第拾壱話 夏風邪
――「ハァ……、ハァ……。」
今俺は、沢村先生の病院の患畜用ベッドに寝かされ、苦しそうに息をしていた。
その脇にはパソコンに何かを打ち込む沢村先生と、心配そうな顔をした兄貴が座っていた。
少しして沢村先生は兄貴に向かって神妙そうな顔で、
「体温は42.7……、陸君の狼状態の平熱は40.5……、倦怠感と発熱、それから酷い頭痛……。」
それから沢村先生はフッ、と笑うと、
「……過労と、夏風邪ですね。」
と言った。
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――「まーったくぅ……、慣れないバイト何かするからだぞ?、陸?」
そう言いながら兄貴は自分の運転するスポーツカーを走らせながら言った。
俺は高級車特有のふかふかしたイスに気持ちよく埋もれながら、
「……しょうがねぇじゃん。その……、理由あるし……。」
と言う、すると兄はケラケラ笑いながら、
「……まっ、どうせ愛しの恋人への贈り物を買おうって算段なんだろ?
黙っててやるよ。」
と言った、俺は言い返す程の気力が残っていない為、無言だった。
――俺は短期高収入のバイト、キツイ仕事をやってかなり稼いだんだ!
でも、過労とかで、バイト終わった瞬間の夏風邪……。
でも、これで『yellow&blue』って言う店のネックレスを買うことが出来る!。
このネックレスは、二ヶ月程前に東京の渋谷へ遊びに行った時、『yellow&blue』ってブランドの店のショーウィンドウに入ったネックレスをじっと眺めていたから、多分欲しいんだろうな……よし、誕生日プレゼントに買ってあげようと思ったんだけど、あり得ない程の値段の高さだったんだ……。
だから、バイトして、金を貯めて、どうせなら刻印入りのネックレスをプレゼントしようと思ったんだ!
そして、来月の宿泊研修で熱海に行くんだけど、そこにそのブランドの本店があるんだよ!、本店の方が安いんだよ!
と言うわけで、とにかく頑張ってバイトして、終わったらもう疲れて、こうして夏風邪を引いてしまったと言うわけだ……。
――「まったく、色気付きやがって……、俺がちょっといない間によぉ?」
と兄貴はニタニタ笑いながら言ってきた。
俺は、
「兄貴こそ……、仕事、どんな感じなの?」
と聞くと兄貴は笑って、
「まっ、まぁまぁって所かな?」
と言った。
兄貴は大学を今年卒業し、今は県外のどっかの研究室で働いているらしい。
今はそっちにマンションを借りて住んでいるが、月に数回は兄貴はこっちに戻ってきた。
今は兄貴が居なくなって寂しいが、同時にこうして話せる時間がより嬉しくなっていた。
――「ところでさ、兄貴今回はいつまで居られるの?」
そう俺が兄貴に聞くと、兄貴は、
「……いや、研究所から呼び出しくらってな、お前を家に送ったらそのまま向こうへ帰る。」
と言った、俺は少し残念に思ったが、その次の、
「……まっ、お前の恋バナを聞きたかったんだがなぁ。まあ流菜ちゃんとイチャイチャしてろよ? 」
と言う言葉に、俺は、
「バカ兄貴っ!、ちゃっちゃと帰れーッ!」
と叫び、その結果ガンガンと頭が傷み悶絶した。
──そしてその夜、俺は兄貴の言う通り、流菜に看病されたのだった……。
兄さん……?。




