また1人
先生が私たちを追いかけないのは鬼としての仕事が務まっているのだろうか。
でもきっと給料をもらいながらやってるわけではないだろうし、それでいいのだろう。
私たちがいない本当の世界では、親や本当の先生は心配しないのだろうか。
テストや授業を受けなくて良いのは正直楽でいいが、単位が足りずに進学、就職できないというのは辛い。
外に出るために階段を降りつつ、その疑問の答えを知るために仮面を外した。
仮面は音と煙をたてて、優雅にお辞儀をしたのだろうけれど私はそのまま踊り場を進む。
「何か質問があって仮面を外したのでは」
登場シーンをみてもらえなかったことが嫌だったのか、怒りを含んだ言い方だ。
気にせずに私は問う。
「親とか先生、心配しないのかな。私たちのこと」
「現実世界の時間は止まってます。もとの世界に戻ったら、この世界に来た日時に時計は示していますよ」
私の隣をスタスタと歩きながら仮面は答える。
不思議と答えられたことを素直に受け入れられた。
昨日だったら、現実世界の時間が止まるって無理なのではないかとか無駄なことばかり考えていた気がする。
「質問は以上ですか」
「はい」
そう答えると、仮面は元の姿に戻った。
再び目元にかけて前を向く。
職員玄関の扉に手をかけて押し開いた。
目の前には職員が駐車できるスペースがあるが、誰も停めてはおらず周りを見渡せた。
鬼に見つかる確率も高くなるだけだが。
紅葉ちゃんや夏川くんを探してみる。
校庭の真ん中に2人が取っ組みあっていた。
その前には杉浦先生がいた。
何を言っているのかわからないが、夏川くんが紅葉ちゃんを突き飛ばしたのがわかる。
杉浦先生が飛ばされた紅葉ちゃんを受け止めるように腕を広げた。
紅葉ちゃんの悲鳴が聞こえたが、すぐに崩れ落ちたのがわかった。
杉浦先生は紅葉ちゃんを引きずるように、ワイシャツの後ろを掴んで引っ張った。
右側にある体育館側へと進むのを確認し、私は夏川くんのところへ駆け寄った。
足音で夏川くんも誰かが来るのを察したのか、こちらを見た。
「なに、してんの」
私が息を整えながら言うと、夏川くんは首をかしげた。
「何って言われてもなぁ、あいつを押しただけだよ」
「それも鬼に向かってね」
「そりゃそうだろ。俺は鬼がこっちに来るから自分を守っただけだ」
夏川くんは何も悪気がないように言ってのけた。
ぼけっとした顔で、当たり前なルールを言うように。




