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逢魔が時の約束〜約束の続きを、夏の終わりに〜  作者: PeDaLu


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【第七話】超誘惑

「いや。なんなんだこれは」

「いいでしょ。いかがわしいことでもないでしょ」

 僕は真冬の太ももに頭を乗せている。

「それじゃ、やるわよ」

「お、おう」

「くすぐったい?」

「いや、大丈夫。ってか見えてるのか?」

「なんとなく」

「なんとなくで大丈夫なのかよ……」

「あ、動かないで」

 こそばゆい。優しく敏感な部分を刺激されて思わず声が漏れそうになる。


「あ」

「なんだ?変な感じがした」

「落とした」

「落とすほどのものがあったの?」

 耳かき。まぁ、やってることはそうでもないかも知れないが。左耳に移った途端に気まずい感じになった。真冬の中に顔が埋まってしまった。真冬は胸がない方だからまだ救われているのかも知れない。文香だったら顔の上に乗っかっていたかも知れない。

「もういい?大丈夫?」

「もうちょっと」

 と、言ったと思ったら真冬の両手が僕の頭を包み込んだ。

「あのね……」

「ん?なんだ?」

「ううん。何でもない。やっぱりなんでもない」

「また秘密の事か?」

「まぁ。うん。そんな感じ」

 買い物と言うよりも食事だったような気がしたけど、兎に角、真冬のやりたかったことを叶えることができたようだ。


 家に戻ると玄関の前に誰かいる。廊下の蛍光灯が切れているようで誰が立っているのか微妙に分からない。が、影を見るに女性だと思う。思い当たるのは文香か?と、エレベーターフロアから自分の家の玄関へ向かう。

「お帰りなさい」

「あれ?」

 玄関の前で待っていたのはマスターの奥さん。

「突然ごめんなさいね」

「何かご用ですか?と、こんなところでは何ですから、上がっていきますか?」

「良いの?真冬ちゃんに叱られないかしら」

「大丈夫、だと思いますよ」

「私、信用されてるのね」

 まぁ、旦那持ちだし。何か起きる事も無いだろう。と、このときは思っていたんだ。


「あの……」

「なぁに?」

「その……。距離が近くないですか?」

 テーブルにお茶を持って行って座って。トイレに行くといって立ち上がって戻ってきたら僕の正面ではなく丸テーブルの隣に座って来たのだ。

「あのね?」

「なんかよく分かりませんけど、マスターになんて言われるか……」

「内緒にしておけば大丈夫よ……」

「や……それは……」

「私に任せて……」

 そう言って両肩を抑えられて体重を乗せられてしまってベッドにもたれ掛かる格好になってしまった。

「いや、まず……い……」

 キスされてしまった。マズいなんてものじゃない。不倫じゃないか。こんなの真冬と文香になんて言えば良いんだ。いやそれ以前にマスターが……。

「ふふ。もしかして初めてだった?貰っちゃった」

 そう言っておもむろに上着を脱いで下着姿になってしまった。大きな胸が赤いブラジャーから溢れそうになっている。逆らえない。何故か逆らえない。僕はこのまま……。


 ピンポーン


「出ないの?」

「いや、上に乗られてますと……」

 膝の上に乗っかられて動けない。


 ピンポーン


 二度目のチャイム。と、右手を掴まれてその手を胸に……。


 ピンポーン 


「いや、やっぱりマズいですって」

 そう言って両肩を押し戻して膝の上から退いてもらった。


 ピンポーン


「あの、上着、着て下さいよ!」


 ピンポーン


 五度目のチャイム。文香か真冬、のような気がする。が。もしマスターだったら……。と考えてしまって背筋に変な汗が流れる。そしてチェーンロックを掛けてからドアを開くと……。


「なにしてたの?」

「いや、べつに」

「何もしてなかったのにこんなに時間かかったの?」

「ちょっと事情があってな」

「何もしてないのに事情があるの?」

 真冬に詰められる。どうしよう。と、思っていたら後ろからマスターの奥さんが僕のティーシャツを着て出てきた。

「あ‼」

 思わず声が出た。

「なぁに?だれ?」

 如何にも今起きた、みたいな感じで玄関にやって来た。

「いや、その!これは!」

「健斗、とりあえず玄関を開けて貰えるかな」

 と、言うことで一旦ドアを閉めた。

「ちょっと!どういうつもりですか!」

「玄関、開けなくてもいいの?」

 そう言われて弁明を考えながら玄関を開く。

「ヤった?」

「別に何もしてないよ!」

「本当に?」

「本当だって‼」

「じゃあ、その格好はなに?」

「さっきまでは……」

 弁明にしても無理がある、勝手に着替えてきた、と説明すれば良いのか?そんな言い訳、と言うより事実を受け入れてくれるのか?

「真冬ちゃん。大丈夫だったわよ」

「え?」

「意地悪するんだから。健斗君もよく頑張ったわね」

「え?え?なに?何が⁉」


 真冬も部屋に入ってきたと思ったら二人とも正座をして僕に頭を下げてきた。

『ごめんなさい』

 そして二人同時に謝ってきた。なにがなんだか分からない。試されたのか?でも何のために?理由は次の言葉ではっきりした。

「ママがね、どういう人なのかハッキリさせなさいって。それで無理矢理だとは思ったんだけど頼み込んで……」

 キスもその作戦の中のことだったのか?いや、個人的なもののような気がしたけども……。

「なんだよ、、もう……」

 とにかく全身の力が抜けてしまった。そして真冬も部屋に入ってきたので今回の事の次第の説明を求めた。

「私は健斗のことを疑ったりはしてなかったんだけど、ママが健斗も大人なんだからそういうのもって」

「大人だからそういうことは安易にしないんだって……」

「そうみたいね。私の魅力が足りないのかと思ったわ」

「奥さんの魅力はすごかったですよ。ホント、心臓に悪いのでもうやめてくださいね……」

 それはそうと、真冬のお母さんはなぜそこまでして僕を試したのか。気になるところではあるけれど、聞いても答えてくれなさそうなのでやめた。

「ところで健斗、さっきまで何してたの?」

「さっきまで?お色気攻撃を受けていたけど?」

「その前」

 その前。その前は目の前に座っている真冬とホテルに行って膝枕をしてもらって……。っていうのを口頭説明させるのか?

「さっきまで一緒にいただろ?んで。何もやましいことはなかったと思うけど」

「文香ちゃんにも説明できる?」

「や……。うーん。どうだろう。そのままのことを話した方が良い気はするけどなぁ」

「あら。真冬ちゃんとも何かあったの?」

 マスターの奥さんは手を口に当てて面白そうに僕に質問を投げてきた。そして追加でこんなことも。

「三人でする?」

「する?」

 最初は何のことなのか分からなかったけど、真冬が服を脱ごうとしたので慌てて止めた。

「もう!からかわないで下さいよ!真冬も!」

「私は別に良いのに」

「良くない!」

 この二人は試すというより、本気で襲いにきたんじゃないのか、と思ってしまった。何にしてもこの三人でこの空間にいるのは危険な気がしたので……。


「それで?何で私は呼ばれたの?」

 事情を簡単に説明してこっち来て欲しいと電話で頼んで文香に来てもらった。

「何でって。後から説明するようなことが起きた方が大変だからさ」

「ふうん。それで私も一緒に健斗を誘惑すればいいの?」

「お前までそんなことを言うのかよ……」

 半ば冗談と思ってその言葉を受け取っていたのだが、真冬と頷きあって上着に手をかけ始めたので慌てて止めようとしたのだが……。

「良いから服を着てくれ。頼むから」

 奥さんまでなんか楽しそう、という顔で上着を脱いでしまった。このままでは襲われる。いや、三人とも同意の上なら……。いやいやいや。マスターになんて言われるか。いや、文香も真冬も何を考えているのか。

「ねぇ、健斗。我慢してるでしょ」

 真冬に言われて反応してしまったそれの存在に気が付く。

「いや、これは!」

「ふふふ……。若いって良いわね。旦那は私のことをそんな目で見てくれなくなって」

「遠慮なんてしなくてもいいのよ」

 文香までそんなことを言って、三人がジリジリと僕に迫ってきた。こんな時誰かが来たら……。いや、来た方が言い訳ができない。


 ピンポーン


 そのチャイムに皆、ビクッとした。僕は助かったと思うと同時にマスターだったらなんて言い訳すれば良いのか、とちょっと混乱してしまった。

「早く服を着て下さいね!」

 僕はそう言い残して部屋を出ることに成功した。

「はいはい。どちらさ……。あれ?え?」

 玄関前にいたのはなんと真冬の母親だった。

「こっちに返ってきたんですか?」

 と、質問したのだが、そんな僕を押し退けて部屋に入っていってしまった。嫌な予感しかしない。上着を着ろとは言ったけども、そのままだったら……。

「健斗くん」

 部屋の中から僕を呼ぶ声がする。

「ええっと。これは……、その……」

 弁明する余地がない。結局三人ともに上着を脱いだままだったのだ。万事窮す、とはこのことか。

「我慢したの?」

「ママ!何で来たの?もう少しだったのに!」

 真冬がそう言ってくれたので未遂だと伝わったと思う。僕は一安心したところで真冬のお母さんに簡単に事情を説明した。

「そう。それじゃ私も」

「え?私も、じゃないですって!もう……」

 くらくらする。何が起きているのだ。みんなして何で僕にそんなことを。

 目の前には上半身下着姿の女性が四人。もうどうにでもなれ、という気分になってくる。

「ねぇ、健斗は大丈夫なの?私たちは大丈夫だから」

 真冬がそんなことを言ってくる。大丈夫とは一体何なのか。もう訳がわからない。と、直立不動になっていたら真冬のお母さんが僕をベッドに倒し込んできた。

「楽にしてて」

 その言葉を合図に他の三人も僕ににじり寄って来た。僕は座ったまま後退りしたけども壁に阻まれてこれ以上後ろには下がれない。

「いや、ホント落ち着きましょうよ!」

 据え膳食わぬは何とやら。これはボーナスステージなのか?もうダメだ、と目を閉じた時だった。

「おしまい」

「え?は?」

 マスターの奥さんが手を叩きながらそんなことを言う。そうするとにじり寄って来た全員が立ち上がって下着が可愛いとかなんとか僕なんてそこにいないかのようにきゃいきゃいしていた。

「良く頑張ったわね。でもちょっとイタズラが過ぎたわね」

 真冬にそんなことを言われたので、何のテストだったのか聞いてみたら、こんな答えが返って来た。

「抜け駆けさせないためかな」

「それなら何でマスターの奥さんとか真冬のお母さんまで……」

「なんかノリ?それだけ健斗のことを信用してたんじゃない?でもラッキーだったでしょ?女性四人の下着姿を見られて」

 そんなことよりも心臓に悪かった。しかし、抜け駆けさせないためとは一体。

「簡単なことよ。色仕掛けで負けるような健斗なら私は引こうかなって思ってた。文香ちゃんも同じようなことを言ってたわ」

「そうか……。それで、合格したようだけど、これからどうなるんだ?」

 色仕掛けには勝ったけども、その後のことが少し怖い。ここまでするような必要はあったのか。

「これからは正攻法で行くから安心して。とりあえずはご飯でも作るから」

 と言いながら服を着なおして他の面々と買い物に行く、と言って出て行った。

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