5-6,ペット探しも一苦労……
街から少し離れた荒野……。
そこに、依頼対象と共に出向いたサキとクロト。なぜ、クロト達がここに来たのかというと……。
数時間前……路地裏にて、改めて依頼対象と話をしたサキとクロトは、なぜ命を狙われているのか聞いてみた。どうやら、依頼対象しか知らない”とある”情報が狙われる原因とのこと。その情報とは――ある物の隠し場所。
そして今、依頼対象が示した場所に到着したというわけだ。
「ここか?」
『ああ、ここだ』
クロトは、依頼対象が示した所を手に持っていた大きなシャベルで掘り始めた。しばらく掘り続けると、カーンっという金属のような硬い音がシャベルに響いた。その音を聞いたサキは穴の中へ顔を覗かせ、クロトは手に持っていたシャベルを放り、素手で土をかき分け始める。
テレレレ…テレレレ…テレレレ…テレレレッ……テッテッテッテー!
まるでどこかの剣士が宝箱から宝を取り出すようなポーズで右手を天高く掲げた。その手には――黄金色に輝く一本の人参だった。
・ ・ ・ ……チーンー。
まるで、お通夜かと言わんばかりの静寂な時間が流れ……。
「ただの人参じゃねぇか!!」
雄たけびを上げながら、手に持っていた人参を勢いよく地面に叩きつけた。叩きつけられた人参は、カーンというまるで金属のような音を立てながらバウンド。それを依頼対象を抱えたサキがキャッチ。
『おい、何をする!』
人参を乱暴に扱った事に対し、酷く激怒してしまう依頼対象。それにクロト反論する形で依頼対象に突っかかりだしてしまう。サキが慌てて止めに入ろうとした……その時。
パチ……パチ……パチ……
どこからともなく、ゆっくりとした拍手が聞こえ、静寂の荒野に不気味に響く。
「素晴らしぃ。実に素晴らしい人参じゃ」
二人は、声のした方に振り返るとそこには、杖をついた一人の老人が立っていた。その老人の見た目は、全身白い体毛に覆われ、頭には、しおれた植物のように垂れたウサギの耳。その姿をみた二人は一瞬で兎人族であると理解した。
兎人族とは、ウサギのように長い耳を持った種族。特徴的なのが、そのウサギのような長い耳で、遠い音までも聞き分けれる事ができる。更に個体によって異なるが、全身毛に覆われる者や一部がウサギのような見た目をするものなど多岐にわたる。戦闘能力においては、人並みかそれ以下のためある程度の集団で行動する。
そんな兎人族がなぜ一人でこんな所に来ているのか不審に思ったクロトは、喧嘩腰で老人に話しかけてみることにした。
「あぁん、なんだじぃさん。見せもんちゃうぞ、こらぁ」
(喧嘩腰!?)
突然喧嘩腰で話し出すクロトにビックリしてしまったサキだっがた、老人は一切動じることもなく話始める。
「おやおや、それは失礼したのぁ。ただ、その人参があまりにも美しくつい声をかけてしまったんよぉ」
妙に落ち着いた様子を見せる老人は、続けて話をしだす。
「ところで、若いの。よかったらその人参をわしに譲ってくれんかのぉ」
突然人参が欲しいと言ってきたが老人に、クロトはサキが持っていた人参を奪い取り、先約がいるときっぱり要求を断った。すると老人は顔を下に向け、落ち込んだような雰囲気を見せたかと思うと……次の瞬間表情が一変。
「そうかぁ。それは残念じゃ……では、力づくで奪うしかないのぉ」
まるで獲物を狙う狩人のような怖い表情でクロト達を睨みつけ、右手を”パチン!”と指を鳴らした。すると――
「きゃぁっ!!」
クロトが反射的に振り返ると、サキのすぐそばにいた兎人族の一人が、サキを拘束するように首元にナイフのような物を突き立てていた。
「おいおい……じいさんよ。あんた、見た目は穏やかそうなのに、なかなか大胆な真似をするじゃねぇか」
老人は愉快そうに笑った。
「ほっほっほ、そうじゃろう?まぁ、これ以上ややこしい事にしたくなかったら……大人しく“それ”を渡してもらおうかのぉ」
サキが拘束され、空気が一気に張り詰められたクロトはお手上げと言わんばかりに両手を挙げ……。
「分かった。欲しいならくれてやるよ。だからサキを解放してくれないか?」
意外とあっさりしていた態度に拍子抜け感を喰らった老人だったが、老人は用心深く先に人参を渡したら解放してやると伝える。するとクロトはため息を吐きながら……。
「はぁ~。用心深いじいさんだな。ほらよ」
手に持っていた人参を下から投げ老人の方へと放り投げた。以外にも高く上がり老人の頭上を通り過ぎてしまう。人参はゆっくりと弧を描き、老人の背後へ落ち、そして――ふわふわとした何者かの手に内に落ちた。
人参を見ていた老人は下を向いていたため、恐る恐る顔を上に向けるとそこには、ウサギの着ぐるみを来た謎の人物が立っていた。しばらく放心状態に陥っていると突然、ウサギの着ぐるみが老人の方へ手を伸ばし逆に拘束されてしまう。
「おい貴様ら! この人質が目に入らぬでござるか!!」
(……スキさんだ)
言葉つがいで一瞬で着ぐるみの正体がスキ太郎であると分かったサキ。スキ太郎は、手に持っていたキラキラ光る金色の人参で老人を脅し、サキを人質にしていた兎人族は一瞬たじろいでしまう。その一瞬を見逃さなかった依頼対象は、一瞬でサキの腕から背後に回り、強烈な回し蹴りを叩き込む。兎人族は反応する間もなく吹き飛び、そのまま後ろへ倒れ込んでノックダウン。一気に形成逆転。
先ほどまで優勢だった老人は、その光景を見て額から汗がつぅ……と流しながら震えていた。そんな老人にクロトは指をポキポキと鳴らしながら近づいていった。
「ジジィ、よくもうちの可愛い看板娘を脅してくれたなぁ……。この恨み百倍にして返してやらぁ!」
「ま、待て! 待つんじゃ若いの!わ、わしに手を出せばどうなるか分かっておるのか。おぬしら、この街に住めなく……ま、ま、ま――」
数分後、警察署の前にて顔がパンパンに腫れあがった老人とその部下と思われる数名が”私達悪いことしました!!”という看板をぶら下げて放置されていた。風のうわさで聞いた話、今回金の人参を狙ったなぞの兎人族の集団はどうやら とある裏組織の一派 だったらしい。依頼対象を狙ったのも金の人参を奪うためだという。なぜそんなに金の人参を欲しがったかと言うと、金の人参は数十年に一度しか取れない幻の人参らしく。その希少性はもちろん、食べた者に“幸運”をもたらすと言われ、裏社会では高値で取引されるほどの代物だという。ちなみにクロト達がとった金の人参はどうしたかと言うと、アルミホイルでぐるぐる巻きにし、落ち葉の焚き火に放り込んで焼き上げ――何でも屋の三人と依頼対象で、美味しくいただきました(焼き芋かな?)
そしてクロト達は、依頼対象を無事依頼者の元に返し、依頼を完了させた。依頼者は何でも屋に深い感謝をし、何でも屋を後に。別れ際に依頼対象がこちらに振り返り一礼したかのように見えた。一匹のウサギを見つけるだけでここまで苦労するとは――三人とも、心の底から 割に合わない依頼だった と痛感していた。




