↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
4/6

コアラとの出会い

露天商の青年に詰め寄っていた千歳の足が止まり、殺気が急に途切れた。

口に手をやりゴホゴホと咳き込み始め、膝が地面に付く。

昔の思い出に浸り、あの時のような健康さが無いことが頭から抜けていた。



(やばい、発作か)



千歳の元に急いで駆け寄ると、顔を青くし、ヒューヒュー口から息が漏れ、胸を抑えている。

異世界に来てからは妙に元気そうであり、身体が楽などと言っていたが、大分無理していたらしい。

慌てないよう冷静に、千歳の持っていたアイテム袋から薬を取り出し、飲ませる。


これで、しばらく安静にすれば大丈夫なはずだ。



「おい兄ちゃん」



先ほどまで怯え竦んでいた露天商の男と目が合い、寒気がした。

ヤバイ、一言で言えばそんな感情だった。

人を人と思わず、家畜を見るような目、どう考えても真っ当な人間では無い。



「そこで苦しんでる嬢ちゃん殺されたくないよな」



露天商の男は懐に手をやり、鉄砲を持つ。

引き金が鳥の羽のように軽そうだ。



「言いがかりを付け、商品を壊し、俺様を殺そうとする、そんな奴なにをされたって文句言えねーよな」


「毒薬なんだろそれ」


「何いってやがる、これは西方のタタールから仕入れた万能薬だぜ、と言っても嬢ちゃんのせいで地面に吸われてわからんがな」



露天商の男は下品な笑いを浮かべている。

手に持つ銃をこちらに向けながら。



「それは無いな、千歳が毒薬と言ったならな、それは毒薬なんだよ」



品物を毒薬呼ばわりして地面に叩き落す。

そんなことをしたら100人のうち99人は謝るだろうが、俺は謝らない。

千歳が何故毒薬と確信していたかはわからないが、毒薬だったのだアレは。



「くそガキが、どっちにしろ代金はよこしな、払えないようなら奴隷として売っ払ってやるよ、そこの嬢ちゃんみたいなポンコツ


はすぐ死ぬだろーがよ、まっ顔は良いからそこそこの値で売れるだろ」



千歳はまだ汗を流し、苦しそうに咳込んでいる。



「万能薬とか言いながら毒薬売りつけるような奴に払うような金は無いな」



その言葉とともに千歳の身体を抱き抱え、その場から走る。



「くそっ捕まえてくれ、強盗だ!」



露天商の男がそう言うと辺りを歩いていた通行人が俺の行き先を封じようとする。

身体が妙に軽く、千歳が紙のように軽いから逃げれはしたが、何人かが追いかけてくる。



「待ちやがれ!」



土地勘の無い町で逃げ切れるとは思っていない。

しかしあの場にいたら間違いなく碌でもないことになる、それがわかっているからこそ逃げた。

それに俺達は魔法のチケットというこの場からすぐに立ち去れる方法がある。



「これでもくらえ」



千歳を抱き抱えたまま路地を曲がり、背後に迫っていた露天商の男に足払いをかけ、宙を舞わせる。

じゃりじゃりと顔面と地面が擦るような音とともに倒れ込み、俺達を追っていた男数人を巻き込ませる。



「よしっ」



それを見た俺は、速度を落とし、千歳を降ろし、アイテム袋から魔法のチケットを取り出し、日本に戻る。





戻る?





(どうやって使うんだこれ?)



千歳が当たり前のように使っていたから気が付かなかったが、俺はこの魔法のチケットの使い方をよく知らない

空にかざすのだろうか、それとも念じるのだろうか、それともどこかにスイッチがあるのだろうか。

色々なことを試すが、一向に日本に戻る気配が無い。

「早くしろ、早く」急かすがうんともすんとも言わない。

千歳で無いとやり方がわからないのだろうか。


そう思い、千歳に目をやると呼吸は落ち着いていたが意識を失っている。



「こんなところに居やがったかガキどもが」



そうこうしているウチに顔が血と擦り傷まみれになった露天商の男に追いつかれ、銃を向けられ銃声とともに右足に焼けるような


痛みが襲う。

喧嘩も碌にしたことが無い俺がいきなり銃で撃たれるような事態になるとは思っても見なかった。



「ぐぅぅぅ」



痛い痛いと喚き泣き叫びたいが、歯を食い縛り耐える。

右足の力が抜け、血が流れる。放っておけば壊死し足を切断するはめになるかも知れないが、それどころでは無い。



「強盗は死罪か奴隷行きなんだよぉ!」



銃が千歳に向けられ、身体で庇う。

憤怒している男は感情のままに銃を撃ちそうだ。

すまん千歳。






「ぎゃあああああああああ」



目を瞑って覚悟を決めていると、顔に何か生暖かいものがかかり、男の叫び声が聞こえた。

何が起きたのかわからないまま目を開けると、銃を持った手を地面に斬り飛ばされた男がした。

「兵士さん逆!」「そっちじゃねーよ」などの周りの声が聞こえ、そちらの方を見ると巨大な兵士がいた。


顔が傷まみれで、俺の何倍もあるような体格で、血に濡れた巨大な槍を持っている。

今にも踏み潰されて殺されそうだ。



「この物、禁制の毒薬販売の罪にて有罪、牢に送れ」


「はっ畏まりました」



巨大な兵士の野太いながらも静かな声で号令をかけると。

兵士の後ろから何人もの兵士が現れ、痛みで喚く露天商の男を連行していく。

そして巨大な兵士が手を動かし、押し潰されると思ったため千歳を逃がそうとする。



「動くな、治療する」


「え?…え?」



巨大な兵士の右手が、俺の足にかざされたかと思うと、痛みとともに撃ち込まれた銃弾が宙に浮いている。

一体何が起きているのだろうか。

そう思っていると、巨大な兵士に頭を撫でられ、訳がわからなく目をパチクリとさせる。



「よくチトセ様と会わせてくれた、感謝するぞ小僧」



予想外の言葉をかけられ混乱する。

その間にも巨大な兵士の光る手により、足の痛みが引いていく。

銃で撃たれたはずだというのに、いつのまにか出血が止まり、穴さえ塞がっている。



「あの…どちら様なんですか」


「ワシは、コアラだ」



頭の中に可愛らしい動物のコアラがでてくるが目の前の人物はそれとは似ても似つかない。

ゴリラとかならば納得もできるが、コアラとはどういうことなのだろうか。

いやその前に千歳とどういう関係なのだろうか。

倒れ込み気を失っているチトセに視線をやると規則正しい呼吸をしているが目を覚ましそうに無い。



「千歳とどういう関係何ですか」


「チトセ様とは…戦友だろうか、名乗る権利は無いだろうがな」


「戦友?」


「怪我は治った、チトセ様の家へ案内する」



詳しい事は言わないまま、会話は打ち切られ、コアラは歩き始める。

銃に撃たれたはずの足の痛みは無いため、千歳を抱きかかえ後ろに付いていく。


経緯を見守っていた通行人達は左右に広がり道を作る。

「チトセ様ってまさか」「…誰だよそれ」周りの人々からは正反対の言葉が聞こえる。

一度千歳に色々と聞かねばならないのだろうか。



千歳の家へと歩くコアラを街行く人々の大多数は避けているが、時折お礼や頭を下げる人々がいる。

その光景を見て、普段は怖いが、いざとなれば頼れる人間なのだろうなと何となく想像した。



「ここだ」



二十分ぐらい歩いて到着した千歳の家は、なんと言えばいいかわからないが不気味であった、変な雰囲気が漂っていた、ぼろかった。

一言で言うならば…。



「ここお化け屋敷?」


「違うチトセ様の家だ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。