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脱出鬼ごっこ。  作者: 桜餅葉 杏
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仲直り?

「喧嘩はやめてよ、ここで言い合いしても仕方ないよ」


私が手を叩きながら言うと、2人の目線は私へと向けられた。

それでも私は続けた。


「夏川くんも上履き投げられただけで怒らない。紅葉ちゃんも物を投げるのは良くないよ」


言いながらじわじわと考える。

夏川くんの【自分の足りない部分】は短気なところで、紅葉ちゃんはすぐ物を使おうとするところ?

何か違和感がある。勘、というのだろうか。


ハッとした時、2人の目線は私に向けられていた。

文句を言われるのではないかと思い、目線をそらした。


「怒ってねーよ、俺はふざけてただけだ」

「あれは完全に人を怒らせる態度よ!」

「なんだと、勝手にキレ出したのはお前だ」

「それは」


私に視線は向けられているが2人でまた言い合っている。

言葉が途切れたと思うと、何も言い返せないという風に紅葉ちゃんは黙った。

何も言えねぇじゃんとボソッと夏川くんが言う。

それを引き金に紅葉ちゃんは再び上履きを掲げた。

また上履きがベッド上で飛び交うところなんて見たくない。


「夏川くんは余計な一言が多いよ。紅葉ちゃんは真剣に言葉を受け止めすぎなんじゃないかな」


短い沈黙が流れる。

この時間が恐い。もう言い合いはやめて欲しい。

そう思っていると夏川くんが口を開いた。


「そうだよな、ここから脱出しなきゃいけないのに取り乱してどうすんだ」

「そう、だね」


2人とも自分の中で強引に理由をつけて反省したようだ。

私もほぅと息をついて、1人忘れてた人を思い出す。

その人物は夏川くんの右のベッドでカーテンを噛んでこちらを見ていた。


「あっおはよう冬里くん」

「僕だけ仲間はずれ・・・・・・」


冬里くんはそう言うと枕に顔面を打ち付けた。

その時にやっと夏川くんと紅葉ちゃんも冬里くんに気づいた。


「お前影薄いな、気づかなかった」

「おはよー」


2人が小さく貶していたり挨拶をした。

それをさらに冬里くんの心を傷つけたのか、先程より深くベッドに沈んでいるように見える。


「違う、僕は聞きたいことがあったんだ」


冬里くんは枕にもごもごとそう言うと、いきなり飛び起きた。そして青の仮面を自分の目元から外した。

ボンッと音を立てて、あの男の人が出てくる。


「おはようございます」


男の人は優雅にお辞儀をして見せた。

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