ちゅん鳥 リターンズ
エルフの3人とのお食事会という名の結婚披露宴。
お支払は、何と30万。お店は貸し切りで、飲めや歌えやの大騒ぎ。食べ放題飲み放題だからね。どんどん人が増えていって、気が付けば満員御礼。いや立ち食い立ち飲み状態だったから、120%は入ってたね。うん。いいけどさ。祝ってくれてるならね。
で、見ず知らずの俺達に、良いもの見れたって、何故かご祝儀までいただきまして、差し引きしたら30万エーン。はい。楽しく、美味しく、素晴らしいひと時を過ごす事が出来ました。
安いもんだと思ったね。あんな笑顔が見られるならね。またやっちゃうか?
出た! 乾杯したいだけ星人だ!
その後は、無事お開きになりまして、俺達も無事、宿に戻ってお休みしましたよ? 本当だよ? 今日は、お昼から地下施設完成の『打ち上げ』があるからね。それまではのんびり過ごしますよ?
俺も、楽しく美味しい酒が飲めたからね。勿論適量ね。だから気分爽快。心も体も絶好調。
よしよし、サラサラ
よしよし、もふもふ
そして、何故か俺のベッドで眠る2人。うん。知ってたよ?
2人からの申し出で一緒に寝る事になったからね。
ふっ。
だからと言って、何かあった訳じゃない。ただ添い寝してただけ。本当だよ? チキンなオイラが、2人を同時になんて、お相手出来る訳がないじゃないか。あはははは。はぁ。
ミラがまん中なら、文字通りの『川の字』だったのに、やっぱりオイラが真ん中だったから、変形『川の字』? 真ん中の棒が1番長い『川の字』でグッスリ眠りました?
二人とも、〈身体的強化〉の影響で? いや、〈光闇魔力循環の癒やし〉のお陰かな。もう、すやすや眠ってたからね。見てるだけでも幸せでした?
寝る前も、誓いのキス止まりなオイラでした。丸
*
ちゅん、ちゅん、ちゅん
ちゅん、ちゅん、ちゅん
ちゅちゅん、ちゅちゅん
ちゅちゅん、ちゅちゅん
「ん? 鳴き声が多いぞ? それに、鳴き方も違うし」
あっ。増えるし。4羽になってるし。何でそうなるし!
見た目は皆同じ。鳴き声が2羽ずつ違う訳ね。
あぁ。それぞれに番いって事ね。俺、納得。でも、そんな鳴き方されたらうるさいぞ? 朝の爽やかな鳴き声じゃなくなってくるじゃないか。
多分、いつものちゅんちゅん鳥だよな? そろそろ呼び名を考えるか? でも、見分け方が付かないしな。どうしたもんか。
「よし。お前達。あの黒い鳥には、もう襲われなかったか? 大丈夫か?」
ちゅん、ちゅん
ちゅん、ちゅん
ちゅちゅん、ちゅん
ちゅちゅん、ちゅん
「分からん。それと、皆で鳴くな。うるさいぞ。代表を決めて答えてくれないか。出来るか? なんてね」
おっ。4羽とも、それぞれに首を左右にちょこちょこ動かしてちゅんちゅん鳴いてるな。やっぱりコイツら、俺の言葉が理解出来てるな。
ちゅん!
「おお。お前が代表か。よし。じゃあ、これからは朝の挨拶は、順番制にするか、皆で同じ鳴き声にしてくれないかな。色んな鳴き声がすると、折角の朝の雰囲気が台無しになるからな。理解出来るか? これまでのように、澄んだ鳴き声の1つに統一して欲しいんだ。頼んだぞ?」
……ちゅん!
「おお。お前達は賢いんだな。ありがとう。お前達の鳴き声は、爽やかな朝にぴったりだからな。頼んだよ」
この『ちゅん鳥』、分かってやってるのか、上下に首を動かしながら、頷くようにして1鳴きしたぞ。マジか?
「ちょっと待て。お前達、もしかして、本当に俺の言葉が分かるのか?
分かるなら、鳴かずに上下に首を動かして肯定を示して欲しい」
……コクコク コクコク
マジだ。コイツら。人間の言葉が理解できるんだな。おいおい。なんか楽しくなってきたぞ。
「おお。みんな理解できるんだな。いいぞ。じゃあ、ちょっとした取り決めをしてみようか。どこまでの事が出来るのか分からないかから、肯定を示す時には、首を上下に動かして欲しい。
『コクコク』
そう。それでいい。
違うって意味で否定を示す時には、首を横に振って欲しい。
『フリフリ』
うん。いいね。
よく分からないような時には、首を傾けたいままにして欲しい。
『コテン』
そう。いつもやってるそれだ。それは何? って感じの表現に見えるからな。覚えておくといいよ。
それから、俺に何か伝えたい事があったり、呼びたい時には、朝の鳴き声はとは違った鳴き声を繰り返して欲しいかな。気付けない事もあるかもしれないけど、なるべく気付けるようには注意しておくからね。分かった?」
『コクコク』
「おお。そこまで理解出来るんだね。凄いや。もしかして、誰か飼い主が居たりするのかな?」
『フリフリ』
「あ、そう。居ないんだね。じゃあ、何でそんなに人間の言葉がわかるのかな?」
『……コテン』
「あ。うん。そうだよね。そんなの分かる訳ないか。ははは」
なんか、エコーの事を思い出すな。元気してるかな。まだ王都に居るのかな。なかなか行く機会はないと思うしな。また、オデルローザに行った時に、セバイスさんに聞いてみようかな。
それに、ここの奴隷商館の支配人セバイラモさんの耳にも入ってたのかな、俺の事など色々と。まあ、また聞いてみようかな。今日の『打ち上げ』にも参加しそうな感じだし? 『飲み会』とか好きそうな感じだからね。
「おお。なんじゃ。朝から面白い事をやっておるのじゃな」
「はい。朝から凄い事やってます。ずっと見てましたけど、言葉が通じるみたいですね」
「あ、おはよう。ミラ、アリー。起こしちゃったかな?」
「おお、おはようなのじゃ。つい挨拶するのを忘れておったのじゃ」
「はい。おはようございます。挨拶するタイミングが難しかったです。目が覚めたら小鳥と話してるなんて、規格外にも程があります」
「うん。そうだよね。俺もそう思う。でも、話しが通じるのが分かったのは、今だからね。いつ分かったの? 今でしょ! って事だからね。俺も驚いてるからね」
「ほう。そうなのじゃな。今初めて知ったのじゃな。それで、その検証をしておったという訳じゃな」
「そうですか。知ったのは今ですか。それは驚きますね。凄い事だと思いますけど、よく話す気になりましたね」
「うっ。だよね。まあ、色々あってね? 前から鳴き声が気になってたのもあるし、昨日、黒いカラスみたいな鳥に襲われていたんだよ。それを追い払ってやったってのもあるのかな? あと、ジャンボシイタケも好物みたいだし?」
「なんじゃと。アヤツらは、ジャンボシイタケが好物じゃと。ほう。それなら仕方ないかもしれんのじゃ。この味が理解できるという事は、それなりに話の分かるヤツらのはずなのじゃ」
えー。何、そのとんでも理論。ジャンタケ好きなら皆仲間? ミラらしいのか? これぞミラクオリティ?
「そんな事があったんですか。さすがです。見ず知らずの小鳥も助けちゃうなんて、優し過ぎます」
「あ。うん。成り行きでね? お陰で色々あってね? 魔法の検証もできたから。俺もアイツらには感謝してるんだよね。
ちなみに、ミラ。そのジャンボシイタケをあげみなよ。喜んで食べてくれると思うよ」
「おお。そうかの。わしでも餌をやれるのじゃな。ジャンボシイタケは、まだまだ沢山あるからの。少しくらい分けてやるのもいい事なのじゃ。この美味しさが分かるヤツらなら尚更の。
よしよし。ここに置いておくからの。ゆっくり食べるといいのじゃ」
「あ。私も餌をあげたいです。いいですか?
やったー。えへへ。これもお食べ。美味しいよ?」
あれ? 首を傾けたまま動かないぞ? おかしいなぁ。
「おーい。食べないのか? お前達の好きなジャンボシイタケだぞ? 美味しいぞ?」
『コテン』
「ん? もしかして、警戒してるのか? この2人は大丈夫だぞ? 俺の妻達だ。家族だからな。安心していいぞ」
「おお。『妻』とな。おお。それもまた、良い呼び名なのじゃ。わしは正妻じゃからの。間違っておらんのじゃ。そうか、妻とな。ふふふ」
「きゃー。『妻』なんて言われちゃいました。響きが良い呼び名です。嬉しくなります。私は『2番目』ですけど、妻は『妻』ですから。えへへ」
『……コテン、コクコク』
「お。理解出来たか? この2人の言うことは聞いても大丈夫だからな。何か伝えたい事がある時は、この2人にも呼び掛けてみればいいからな」
『コクコク』
「おお。ちゃんと理解してくれるのじゃな。よし。わしも一緒に面倒を見る事にするのじゃ」
「はい。可愛いです。私も一緒に面倒見たいです」
「うん。皆に懐いてくれると良いよね。コミュニケーションの取り方は、さっきやってた通りだから。2人とも、これから気に掛けてやってね。よろしくね」
「あい、分かったのじゃ。わしに任せておくのじゃ」
「はい。任せて下さい。こんな可愛い小鳥なら大歓迎です」
* *
やばい。何か悲しくなってきた。俺より、ミラとアリーの方に懐いてやがる。コイツら。やるな。より優しい人を見分ける能力持ちか? 同じエサをくれる人なら、より優しい人のが良いからな。うん。俺でも分かるこの理屈。悔しくなんてないんだからね。
まさか、一緒に朝食を食べるまでの仲になるとはね。やってくれる。もういいや。お世話は2人に任せよう。と言っても、別に飼う訳じゃないからね。
朝の爽やかな鳴き声と、朝食を一緒に食べるだけ。後はご自由に? 鳥籠に入れるでもなく、好きに生きればいいさの精神だよ?
結局名前は付けられなかった。理由は簡単。見分けが付かないから。リボンでも着けられれば違うんだろうけど、小鳥にリボンはね? 飛ぶのに支障が出ちゃうと悪いしね。また、何か良い方法がないか、考える事になった。
もう、ちゅん1、ちゅん2、ちゅん3、ちゅん4でいいんじゃね? 別に、俺に懐かないからって、拗ねてる訳じゃないんだからね? くっそー。
* *
お昼です。お昼です。
そろそろ、打ち上げのお時間です。まったり雰囲気で『ちゅん鳥』達と戯れてたら、あっという間にお昼です。きっかけが俺からだったとは言え、やれやれだ。
「じゃあ、そろそろ準備して、打ち上げ会場にいこうか」
「おお。もうそんな時間かの。早いものじゃ。では、支度するのじゃ。ではの、お前達。また明日なのじゃ」
「はい。早いですね。もう時間なんですね。私も支度します。じゃあ、また明日です」
* *
「お疲れ様です。打ち上げ参加者のタビトです。妻を2人連れてきました。これが招待状です」
「はい。タビトさん、ミラさん、アリーさんの3名ですね。お疲れ様でした。
こちらが、『地下施設完成を祝う会』打ち上げ会場になります。特に堅苦しい決まりもありませんので、気楽に食事、お酒を楽しんで下さい。
ただ、中には、仕事の途中で挨拶に顔を出すだけの者達もおります。お酒は、ご自分で楽しむ分だけにして下さい。
お開きの時間は、日が暮れるまでとなります。では、どうぞ、お楽しみ下さい」
おう。何て素晴らしい企画内容。気軽に食事もお酒も楽しむだけだなんて。なかなか出来ない事だよな? お偉いさんの挨拶とか、それぞれにスピーチとか、1発芸とかやらされたりとかもないんだね。うん。安心。
エフェクト使えば、それなりの1発芸はできると思うけど、そんなの敢えてやりたくもないしね。ホントだよ?
案内状に書いてあった開催場所、町外れの一角で、思った以上に広いスペースが確保してあるようだ。え、何人来るのって感じだぞ。
打ち上げなんて言うから、どんな感じでやるのかと思ってたら、飲食店に隣接した広場には、既にテーブルや食事が準備されていて、立食式のパーティーみたいな雰囲気になるのかな。雨じゃなくて良かったね。
お店を貸し切ってあるのかな。打ち上げはよくやるって言ってたし、それ専用のお店なのかな。まさかね。でも、店名が『打ち上げ亭 とりあえずビールで』だからな。あり得る話だし、どんだけビール押しなんだよって店名だよね。勿論期待しちゃうけど?
ビール好きの俺としては、案内状を貰った時から、このお店に来るのを楽しみにしてたんだよね。ふふふ。どんなビールが出てくるのか、楽しみで仕方ありませんな。
『取り敢えずビールで』と注文を手早く済ませ、メニュー選びはその後で。ただただ早く酒を飲むための、昔ながらの悪しき習慣。『取り敢えず』なんて言うな! ビールに失礼だろ! と怒る人も居たようだけど、いち早く運んできて貰える酒としては定番だったからね。まあ、仕方のない事なのでありました。
元の世界じゃあ、ビールを飲まない人達も増えてきてたし、そもそも飲み会に参加すらしない人達も居たからね。なかなか難しい問題だったのは確かだね。
『打ち上げ』。無事にひと仕事終えた事を皆で労い、楽しむための『お疲れ様でした会』だ。
太鼓に関連した技法から来ている言葉だと聞いた事があるが、今はどうでもいい話だね。楽しく盛り上がる事が出来れば、乾杯したいだけ星人の俺としては問題ないからね。
人間関係が面倒だと考える人達には、理解に苦しむ飲み会かもしれないけどさ。オイラは、自分が楽しく飲み食い出来れば良いって考えるタイプだからね。しっかり『一線』を引いて参加するのであります。
鬱陶しい人には近付かない。プライベートな事を話し過ぎない。酒は自分のペースで飲むとキッパリ言い切る。それでもダメならトイレに逃げる。同じような人を見つけ近寄るなオーラを出す。一言誰かに相談し守ってもらう。
純粋な人や、真面目な人に多いこの悩み。サークル活動や部活動の経験のない人達にとっては、苦行とも言える修行の場。招く方も招かれる方も、それなりの心遣いは必要なのであります。丸
それにしても、大きい仕事の後には、いつもこうして打ち上げをしてるとか。流石、交易の町、交流も大事だからね。人あってこその商売だし、町の活性化にも繋がるって事だよね。
ほんと、商売人にとっては、良い習慣と雰囲気のある町なんだろうね。
「ミラ、アリー。立食式の打ち上げみたいだから、適当に食事しながら過ごしてれば大丈夫そうな感じだね。俺達も気楽に楽しもうか。俺は、色んな種類のビールがあるみたいだから、その検証作業がある。うん。これは必要な検証なんだよね」
「おお。そう言えば、この町でやりたい事を言っておったのじゃ。確か、『自分好みのビールを作りたい』とか言っておったのじゃ。それに関係のある事であれば、好きにすると良いのじゃ。わしには酒の事は分からんしの。適当に食事をして楽しむ事にするのじゃ」
「はい。私にもお酒の事はよく分かりませんので、タビトさんの思うように動いて下さい。私も、ミラさんと一緒に食事をして楽しもうと思います」
「うん。分かった。ありがとうね。じゃあ、俺は単独でビールの検証と言う名の、飲み比べに言ってくるからね。折角だから、お互いに楽しもう!」
「ふふ。あい、分かったのじゃ。飲み過ぎは注意じゃぞ?」
「はい。お互いに楽しみましょう。えへへ」
「うん。分かってる。ミラの方こそ、食べ過ぎ注意だよ?」
「ぐっ。分かっておるのじゃ。じゃが、わしには食べ過ぎなんて言葉はないのじゃ。いくらでも食べられるのじゃ」
「はいはい。ミラの辞書には食べ過ぎと言う言葉は無かったね。そうでした。じゃあ、また後でね」
「大丈夫ですよ。私も居ますから。安心して下さい」
「ふん。わしが本気になったらどれくらい食べられるか、見せてやれば良かったのじゃ。まったく」
ミラさんが何か言ってるけど、ここは《スルー》して、さあ、どんなビールがあ・る・の・か・な?
天の神様の言う・と・お・り!
はい! これから検証します!




