、2人にしてはよく使った方だと褒めるべき?
それとも、節約してくれる賢い妻として褒めるべき? うーん。悩ましい問題だ。
お食事会と言う名の、告白大会。さらに飛ばして『誓いの儀式』。更に、その場の流れに巻き込まれての『合同・誓いの儀式』へと発展した会合は、無事? 終了した。
めでたしめでたし。
よしよし、よしよし。サラサラ もふもふ
これは、愛でたし愛でたし?
「ちょっと! なに2人だけに良い事してるのよ! 私も仲間に入れなさいよ! もう、私にもしてくれて良いんでしょう? 私の頭も撫でさせてあげるんだから、感謝しなさいよ?」
はいぃ?
リーンは、言葉にするなら、スベスベのツヤツヤ。氷属性だけあって、ヒンヤリすっきり? 髪も纏まってて、気持ちの良い撫で心地でしたが? 何か?
* *
いや~。それにしても、モークとシーンは幸せそうだったね。
急遽行われる事になった『誓いの儀式』だったけど、お店側も慣れたもの。と言うか、流石『即行の町』? ちゃちゃっとお店の準備も整えて、俺達がやってもらったような式が行われた。
モークが指輪の準備なんかしてる訳もなかったけど、特に、必ずしも必要だという物でもなく、2人の関係を広く周知させ、当事者にも覚悟を持ってもらうための儀式なんだとか。
て言うか、シーンが、その場の勢いで既成事実を作りたかったというだけで、キスしたかったと言うのが本音の話だったらしい。女性って怖いね。気を付けようね。もう手遅れだけど?
* *
エルフ3人組みとは、お店で別れた。勿論リーンもね。『誓いの儀式』をしたからと言って、すぐに一緒に暮らす訳でもないからね。俺の気持ちの整理もつかないし?
デリケートなオイラは、この状況を受け入れるには、もうしばらく時間が掛かりそうなのであります。ヘタってる?
リーンには、この町に実家もあり、これまでの報告をする必要もある。いくら、即断即決即行動の町とは言え、報告はしないといけないからね。家族なんだし。
で、明日、リーンの家族と会う事になった。ご挨拶ってやつ? 順番違うよね? 事後報告のご挨拶? 俺ならぶっ飛ばす自信があるね。
そう言えば、ミラは気ままな一人暮らしで、家族は居ないって言ってたし、アリーの家族とはずっと一緒に過ごしてて、公認の仲って事になってたけど、リーンの家族は初めてだ。改めて、結婚相手の家族にご挨拶するって考えたら、緊張してきたぞ?
『お前に、私の可愛い娘はやれん! グーパンチ! どりゃー!』って展開が待ってるのかな? いやーん。こわーい。マジで?
リーンは、気を遣うような性格じゃないって言ってたし、もう年齢的にも大人なんだから、反対される事もないから大丈夫とも言ってたし。大丈夫なんだよね?
てゆーか、もうすっかりその気じゃね? なぜこんなにも早く、他者を受け入れられるのか? 俺の常識は非常識? 結婚って、こんなにも軽いモノ?
ツンデレリーンの氷結さん? あれ? 順番がおかしいか。言葉も足りなかったのか。『ツンデレ属性持ちの物知り氷結のエルリーンレデス』。フルネームだとこうなるのか?
うん。長いな。ミラよりはマシだけど? 敢えて言わないけどさ。忘れてる訳じゃないんだからね? 勘違いしないでよね?
まあ、出たとこ勝負で流れに身を任せよう。俺には強い味方もいる。ミラ・アリーの最強タッグがね? ふっふっふっ。最恐だよ?
* *
ほろ酔い気分で良い気分? で宿に戻ると、有能な秘書さんからの手紙が届けられていた。
登録した〈酔い覚まし〉を、折角自分に発動させて検証しようとしてたのに、その必要もなくなった。どこまでの効果があるのか、段階的に試したかったのに。残念だ。また飲んで検証しないとな?
手紙の内容は簡潔に。それでいて必要事項は漏らさずに?
ナンバー『2』死去。
死因は、隷属の首輪による『即死判定』。
『7』死亡の事実を知った事からの、絶望の死か。
その他、新情報なし。
恐らく、情報を引き出している最中に、なんらかの形で『7』が既に死んでいると知ってしまったのだろう。それなら、もう『7』とは会えないのなら、犯罪奴隷として生きていても辛いだけだから、死を選んだと言う事なのだろうか。あくまでも推測に過ぎないが。
女の犯罪奴隷の扱いがどんなものになるのか。想像できるだけに、辛いものがある。でも、『2』ってば、そう言うプレーが好きなんじゃなかったのか?
そこには、俺には理解できない壁があるのかもしれないね。せっかく防御壁もバージョンアップして、強化防御壁になったのにね? 厚くなったから、余計に理解できないな。
でも、『2』までもが自ら死を選んだか。奴隷狩りなんかしておいて、自分がその奴隷になったら死んで逃げてしまうなんて。何の償いもせずに、これまで強制的に奴隷にされてしまった人達の苦しみさえも味わわないなんて。そんな狡い事が許され、報われてしまうのだろうか。
自らの意思での死の選択をさせる事なく、生きて償いをさせ続ける方法はないのだろうか。死の世界。そんな世界が在るのなら、そこでは償いを受ける事になって欲しいと思ってしまう。そんな俺は、酷い人間なんだろうか。この考えは非常識?
ミラとアリーが、俺と同じ考えで良かった。2人が同じ考えならば、それは、俺達にとっては正しい価値観になる。うん。良かった。理不尽な犯罪を許せないという価値観が同じで。それが反対の価値観だったならば、多分一緒にはいられない。心の底から笑い合って、一緒に過ごせそうにもないからね。
折角のおめでたい気分が台無しだ。やれやれ。
そう言えば忘れてた。街中で狩った黒い鳥の事。
前に、ちゅんちゅん鳥を狙ってたカラスみたいな黒い鳥。1羽〈氷矢弾〉で撃ち落としたんだった。あは。
これって、『3』の能力によって操られてた鳥なのか? その可能性があったんだ。何であの時思い出せなかったんだろう。その能力まで聞いてたのに。普通に考えれば怪しいよね。いや、怪しくはないのか?
鳥が普通に木の枝に止まってるのを見て、怪しいなんて思って警戒したりなんてしないよね。切りがない。うん。俺、普通。
ミラ、アリー曰わく、この鳥は『黒鳥』。そのまんま。美味しい鳥として認定されていて、普通なら森にいるはずの鳥。この鳥が街中にいたなんて珍しいんだとか。俺、やっぱり非常識。
うん。やっぱりあり得るな。これが『3』に操られてた鳥なのかもしれないな。ははは。見られてた? 何を? 俺を?
いや、確か上空から広く町を見てたみたいだったし、状況確認か? 木の枝に止まってからも、キョロキョロしてたしな。『スペード』の仲間でも捜してたって所かな?
今回死んでしまった『2』から得られた『3』に関する情報は、鑑定持ちの女で、能力は小動物遣使い。同時に複数の動物を操り、視覚情報を得られるだけのもの。その映像も、白黒で見えるだけで、音までは聞こえない。その性格は、ヒステリー気質で扱いが難しい。
うん。気に留めておこう。木じゃなくてね。《スルー》




