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脱出鬼ごっこ。  作者: 桜餅葉 杏
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作戦会議

「俺たちに何が足りないんだろうな」


夏川くんは最後のひとふさ残っていた冷凍みかんを口に含みながら言う。

紅葉ちゃんは箸で卵スープを混ぜながら口を開く。


「性格じゃん?」

「それならお前もだろ」

「あたしは普通の女子高生よ」

「ケバった女子高生は普通じゃねぇ。な、冬里?」


冬里くんは急に話をふられて咳き込む驚いて食道ではないところにご飯が入ったのだろう。


「た、確かに風紀を乱すのはよろしくないと思うね」


反論する紅葉ちゃんの言葉を聞きながら、私は紙コップに注がれた麦茶を飲んでごちそうさまをした。

学食のおばちゃんがお盆を下げてくれた。美味しかったですとひと声かけた。


「作戦会議しね?」


紅葉ちゃんのお化粧の話からだいぶ飛んだ話題を問われ、私は聞き返す。


「作戦会議?」

「このまま鬼ごっこしてたって埒が明かねぇ気がする。【自分の足りない部分】って、自分じゃ気づかねぇことだってあるだろ?そういうの言い合ったりさ」


夏川くんが割と真面目に考えていたことにほぉと息を漏らした。

冬里くんがいい案だと呟いた。


「じゃあ3時間置きに保健室の前に集まって、みんなでお互いの悪いところとかを言い合おう。鬼に追いかけられてる時はまた別だけど」

「悪いところって、悪口になるんじゃない?」


私が何気なくからかうように言うと、馬鹿かと言葉が飛んできた。

結構傷つくが、真面目な話の最中にからかう私もダメだったなと反省する。


「悪口とかそんなのじゃなくて、性格とか物とかそういうのだよ。・・・・・・変わったこととか」

「それ、いいね」


紅葉ちゃんが頷いたところで、チャイムが鳴った。

時計はないのに鬼ごっこの世界ではチャイムは鳴るのか。

そう思っていると学食のおばちゃんが冬里くんの肩に手を置いた。そして言った言葉は。


「捕まえた」


さっきとは別人のように学食のおばちゃんはニヤリと笑って言った。

あの微笑みはどこへ行ったのだ。


冬里くんはその場で崩れ落ちた。

起き上がる様子はない。気を失っているのだろうか。

どうなっているかはわからない。

どちらにしろ私たちがとるべき行動は一つだ。


「逃げろ」


冬里くんがぽつりと言った。

わかってるわよ、と紅葉ちゃんが言った。


鬼ごっこを始めた時は怯えていたのに。

紅葉ちゃんの成長を感じつつも、私たちは一つの出入口に向かって走り出した。



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