エルフとのお食事会?
さあ、やって来ました。集合場所の店の前。ミラとアリーの嗅覚、『美味しそうな物が食べられそうな店を、匂いで選んでみました大作戦』により選ばれた、美味しい食事を期待させる店、『量と質は反比例食堂』。ここだ。
なんて名前のセンス。よくこれで、この町で商売やってるよね。しかも、偶然にも、秘書さんから貰った簡易地図にも、優良店としてチェックが入れてあるし? ホントかな? まあ、あの秘書さんが言うのなら、間違いないのかな?
ミラとアリーも、店の名前には拘りはないみたいだし、美味しさ優先。ミラは、量も優先させたいのだが、美味しい店で沢山食べれば同じ事。うん。報酬もあるからね。その感覚は間違ってないと思うな。
まあ、食べてみれば分かるし、ダメなら店を移ればいい。この町での外食のファーストアタックだ。
うん。うまかった。名前で判断せずに、違いの分かる客だけ来てくれれば良いという、シェフの拘りの店名らしいよ。そう言う事だったのか。やるね。これまた1本取られたね。
お返しに、1本いっとく? 『ジャンタケ』の素焼きだよ?
ほれ見ろ。やっぱりイケる。このお味。香りと歯応えも兼ね備え、出汁としても使える、夢の食材。その名は『ジャンボシイタケ』。そのままじゃん。
おう。名前も気に入ったと? 流石、違いを求める漢には伝わる何かがあるんだね。うん。俺は嬉しいよ。
違う。こんな事を報告してる場合じゃなかった。で、何だっけ?
昨日からニヤニヤしてる、その訳は?
でも、その前に。まずは『物知り氷結のリーン』さんからの報告でした。
おう。そんな事も言ってたね。よく覚えてたね。あの状態で。約束は果たす。これエルフの常識。それは俺も常識だ。
で、
『【ハイエルフ】の名称について』
早速、長老に聞いてみた所、『採用』との事でした。
この世界に来て、初めての『採用通知』だよ? 意味は違うけど?
『エリフ』『エレフ』の2つを纏めてそう呼ぶ事に決まったみたいだね。そこに『エラフ』は入れないらしい。やはり、エラフは偉人認定者。一緒にする事は出来ないと。
前から、同じような名前で面倒だとは思ってたみいで、良いアイデアだと喜んでくれたみたいだね。ただ、特にお触れをだす訳でもなくて、これを聞いた者達が便利で良いなと思えば、ゆっくり気長に変わって行くだろうとの事。
流石、長寿のエルフ。変に拘らないその姿勢。これは浸透するのにも時間が掛かるんだろうね。この世界では?
俺へのお礼は、特になし。『ありがとね』って事だった。うん。別に期待もしてないし、そんな事は忘れていたからね。あはははは。
「さあ。長老からの伝言も伝えたし、お店にお客さんが増えてきたみたいだから、準備はいいかしら?
今から、私達の恩人の『結婚披露宴』を始めるわよ!」
「はいぃっ?」
突然話し出した『物知り氷結のリーン』さん。何言ってんの? 『結婚披露宴』ですと? 俺達の? この場には俺達6人しか居ないし、恩人って言ったら、やっぱり俺達の事だよな? 奴隷狩りから助けたし。
「話は聞いてるわ。『指輪』をはめてもらったみたいだけど、自分達だけで済ませちゃったんでしょ? 誰にも知らせずに。それも、宿屋の部屋で。
そんな大切な儀式を、そんな所で、自分達だけで済ませちゃうなんて、有り得ないわよ? 折角だから、私達が立ち会ってお祝いしてあげるわ。良いアイデアでしょ? 感謝しなさいよ?」
「そうですよ。そんな大切な儀式を、寄りによって自分達だけで済ませてしまうなんて。女性にとっては、一生に1度の夢のイベントかもしれないのよ? 勿体ないわ。皆で祝ってあげないと。そうでしょ?」
えー。そう言う事ですか?
でもさ、その大切な結婚披露宴とやらを、『量と質は反比例食堂』でやるのは良いの? そりゃあ、確かに評判が良くて、料理は美味しいし、店の雰囲気も落ち着いてて良いけどさ。けどさ、量と質は反比例食堂って……、名前はどうなのさ?
そこには拘らないんだよね。うん。知ってた。そう言う人達だった。俺のが悪かった。はい。反省。
「ふふふ。そうなのじゃ! 昨日この2人に、着けてる指輪の事を聞かれての。それで、こういう運びになったのじゃ!」
「えへへ。そうなんです! お2人から、一緒にお祝いしましょうって言われまして、こういう運びになりました!」
おう! 2人の笑顔が眩しいぜっ。こりゃ、あかん。この流れを止める事なんて、俺には出来ないよ?
『早い方が良く』て、『お互いのためにも早く済ませたい』って笑顔で言ってたのは、この事だったんだね。
流れに身を任せて、なるようになるさの精神で乗り切るしかないな。お祝いの宴なんだし。良い事だ。そうだ。これは良いモノだ。これでミラとアリーの2人は、あと10年は笑顔で居られそうだ。あはは。
「おお。そう言う事でしたか。突然呼び出されたものですから、何事とかと思いましたが、この喜ばしい宴の席に私まで呼んでいただけるとは。感動です。ありがとうございます」
おう。この人も、何も知らされてなかったんだね。やっぱりね? 男なんてそんなもんだ。そんな扱いを受ける種族。それが男。違いが分かるかどうかなんて、関係ないね!
「あ、ありがとう? この打ち合わせをしてくれてたんだね。それで2人とも、いつもより笑顔がニヤけてたんだ。あはははは」
「そうなのじゃ! 皆で祝ってこその儀式なのじゃ。今日はまた、盛り上がって乾杯するのじゃ!」
「はい! そうなんです。このお祝いの席のために打ち合わせしてました! 皆さんに祝ってもらえるなんて嬉しいです!」
「そうよ。皆に祝ってもらってこその大切な儀式よ。今日は、私達の立ち会いもあるんだから、盛大にお祝いするわよ!」
「そうですわ。私達が立ち会うお祝いですからね。盛大にやりましよう!」
「おお。皆ありがとうなのじゃ! 今日は一生に1度のお祝いなのじゃ。盛大に頼むのじゃ!」
「はい! 今日は一生に1度のお祝いてす! 盛大にお願いします!」
「「「おおーー!!」」」
パチパチパチパチ 「ひゅ~ひゅ~!」
パチパチパチパチ 「いいぞー! おめでとう!!」
何か、お店の人達まて巻き込んでない? お客さんまで? いいの? いいのか? いいならいいや。もう、ここまできたら、やるしかない!
「よしっ! じゃあ、今日は俺達3人の結婚披露宴だ! 盛大にお祝いして下さい! 今日は、俺のオゴリだ! みんな盛り上がってね! 乾杯ー!!」
「乾杯なのじゃー!」
「乾杯です!」
「「「おおー!!」」」
「よっ、太っ腹! ありがとう!」
「よし! 飲めー! 飲み放題だぁ!!」
「おめでとう! よかったな!!」
* *
「さあ。皆盛り上がってるみたいだし、そろそろ準備はいいかしら? 今から、私達の恩人の『誓いの儀式』を始めるわよ!」
「はいぃっ?」
また突然仕切り出した『物知り氷結のリーン』さん。何て言ったの? 『誓いの儀式』? 何それ? 何が始まるの?
「そうね。皆盛り上がってるみたいだから、そろそろいいかしら。じゃあ、『誓いの儀式』を始めましょう」
リーンさんもシーンさんも嬉しそうに笑ってるけど、何を始めるつもりかな? オイラ、嫌な予感がしてきたぞ。
「じゃあ、ミラさんに、アリーさん。こっちに来てもらえるかしら。主役なんだから、堂々としてればいいんだからね」
「そうよ。今日はあなた達2人が主役なんだから、恥ずかしがってないで、早くこちらにいらっしゃい」
ん? いつの間にか居なくなってたミラとアリーが、恥ずかしそうにしながら登場したぞ? あっ。お色直しまでしてるし。いつの間に、そんな綺麗なドレスを準備してたんだ? それでニヤニヤしてたのか?
ミラは、赤色のドレス。動きやすさ重視だよね、それ。それってドレスって言うのかな? 一応スカートだけど、ヒラヒラも露出も少なめな、ミニスカートはお子さま用? 似合ってるけど、顔も赤いから、全身真っ赤だよ?
アリーは、緑色のドレス。落ち着いた深い緑色の、ヒラヒラ全開ドレスだね。アリーも露出は少なめ、ロングスカートで、所々に花をあしらったメルヘン仕様? うん。似合ってるね。恥ずかしそうな姿もまた、可愛いよ?
『狩りの成果を期待して』って、これの事? 狩ったんじゃなくて、買ったのね? 『その為の採取だった』って、服を選んでたの? 採寸? きっと、エルフの2人に協力してもらったんだろうなぁ。服とか興味なさそうだったし。
「うん。2人とも、よく似合ってるよ。可愛いね。俺だけこんな格好で浮いてるね。あはははは」
「うぅ。嬉しいやら恥ずかいやら、変な気持ちなのじゃ。じゃが、おぬしが可愛いと言ってくれるなら、それで良いのじゃ。ありがとうなのじゃ、タビトよ」
「はい。こんな格好初めてで、嬉しいのか恥ずかしいのか、よく分からなくなります。でも、タビトさんが可愛いって言ってくれました。凄く嬉しいです。ありがとうございます」
「何言ってるのよ。今日の主役はこの2人なのよ。あなたの格好なんて、そこまで気にする必要なんてないんだからね。そのままでもそれなりに格好良いんだから、大丈夫よ? ねぇ、お2人さん?」
「おお。そうなのじゃ。タビトはそのままでも、それなりに格好良いのじゃ。そんな事気にする必要はないのじゃ」
「はい。タビトさんは、そのままでも、それなりに格好良いです。気にしなくても大丈夫てす」
「あら、あなた、本当に愛されてるのね。良かったじゃないの。なかなかいないわよ? こんな事本気で言ってくれる人なんて」
うん。知ってる。俺は幸せ者だと思うよ。本当にね。それなりに格好良いって、それなりだからね? そんなに2人して強調しなくても良いのにね。ははは。ま、それは仕方ないか。自分でも格好良いとは思ってないし? 悔しくなんてないんだからね。
「あらあら。焼いちゃダメよ? リーン。今はこの2人の為の披露宴なんです、からね? 少しは控え目にしておきなさいよ?」
「もう! 何言ってるの、シーンったら。私があんな奴にヤキモチなんて焼く訳ないじゃないの! 誰があんな、まぁ、それはそれで悪くはないと思うけど……」
「あら。私は、焼いちゃダメとは言ったけど、ヤキモチなんて言ってないわよ? もう、リーンったら、正直者なんだから」
「……っ! もうっ。知らないっ!」
これこれ、そこのエルフさん達、主役の2人を差し置いて、何を2人だけで盛り上がっているのかな? 全く、これ以上のサプライズは御免だよ?
「こほん。では、気を取り直して、
皆さん注目して下さい!
今からこの3人が、『誓いの儀式』をします! 私達はその立ち会い人となって、お祝いしましょう!」
「わーー!」 パチパチ! パチパチ!
「いいぞー! やれー!」
「きゃ~! いいな~、私も仲間に入れてー!」
「じゃあ3人とも、こちらへ来てもらえるかしら。これは、私達エルフが正式な立ち会い人となる儀式よ。寿命が長い分、普通の式よりは格が上なんですからね? 心して誓いなさい。長く語り継がれるわよ? ふふふ。
じゃあ、モーク、お願いね」
「おう。任せてくれ。俺達の恩人の儀式だ。きっちり務め上げるぞ!」
ああ。そっか。エルフだけにね。人間よりも寿命が長い分、誓うという行為も、より長くその効果を得られると。しかも、神父役を務めるのは『鉄壁のモーク』さん? 堅い守りの人だけあって、その誓いも堅く守られると? おう。何という事でしょう。粋な計らいとは、正にこの事か。やってくれますね。
ああ、あかん。俺までウルウルきちゃうかも? 人生初の結婚披露宴? 結婚式はまだだけど? そこは気にしちゃいけません。今は、皆さんの好意に甘えてお祝いして貰おう。うん。うん。ありがとう。ありがとう。
今日は俺達の為に、どうもありがとう。
「待って! あなたがきっちり務め上げるなんて言い出したら、どれだけ時間が掛かるか分からないわ。
今日は、『結婚披露宴』。それに今からするのは『誓いの儀式』だけよ? ちゃんと分かってる? お願いよ?」
「あ、ああ、そうだったな。すまん。教えてくれて助かった。『誓いの儀式』だけだったな。よし。任せておけ!」
え~。モークさん。オイラのウルウルを返してよ。やっぱりそんな感じなんだね。でも、良かったよ。あのまま普通にやってもらってたら、堅~い式が、長い~く続いたんだろうね。うん。流石『氷結のリーン』さん。ピシッと締めてくれました。ヒヤッとするよね。あの視線?
で。やっぱりするんだね? 誓いの儀式? こんなに大勢の前で? 初めてなのに? ミラとも、アリーとも。
いや~ん。まいっちんぐ! あっちょんぶりけ!
「さあ、皆さん。私達は『誓いの儀式』の立ち会い人となります。私は、ここに居る3人に命の尊厳を救われた、エルフの『エルモークジェマン』です。私の名において、この儀式の一生の証人となりましょう」
「同じく、エルフの『エルリーンレデス』。私の名において、この儀式の一生の証人となる事を誓うわ」
「ふふ。同じくエルフの『エルシーンレデス』よ。私の名においても、この儀式の一生の証人となる事を誓うわね」
「おおー。エルフが証人だぞ」
「すげーな。エルフがエルフ以外の式で証人になるなんて、珍しい事もあるものだな」
「おい。あれって、『氷結のリーン』だよな?」
「おう。あっちは、『清浄のシーン』だぞ。どうなってんだ」
ざわざわ ざわざわ
「既に『指輪の交換』は済んでおりますので、今日は、簡単な確認と、お披露目の『誓いの儀式』だけになります。長い言葉は省きます。ご了承下さい。
タビトさん、ミラさん、アリーさん。
ここに居る皆さんの前で、『誓いの言葉』をお願いします。私の問いに答えて下さい。
「タビトさん。あなたは、ミラさん、アリーさんをその生涯において守り続け、笑顔を絶やすことなく、いかなる時も幸せにすることを誓いますか?」
「はい。誓います」
「ミラさん。あなたは、どのような時も笑顔を絶やすことなく、タビトさんの支えとなり、その生涯において愛し続けることを誓いますか?」
「うむ。誓うのじゃ」
「アリーさん。あなたは、どのような時も笑顔を絶やすことなく、タビトさんの支えとなり、その生涯において愛し続けることを誓いますか?」
「はい。誓います」
「あなた方は、自分自身を、お互いの為に捧げますか?」
「「はい。捧げます」」「うむ。捧げるのじゃ」
「タビトさん。あなたは、この指輪を、ミラさんに対する、あなたの愛の証として彼女に与えたのですか?」
「はい。そうです」
「ミラさん。あなたは、この指輪を、タビトさんの、あなたに対する愛の証として受け取りましたか?」
「うむ。受け取ったのじゃ」
「タビトさん。あなたは、この指輪を、アリーさんに対する、あなたの愛の証として彼女に与えたのですか?」
「はい。そうです」
「アリーさん。あなたは、この指輪を、タビトさんの、あなたに対する愛の証として受け取りましたか?」
「はい。受け取りました」
「ミラさん、アリーさん。あなた方は、この指輪を、タビトさんに対する、あなた方の愛の証として彼に与えましたか?」
「うむ。そうじゃ」「はい。そうです」
「タビトさん。あなたはこの指輪を、ミラさん、アリーさんのあなたに対する愛の証として受け取りましたか?」
「はい、受け取りました」
「それでは。こちらにきて、順番に誓いのキスを」
* *
エルフさん達との食事会のはずが、あれよあれよと話は進み、『結婚披露宴』から『誓いの儀式』へ。そして、当然初めての『誓いのキス』を皆さんの前で。
いや~。恥ずかしかったと言うか、緊張したと言うか。何だかね? それは、ミラもアリーも同じ事だったようで、3人で緊張してたら、いつの間にか終わってた? って感じかな。
『早い方が良く』て、『お互いのためにも早く済ませたい』って笑顔で言ってたのは、こっちの事だったのかな? あはは。
やっぱり、こういう儀式というのは、それなりの効果もあるんだね。皆さんの前で誓う事によって、より真剣に、より深く考えられるようになるんだね。
うん。2人を大切にしようって気持ちが、より強くなったからね。あのまま、宿の部屋で指輪をはめてお仕舞いって事よりは、やってもらって良かったかな。『誓いの儀式』? 『結婚披露宴』も。
沢山の人達から祝福されるって、嬉しいもんなんだね。初めて見る人達ばかりで、飲み食いしてるだけの人も居たけどね。それはそれで、いい思い出か? あはははは。
それはそうと、エルフの3人組み。やっぱりこの町では有名人? 二つ名なんて、皆さん知ってたし、モークのもね。
それに、エルフが、エルフの参加して居ない儀式の証人になるなんて事は、凄く珍しい事らしい。エルフにとって証人になるという事は、それ程重たいものなんだそうだ。
うん。人間より長い人生で、誰かの証人なんかにホイホイなってたら、その分負担も増える事になるからね。連帯保証人なんて、考えただけでも、ゾッとしちゃうよね。あー、いやだイヤだ嫌だ。
でも、ありがとう。そんな長い人生を掛けての証人になってくれたなんてね。嬉しいね。お祝い事の証人だからね。そんなに悪いものでもないと思うけど。それでも、俺達の事を認めてくれた人達が居る。これだけでも嬉しいものですな。ふふふ。
「ミラ、アリー。ありがとう。これからもよろしくね」
「あい。こちらこそ、よろしくなのじゃ」 ちゅっ
「はい。こちらこそ、よろしくお願いします」 ちゅっ




