学食のおばちゃん、再び
「質問したいことがあるんだが」
「何なりとどうぞ」
「なぜ保健室にいるんですか」
冬里くんは苛立ちながら言った。
冬里くんは自分がなぜこの立場にいるのかなど、疑問をぶつけなければ気が済まない。逆に、理由を知らなければ落ち着けない。
「あなた達には眠ってもらったのです、0時ぴつたりに。そして今は朝の8時です。健康面を考え、睡眠はしっかりとっていただきたい」
仮面の下の笑顔は作られたように綺麗な弧を、唇の線が描いていた。
この世界では最低限の生活や健康の保障はされるようだ。
「朝っつったって、外は夜だぜ」
絵の具で濃く塗ったような黒を見つめながら、夏川くんは言った。
この世界で過ごすほど、現実味が無くなる。
作り物だとわかってくる。
どんなに完璧な人や物でも、いつかどこかでボロが出るように。
「午前か午後はあなた達が暮らす元の世界の時間でわかります。ちなみに今は8時20分。この世界は天気も空の色も月と太陽の入れ替わりもありません。ずっと夜のままです」
興味なさげに夏川くんは頷いた。
冬里くんも深く頷くと、また口を開く。
「昨日、と言った方が正しいか。
説明で3回まで捕まってもよいと言っていたが捕まったらどうなる」
「それは後に言ったと思いますよ?永遠にこの世界にいてもらうと」
冬里くんは顎に手をやると、ありがとうとお礼を言った。
仮面は優雅にお辞儀をし、青色の仮面へと姿を戻した。
冬里くんは仮面に手を伸ばして目元にかけた。
「健康面考えてるんだったら朝メシくらい出せよって話だよな」
夏川くんがお腹に手を当てて育ち盛りにメシ抜きで運動させるとか拷問だとかぐちぐち言っていると、保健室の扉が開く音が聞こえた。
そこから出てきたのは白い三角巾を頭につけ、マスクを顎まで下げて白い割烹着を着た、あの。
「お、おばちゃん」
冬里くんが口をぽっかり開ける。
最初に追いかけられた人が目の前にいるのは驚くだろう。
学食のおばちゃんが配膳台にお盆を4枚載せて、それぞれに主食や副菜などのお皿があった。




