朝食
学食のおばちゃんは散らかったデスクの上を片付け始め、綺麗になると4つお盆を並べた。
室内に漂う卵スープが美味しそうだ。
「さぁ、お食べ」
そう促され、私たちはベッドから降りてデスクを囲うように集まる。
夏川くんが白米がよそられている茶碗を手に取ると、訝しげな顔をした。
「量少ねぇし、これ小学生のメニューだろ。数年前食った覚えあるぞ」
それでも静かに箸を取ってご飯をかき込んだ。
「学食っつったらラーメンとか定食だろ」
「文句言いつつ食べてるくせに」
「まぁ久しぶりの給食どーぞってこったろ」
「給食はちゃんと栄養が」
「難しい話はどうだっていいんだよ」
学食のおばちゃんの方を見ると、穏やかな表情で夏川くんと冬里くんと紅葉ちゃんの会話を聞いていた。
追いかけてくる様子もなく、夏川くんの食べっぷりを見てよく食べるわねぇとも言った。
「あの、聞きたいことがあるんですけど」
「なんだい?」
学食のおばちゃんに気になっていることを聞いてみる。
冬里くんも察したように箸を掴もうとしていた手を止めた。
「昨日冬里くんのこと追いかけてましたよね」
私がそう聞くと、学食のおばちゃんは何のことかと首を傾けた。
「私が追いかけっこ?この歳でできないよ」
「昨日は何してましたか」
「ごめんねぇ、覚えてないんだよ」
学食のおばちゃんは歳ねぇと言いつつ微笑んだ。
私と冬里くんは顔を見合わせる。
記憶が無いということか。
口パクで冬里くんとお互い確認する。
ありがとう、と言って学食ならぬ給食に目を向ける。
いつ作ったのか、記憶はいつ抜かれたのか、覚えてないとは。
色々頭の中に渦巻くが、今は食べ物を見てお腹がすいたのを自覚する。
手を合わせて小さくいただきますをした。




