番外Ⅱ 流菜の幸せ(前編)
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――……トントントントン。ザクッ。
「……痛い。」
――……トントントントン。ザクッ。
「……痛い。」
――……トントントントン。ザクッ。
「……痛い。」
……私は、包丁を少し赤くなってしまったまな板の上に置いた。
私の名前は、桐島流菜。
今は、カップ麺の具材を切っていたけど……。
――「……痛い。」
私は指に大量にある切り傷に絆創膏を貼る。
カップ麺の具材……、城川さんがよく入れてるって言うから、じゃがいもを入れようと思ったけど、……固くて、滑って、指を切ったの。
……昨日も、出来なかった。
――陸くん、陸くんはどうしてあんなに上手く切れるんだろう?
「……聞いてみよう。」
そう私は呟くと、部屋に戻りスマートフォンの電源ボタンを押す。
「……?」
でも、反応がない……――――……電池切れ?
私は、スマートフォンを充電器に差し込み、充電を始めた。
「……キッチン、片付けなくちゃ。」
そう呟いた後流菜は一度キッチンに戻り、調理器具等を片付ける。
……そして、片付けが終わった頃には、すっかり陸に話を聞く事を忘れていた。
……そして陸の着信三件も、流菜は気がついて居なかった……。
――次の日。
流菜は、五時半に起きた。
これは、何時もより早い、と言う訳では無く、何時も通りである。
朝起きた流菜は、まず着替えのロングのTシャツと下着を持ってバスルームに向かう。
冷水のシャワーを浴びる。
――……冷たい水で、流菜の低血圧によるぼんやりとした頭は覚醒する。
シャワーを終えた流菜は、頭から垂れる水滴をタオルで少し乱暴に拭き取る。
……何時もの日課である。
普通ならこれから朝食を食べ、それから制服を着て学校へ向かうのだが……。生憎、今日からは夏休みの為に、学校は当分無い。
部屋に戻る。
その時、スマートフォンが鳴った。
『宮原君携帯 着信』
流菜は慌てて通話ボタンを押す。
「……もしもし?」
『あー、もしもし?、桐島さん?』
……電話の相手は、広瀬君だった。
広瀬君は、
『今さ、陸の携帯で電話してるんだけどさ……。』
と言ったので私は、
「……何?」
と聞く。すると広瀬君は困った様な声で、
『……うちに陸が、発情期だからって泊まりに来てたんだけど……。その、昨日から、急に犬になって……。と、とにかく来てくれ!。』
と言ってきた。
… … … … … … … … … …
「り、陸くん……、くすぐったいわ。」
……ペロペロペロ。
陸はソファーに寝転がった流菜の顔をなめる。
そんな陸を流菜は撫でていた。
――陸は発情期抑制の薬を飲まなかった為に、完全に犬になってしまっていた。
そんな流菜達を流菜の父親である原人は複雑な顔で見ていた。
実は、実際初めて陸に会うまでは探偵に調査させていた。
そこで原人は陸がそこそこの成績があり、性格も優しく、友達も多い好青年である、と言う情報を掴んでおり、そのうちに実際に会おうとも思っていた―――しかし、彼は犬だったのだ。
そした、とりあえず予定通り『娘を宜しく頼む。』と言ってその反応を見ようと思った。
……結果は、まさかのまだ告白して居ないだった。
そして同時に、彼はとても初々しい青年だと言う事も理解した。
それに彼は、娘の命の恩人でもある。
――……原人は、もう少しだけこの二人を見届けて見ようと思った。
彼は犬だ、しかし娘に相応しい青年だとは思う……。
……陸は実は狼だと言うことを忘れている、原人であった……。




