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脱出鬼ごっこ。  作者: 桜餅葉 杏
18/26

裏切りの意味

「裏切り」


私はぽつりと言った。

裏切りの意味はよく知らない。

知ろうと思ったこともないけど、文字的にこのように使う気がした。

違ってもいい、夏川くんこそ知らないはずだから。


みんなで仲良く遊んでいた。

ずっと一緒だと誰かが言った。

みんながそれに頷いた。

でもその中の1人が仲間の悪口を言った。

それも裏切りになるのだろうか。

だとしたらこれは立派な裏切り行為だろう。


「裏切り?」

「夏川くんは紅葉ちゃんを裏切ったことになると思う」

「自分の身を守るのがいけないのかよ」

「いけなくはないよ。でも、敵に仲間をあげるの?」


夏川くんは考えるように頭を掻いた。

私は夏川くんからの言葉を待った。

先生が走る足音が聞こえる。でもこちらに来る様子はなかった。


「あげるよ」


は、と声を押し出す。

学級委員はこんな人でもなれるのか。

人はすべて見かけと作った性格で判断してしまう。

本当の顔と性格を見てしまったら、こんなにも心に穴が空いたような気持ちになるのか。


「ふざけんな」


気がつくと少し先に冬里くんがいた。

ちっ、と舌打ちをする音が聞こえる。

夏川くんは冬里くんの元へ駆け寄り、襟をひっ掴む。


「今の話、聞いてたか」

「聞いてるも何も、聞こえたんだ」

「どこから」

「春野さんの裏切りから」


全部、聞いていたのか。

夏川くんは襟から手を離した。

春野さん、と後ろから声が聞こえた。


「え?」


後ろから声だなんておかしな話だ。

何の足音も聞こえなかった。

後ろを振り向くと、美月先生がいた。


美月先生はさっき私が描いた絵を目の前に広げた。

冬里くんが息を呑む。

美月先生がゆっくりと微笑んだ。


「知らなかったと思うけれど、今までのあなた達をずっと見てたわ。

裏切り、喧嘩、仲間が鬼に捕まる。今のあなたたちはそんな状態が絶えないわね」


美月先生は夏川くんと冬里くんの間に近寄る。

両手を2人の肩に近づける。

2人はこちらに走ってくる。


「お前、先生と絵を描いてたのか?」

「仲いいね」


左右の耳に吹き込まれる言葉。

そのまま肩を押される。

いきなりのことで体が動かない。

ぶつかった所は、美月先生の体。

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